第24話 ティムとザックの襲来
ティムとザックの襲来に未来達は立ち上がって手を挙げた。
「君達は何をしにここに来たんだ?」
月城が英語でティムやザックに話しかけた。
「俺達が言っている事が通じているみたいだな。この中に俺の親友であるザックが落とした懐中時計を持っていないか?」
ティムは周囲に懐中時計を「よこせ!」と言うような素振りを見せるが、周囲は誰も懐中時計なんぞ持っていなかった。
「ちっ、時計をもってねぇのか。じゃあチャイナ野郎の近くにいる女をよこせ」
ティムは未来に指を指すと、未来は「え?」という顔になっていた。が、ティムも未来も互いにどこかで見た事がある顔だなと思っていた。
というのもティムは幼少期、未来と同じ幼稚園に通っていたからだ。
学年は未来の方が上なので、ティムが入園する頃には彼女は年長だったので、特に関わる事も無かったが、かつて入園したばかりの自分に声をかけてきた子に似ていた。が、ティムも昔の事なのでうろ覚えだった。
「おぃティム。チャイナ野郎は5人いるぜ」
ザックにツッコまれたティムは普猷に指を指した。
「特に仙人みたいなお前だ」
「え?私・・かっ、彼女は君の事好きじゃないと思うぞ」
「何言っている?そんなの関係ねぇ。俺はどんなに話しかけても女に相手にされず、しまいには馬鹿にされたんだぞ」
普猷の会話をティムはポケットの中にあるスマホの翻訳アプリで翻訳し、その言葉をイヤホンで聞いた。
「君は若いからそう言っているが、そんな事を言わなくともいつか私のように結婚する。ただ、私のように親が決めた不自由な結婚をさせられると思うが」
「親が決めった結婚?へっ、そうだったら楽だろうな。何もしなくても結婚できるからな。でもよ。俺は結婚はおろか恋人とセックスできねぇからいつもどっかでやりまくっているアメフトやチア部のチャドやスティシーを俺は銃で殺し、ザックと一緒に基地の外へ逃げたのさ」
普猷は英語だが、ティムが言っている事は何となくわかるので酷く傷ついた。というのも彼は当時の那覇士族の習慣でマウシという女性と望まない結婚させられているからだ。モテなくて結婚はおろか恋人ができない2016年から来た未来人ティムとはわけが違う。月城もその様子に「あー」というような顔をしていた。
「おう。ティムを助けたのは俺だ!」
(怖っ・・・・銃乱射した人が過去の沖縄に来ているんだ・・・・)
未来は銃乱射事件を起こすような危険人物がこの時代の沖縄に来ていると知り、血の気が引いた。
「おぃ!とっとと女出せ!さもないと撃つぞ」
ティムは全員に銃を向けた。
「そうだ。おっさん、そいつはお前の愛人だろ?いいからパートナーがいないティムに渡せよ。おっさんは女房とヤっているだけで十分だろ」
ザックが未来の手を引っ張ろうとした。未来は怖くて涙が出そうになった。普猷は余計に傷つき、下を向いてしまった。
「黙れ
ティムとザックが後ろを振り向くと、そこには銃と懐中時計を持ったエミリ―とマーティンがいた。
「何だと!インディアン女が持っていたのかよ!ザック、お前が落とさなければこうなっていなかったんだぞ」
「悪りぃ」
「私はインディアンではなく、ディネだ。お前らを捕まえる」
エミリーはマーティンと共にティムとザックの銃を奪って机の上で抑え込み、2人が所有しているVANISHを取り上げた後、手錠を掛けた。
「マーティン、2人を頼む」
エミリーがマーティンに言うと、マーティンは2人を連れて図書館を出た。
「離せ!ニガーに捕まるのだけはごめんだ。おぃ離せ!」
「Fuck!!」
ティムとザックの声が聞こえた。
「怖かったと思うが、私は安里の屋敷に住むジェニーだ。あいつらは同僚のウィリアムが連れて行った。この事は伊舎堂カマドさんの父親にも伝えておく。では」
エミリーは流暢な日本語で話した後、図書館から去ろうとすると「待ってください。あなた方にお礼が言いたいのです」月城がエミリーの手を掴んだ。
「いいだろう。但し、それは後でだ」
エミリーは月城を手を振り払った後、図書館を去った。
「はぁー怖かった」
未来は涙が出そうになったが、肩をなでおろした。しばらくすると、拓也が走って図書館に入った。
「カマドゥー話はジェニーさん達から聞いたよ。心配してたんだぞ」
拓也が未来の肩をつかんだ。
「おじさん、じゃなかった。お父さん、怖かったよ」
普猷や月城は拓也を見てどこかで見覚えのある顔だなと思っていた。
「確か10年前にお会いした伊舎堂さん?」
月城は拓也の事を何となく覚えていた。
「はい。10年前にもこちらに来ておりました。伊舎堂カマドの父で県庁の官吏をしております。
拓也は伊波普猷や月城、静観や安興達に挨拶をした。
「ああ、伊舎堂盛一君か。君の事は少し覚えているぞ」
普猷は10年前に会った拓也のことを覚えていた。
「後、安里のウランダ屋敷にいる2人と知り合いなのか?」
月城は拓也にエミリー達のことを聞いた。
「知り合いと言うより、娘の同級生の養父母なのでその繋がりです」
「養父母って宮城君の!?」
「はい」
「たまげたな。宮城君に養父母がいたとはな・・」
普猷はケイティーの事で驚いていた。
「彼らに関しては明日、お礼が言えると思います。では私達はこれで」
「じゃあね普猷さん。いや、
拓也は未来と共に県立図書館を去った。
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