孤道
みーも
プロローグ
ザッ…ザッ…ザッ…
乾いた足音が、荒野に響く。青白い月光がわずかに大地を照らし、影が長く伸びる。荒れ果てた大地には、かつて栄えていた文明の残骸が埋もれており、崩れかけた石像や朽ちた塔がその名残を物語っている。しかし、そこに生命の気配はない。空気は冷たく、死の匂いが漂っていた。
一人の男が、その荒野を歩いていた。背に古びた大斧を背負い、ぼろぼろの外套が風に揺れている。彼の身体には、過去に背負った無数の苦しみが刻まれていた。かつて英雄と呼ばれていた男、バルト。しかし、今では彼をそう呼ぶ者はいない。友も、国も、彼を信じた者たちも、全て奪われた。
「……」
彼は足を止め、前方に目を凝らす。遠くに見える影が、荒野の風に揺れる。そこには、かつての友“だった“者の姿があった。聖剣を携え、禍々しい瘴気に包まれたその姿は、まさに邪帝と呼ぶに相応しかった。
「待っていたよ、バルト」
フェルディスの声は、冷たく響く。かつては共に笑い、共に戦ったその友は、今や世を穢す邪帝として彼の前に立ちはだかっていた。バルトは背の大斧を手に取る。
「此処で終わらせよう。フェル」
バルトの声には、決意と悲しみが混ざっていた。彼にとって、これは避けられない運命であり、彼らの最後の対話になるだろう。しかし、心の中にはまだ微かな希望が残っていた。かつての友情が、彼を救うことができるのではないか――と。
「終わりなどないさ。俺たちは所詮、永遠に続く苦しみの輪の一つの部品に過ぎないのさ」
フェルディスの言葉に、バルトの胸は締め付けられる。彼は大斧を構え、甲冑を身に纏う。対するフェルディスも、聖剣を振りかざす。月光の下、かつての友は敵として対峙し、荒野を死に染める。
ーなあ、フェル。俺たちはどこで道を間違えたのだろうな。ー
孤道 みーも @miimo_1616osi_
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