第2話 切り捨ての連鎖
黒木俊一の無軸なリーダーシップは、組織にさらなる混乱をもたらし始めた。彼が掲げる政策や方針は、毎回異なり、その場の勢いと周囲の意見に左右されていることが明白だった。それでも黒木は自信を崩さず、強引に組織を引っ張ろうとする。
ある日、黒木は大々的に新しいプロジェクトを発表した。その内容は、業界の流れを無視し、現場の状況を理解していない無謀なものだった。プロジェクトに参加するメンバーは、ほとんどが黒木の方針に疑問を抱いていた。
「このプロジェクトは成功する見込みが薄いのではないでしょうか?」
現場リーダーの佐藤が、会議で黒木にそう提言した。その場にいた他のメンバーも、静かに頷いた。だが、黒木は佐藤の言葉を一蹴する。
「私がリーダーだ。私の決断に従えない者は、ここには必要ない!」
黒木の強引な態度により、会議室は一瞬、凍りついた。佐藤はもう一度口を開こうとしたが、その前に黒木が続ける。
「このプロジェクトは、私がこれまでの経験から導き出した最善の選択だ。私の考えに従わない者は、チームから外れてもらう!」
黒木は異論を許さず、反対意見を持つ者を次々にプロジェクトから外していった。彼に従うのは、表面上の従順さを装う数名だけで、残りのメンバーは不満を抱きながらも口をつぐむしかなかった。
それから数週間後、プロジェクトは大きな問題に直面する。現場の実情を無視した計画は、実際には全く機能せず、予定していた成果はおろか、基本的な業務すら円滑に進まない状態に陥っていた。メンバーたちは疲弊し、プロジェクトの遅延は続く。
そんな状況でも、黒木は自らの過ちを認めることなく、責任を部下たちに押し付け始めた。
「この遅れは、現場の無能さが原因だ。私の指示に従っていれば、こんなことにはならなかったはずだ!」
さらに、黒木は反対意見を持つ者を次々に切り捨てていった。次に標的になったのは、彼の忠実な部下だった田中だ。田中は長年黒木に仕えてきたが、ついにプロジェクトの失敗に耐えかねて黒木に意見を申し立てる。
「黒木さん、このままではプロジェクトは破綻します。計画を見直すべきではないでしょうか?」
しかし、黒木は田中の意見を聞くどころか、彼を裏切り者扱いする。
「田中、お前も私に反旗を翻すのか?ならば、お前も去れ!」
田中はプロジェクトから外され、組織内の居場所を失っていった。黒木の周囲からは次々と有能な人材が離れていき、残ったのはおべっかを使う者たちばかりだった。
黒木は、その孤立した状況に気づかず、自分が正しいと信じていた。そして、切り捨てられた者たちの不満が次第に組織全体に広がり、プロジェクトの士気はさらに低下していく。
数か月後、黒木が掲げたプロジェクトは、最終的に大失敗に終わる。経費は大幅に膨らみ、結果的に何も得ることはなかった。それでも黒木は、責任を取るどころか、失敗を他者に押し付け、自らのリーダーシップに問題はないと主張し続けた。
黒木の強引なやり方と独善的な態度に、組織内の不満は限界に達していた。しかし、黒木はまだその危機に気づいていなかった。
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