第29話 取り調べ
警察に連れていかれたエミリーとマーティンは取り調べを受ける事になった。沖縄県の警察と言っても、上層部はもちろん殆どが県外出身で沖縄出身者は少なかった。
そんな警察官たちは地元のうちなんちゅ達を馬鹿にするような目で接してきたので、外国人、ましてや白人では無い彼らに対する態度は酷いものであった。
「おい!2人のアメリカ人を殺したというのは貴様だな!2人を連れの女と捕まえていたという情報がある!」
取り調べ中にも関わらず、警官は机を叩き、恐喝をするかのような態度で話した。
マーティンは一旦、黙りながら口を開いた。
「いえ、私は県立図書館で銃を持って人を殺そうとしていた彼らを捕まえましたが、殺害はしておりません。しかもこの後、私達の元に現れた背の高い男がいるので、その人が怪しいと考えております」
流暢な日本語を話すマーティンに警官は驚いた表情で目を疑った。
「貴様・・日本語がわかるのか・・」
取り調べをする警官は気まずい表情で彼を見ていた。
「はい。日本で仕事をしていた事があるので」
「ぐぬぬ・・その背の高い男とは日本人か?」
警官はマーティンに背の高い男について聞いた。
「はい。日本人です。色白で眼鏡を掛けた30代ぐらいの優男でした」
マーティンはエミリーと共に目撃した男の事を話した。
「30代ぐらいの優男だと?どんなやつなのだ?」
警察はマーティンに30代の優男について聞いた。
「・・県庁の役人です・・殺された2人とは知り会いだと言っていました」
と答えた。
「知り合い?それは本当なのか?」
「はい。嘘ではありまん。私達は彼らに手錠を掛けましたが、県庁の役人らしき男が『その人が私の知り合いだらか手錠を離してくれ』と言い、警戒しながら手錠を離しました。私は彼に『警察に引き渡して欲しい』と頼みましたが、彼は恐らく2人を殺害した真犯人だと思います」
マーティンが警察に真犯人がいることを話した。
「真犯人だと?それは本当か?」
警察はマーティンの耳を疑ったが、扉の向こうから帽子を被り、サングラスをかけた天然パーマの男が白のラブラドール・レトリバーを連れて現れた。取り調べをする警察官と違い、スーツを着ているので刑事だろう。隣にはなぜかエミリーが立っていた。
「本当だ。俺のくぅちゃんが匂いを嗅ぐと、マーティンやエミリーとは別の人間がいた事がわかったんだよ!くぅちゃん偉いな~」
刑事が甘えた声で犬を撫でると、犬は「ワン!」と吠えた。
「くっ、沖縄署に来たばかりの遠藤か。で、その犬が真犯人を見つけたと言うのか?」
警察が遠藤と名乗る謎の刑事を見ると、刑事は「はいそうです。だから隣にいる女性と同じようにこの男性も証拠不十分で釈放してください」と答えた。
「ぐぬぬ・・」
警察は刑事を睨んでいた。
学校の授業が終わり、未来は教室で落ち込んでいたケィティに声をかけ、「一緒に帰ろう」と言って教室を出ると、廊下を渡って校門に出た。
門に出ると、そこには多くの女学生達が登下校しており、中には女学校前と書かれた路面電車の停留所に立ち、電車が来るのを待っている者もいた。
ケィティと未来は校門から双樹並木を歩いていると、向こうから「Hey!」と手を振るスーツのアフリカ系の男と先住民の女性、そして犬を連れたサングラスの男が立っていた。
「Mr. Martin!!Ms. Emily.!」
ケィティが大喜びで彼らの元に駆けつけ、エミリーやマーティンにハグをすると、未来もケィティについて行った。
が、サングラスの男が連れていた犬が苦手な未来はケィティの後ろにたっていた。
「Oh, Katie. What's up with the sudden hug?(おお!ケィティ急にハグをしてきてどうしたんだい?)」
マーティンが英語で話すと、ケイティが「I was always worried when I heard that Martin and Emily were in police custody!(マーティンさんとエミリーさんが警察に捕まったと聞いてずっと心配だったんですよ!)」ケィティは心配そうな表情で2人を見ると、マーティンが「It's okay. This man helped me.(大丈夫だ。この人が助けてくれた)」と犬を連れたサングラスの男を紹介した。
サングラスの男はよく見ると、彫りの深い顔立ちをしており、沖縄にもいそうな見た目だった。
未来は男を見て「沖縄の人?」と聞いた。
男は「フフ」と笑ってサングラスを外すと、眉が太く、二重だった。
「俺は沖縄の人じゃなくて北海道だよ!正確に言うと、そこに元々いたアイヌだ」
男がアイヌにルーツを持つことを話すと、エミリーが「この人は
「おぅ!たまたま俺が警察署に潜入していた所、エミリーとマーティンが殺人事件の冤罪にかけられそうになっていたから助けたんだよ!」
男は再びサングラス掛けると、未来が「へー辺泥さんって多分、刑事のフリして潜入していると思うけど、なんかアニメのキャラに似ているね」と康徳のいでたちを指摘した。
「あーこれか。俺、実は松田優作に憧れているからこの格好をしているんだよ!」
康徳は決めポーズを決めると、エミリーが「松田優作って誰だ?」と訊ねた。
「知らないのか?昔の日本の俳優だよ!ほら、アメリカの映画にも出ていただろ?」
康徳は必死に松田優作の説明をすると、エミリーが「あーあの映画か」と松田優作の事を思い出していた。
すると、未来が「犬は怖いけど、もしかして警察犬?」と震えながら康徳が連れている犬を指さした。
「これはうちのペットのくぅ。元は保護犬だったけど、俺の元で訓練を受けて今は嘱託警察犬なんだ。もちろんこの時代でも警察犬として活躍しているよ。で、エミリー達と一緒にいるってことはお前達、2016年から来たんだろ?」
康徳も未来達が2016年から来ている事から知っていた。
「はい。タイムスリップしてきました。ここで名前を言うのもあれですが、兼村未来です。ここでは女学校に通っています。隣にいるケイティもそうです」
「そっかー実は他にも2016年から来た人達がいるんだ。俺はもう1人と共に2人を引き取ったが、後の3人はまだ見つかっていない」
康徳が未来達の他にも過去に来た人達がいることを話すと、「え・・そうなんですか。早く見つかったらいいですね」未来が呟いた。
「そうだね。手がかりはまだ無いけどねぇ」
康徳は下校する女学生達を見ながら呟いた。
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