第3話 ハーレム誕生!?
全員の自己紹介が終わり、俺含む男子5人と女子3人は恋人にしたい人を紙に書いた。その紙は、
集計の結果、
にもかかわらず、梶田教授はそれをカウントしてしまい…。
「鍵染さん・浅岡さん。深谷君の横に移動してもらえるかな?」
「…わかりました」
「言われるまでもありません♪」
梶田教授の指示により、2人は移動し始める。表情から察するに、鍵染さんは今も納得してなさそうだ。そして…、2人が俺の隣の席に着く。
「よろしくね、深谷くん♪」
「よろしく…」
女子がこんな近くにいる状況は初めてだ。無茶苦茶緊張する。
「深谷君、恋人にしたい人を2人選ぶなんて不誠実じゃない?」
「えーと…」
わざとではないが、鍵染さんの言い分は正しい。反論の余地はないぞ。
「教授。彼に私か浅岡さんのどちらかを選ばせるべきだと思いますが…」
「う~ん…」
煮え切らない態度の梶田教授。
「そもそも、どうして単位の救済措置が恋人を作る事になるんですか?」
その説明はさっき聞いたが、俺も納得した訳じゃない。真意を教えてもらえるなら知りたいところだ。
「…笑わずに聞いてくれるか?」
「内容によりますね」
「青春を取り戻したいからだ」
「えっ?」
予想外の答えが返ってきたぞ。鍵染さんがポカンとするのもわかる。
「わしのようなじいさんになると、青春が恋しくなるんだよ。だから青春が詰まったレポートを読んで癒されたいんだ」
「はぁ…」
「動機こそ嘘を付いたが、ここにいるみなの点数が合格基準をギリギリ満たしてないのは本当だ。救済措置の有無や内容は、教授の判断に委ねられていてな。どうせなら、わしの願いを叶えられる内容にしたいじゃないか」
こういうのを“私利私欲”って言うんだよな?
「教授のお気持ちはわかりました。ですが、深谷君が私達2人を選んだ事は納得できません」
「なら友達はどうかな? さっき言った通り、わしは青春を欲している。友達でも青春を味わう事はできるだろう?」
「それはそうですが…」
「
俺の隣の席の浅岡さんが、鍵染さんに声をかける。
「浅岡さんは良いけど、深谷君はちょっと…」
「何で? 沙織ちゃんは深谷くんを選んだんだから、気になるんじゃないの?」
「“気になってた”よ。あんな軽い人だなんて思わなかったもの」
このままでは俺の評価はダダ下がりだ。信じてもらえるかはわからんが、一応説明したほうが良いな。
「鍵染さん。紙に2人の名前が書いてあったのはミスなんだ」
「どういう事?」
「回収されるまでにどちらかの名前を消すつもりだったんだけど、その前に回収されちゃって…」
「だったら、この場で白黒付けてくれる? 私か浅岡さん、どっちを選ぶの?」
「それは…」
回収されてからもずっと考えていたが、鍵染さん・浅岡さん共に良いところがある。どちらかを選ぶなんて……できない。
「…選べないみたいね。優柔不断な人は、恋人どころか友達も厳しいわ」
やはり説明しても無駄だったか。そう思った時…。
「沙織ちゃんはミスした事ないのかな?」
ムスッとした浅岡さんが問う。
「急にどうしたの?」
「深谷くんが一方的に責められてるから、我慢できなくなってね。小さいミスをグチグチ言う必要ないじゃない」
「でも…」
「あたし達は知り合ったばっかなんだよ? 簡単に選べる訳じゃん。ねぇ深谷くん?」
「ああ…」
理由はわからんが、浅岡さんのフォローは助かる。
「……浅岡さんの言う通りね。深谷君、言い過ぎてごめんなさい」
「気にしないでくれ。俺も悪かったから」
「沙織ちゃん。恋人はともかく、深谷くんと友達になってくれるよね?」
「ええ。これからよろしくね、深谷君」
「こちらこそよろしく」
「早くも青春を見られるとは…」
この状況を、梶田教授だけが満足気に眺めていた。
「3人の話がまとまったから、救済措置について話すぞ。本日の月曜日から土日を除く来週の金曜日までの10日間、青春が詰まったレポートを毎日提出してもらうからな」
毎日かよ!? 思ったより大変かもしれない…。
「書き方については任せる。余程の短文でない限り、指摘しないつもりだ」
“余程の短文”ってどれぐらいだ? 何から何まで、曖昧な救済措置だぜ…。
「教授。オレらはやっぱ落ちるの?」
石田君が切羽詰まった表情をしている。
恋人ができなかった石田君・蛯名君・田代君・森口君・雨寺さんの5人はそうなると考えるべきだろう。
「男同士の青春で、ワンチャン何とかならない?」
「それは興味ない」
ばっさり切り捨てる梶田教授。
「とはいえ、ここまで付き合ってくれた礼をしないと申し訳ないな。5人には今週と来週の金曜日に2回、再テストを受けてもらう。それの合計点数次第で考えるとしよう」
「よっしゃ~!」
青春レポートと再テスト、どっちが楽なんだろう? 運が良いのか悪いのか…。
「こういう方針にしようと思うが、質問がある人はいるか?」
………誰もいないようだ。
「では、本日はこれで解散!」
講義室を出た、俺・鍵染さん・浅岡さんの3人。今日から青春レポートを書かないといけないから、極力一緒に行動するべきだろう。
じゃないとすぐネタ切れになって、梶田教授を怒らせるかもな。
「深谷くんはラーメン屋で、沙織ちゃんはファミレスでバイトしてるんだよね? 大学から近いの?」
「私は近くないわね。家からは近いけど」
「俺は歩いて行けるぐらい近いぞ」
そのほうが大学との両立がしやすいと思ったからだ。
「じゃあさ、そこでお昼食べない?」
「浅岡さん。まだ11時にすらなってないわよ…」
時間はまだ10時30分ぐらいだ。どう考えても早すぎる。
「あたしはお腹減ってるから、今からでも食べられるけどな~」
「俺も食べられるぞ」
高校の時は、これぐらいの時間からおやつを食べていたっけ。
「私はそこまで減ってないから、小盛りで済ませるわね」
「深谷くん、ラーメン屋の案内よろしく!」
「任せてくれ!」
今日の青春レポートのネタはこれにしよう。早々に決まって良かったぜ。
単位を落としたら、何故かお見合いが始まりました(ライトVer) あかせ @red_blanc
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