第6話  君は太陽

「夏海~、今からお父さんにお茶入れたから持って行って頂戴」と佳代に声を掛けられて、夏海が「はいはい、お茶持っていけば良いのね、分かった、今行くよ」と佳代に返事を返した。夏海が「あ、今ちょっとお母さんにお父さんの遺影にお茶を持って行くように言われたから席外すね」と一言いって電話を切った。

夏海の友達の涼子が「もう、電話に出るなり電話を切られたら、こっちだって嫌になるわ」と不機嫌な顔をして涼子が買い物に出掛けて行った。 夏海が「瞬お父さん、私ももう、二十三になりました」と声を掛けて瞬の遺影にお茶を添えた。チーンと鐘を鳴らして拝んだ。佳代が「瑞穂、ご飯だから起きなさい」と声を掛けられて、瑞穂が「うーん、今何時なの?」と声を掛けられて瞼(まぶた)を摩(さす)った。 瑞穂が「あ、そうだ、瞬お父さんに線香をあげなきゃ」と言ってパジャマのまま瞬の遺影に向かった。瑞穂が「瞬お父さん、今日は良い日なのでゆっくりしようと思います」と声を掛けた。佳代が「もう、お父さんが亡くなって、あれから二十年経つわ、早いわね~」と言って月日が経つのを早く感じていた。瑞穂が「もう、お母さんったら」と笑って佳代の肩を叩いた。佳代が「さぁ、瑞穂も席に座ってご飯を食べなさい」と声を掛けた。佳代が「はぁ~い、頂きます」と言ってご飯を食べた。 

佳代は、その後眠くて、眠っていると「佳代、佳代」と声を掛けてくる黒い影が、瞬の声に似ていた。佳代が「瞬なのね?」と返事を返した。 瞬が「佳代も歳を取ったな、シワが増えて」と声を掛けられて、佳代が「全く、シワが増えたとか言わないでよ。」と返事を返したが、瞬が「ふふふふ」と笑ったまま、黄色い光の中に姿を消した。その直後に佳代は目を覚ました。

佳代が「あれ?瞬は居ないの?」とまだ寝ぼけているのか声を掛けた。

そこの隣には夏海が居て「ん、お母さん、どうしたの?」と声を掛けた。

佳代は「あぁ、さっき、お父さんに会ったのよ」と返事を返した。

夏海が「あ、それならお父さん久しぶりにお母さんに会いたくなったから、夢にでも出て来たのよ」と返事を返し、佳代はソファから身体を起こした。佳代は「私の事を、瞬お父さんは、年を取ってシワが増えたな。なんて余計なこと言うのよ」と夏海に声を掛けた。

夏海が「ははは、本当にお父さんらしいね」と笑って言葉を交わした。佳代が「さてと、今から買い物に行くけど一緒に行く?」と声を掛けられて、夏海が「行く~」と言ってバックを用意して出掛けて行く為のマスクを掛けた。佳代が「瑞穂は?」と声を掛けると、瑞穂は「行かない」と返事を返した。佳代が「そう、じゃ、お留守頼むわね」と声を掛けた。瑞穂が「うん、行ってらっしゃい」と言った。瑞穂は今まさに小説を書いている最中だった。

登場人物は誰が良いのか、誰がこう言ったのかを書いている。

登場人物の背景に何があり、次のストーリーを展開していくのだが中々思い付かなくて、外の公園に行って、散歩しに外へ出た。公園では今まさに桜が見頃を迎えていた。

瑞穂が「今日も綺麗だなぁ」と言って、桜の木を母親と一緒に見に行った事を思い出していた。

父親の瞬が亡くなったのは、私達が子供の頃で小さくて、よく憶えていない。佳代達は、その頃には公園に向かっていた。佳代が車の窓を開けて「あら、あれは瑞穂じゃない?」と驚いた顔をしていた。あまり外に出るのを好まない瑞穂が公園に居たので、佳代達がわざとらしく「あれ、瑞穂、こんな所に居たの?」と声を掛けてみると瑞穂が「ん、何でこんな所に居るの?」と声を掛けた。佳代が「こっちこそ、どうしてこんな所に居るのか不思議に思ったから声を掛けたのに」と少し気の抜けた返事を返した。

夏海が「まぁ、良いじゃない、折角会えたし写真撮ろう」と言ってカメラを持って三脚に載せ、カメラを準備して、佳代と夏海と瑞穂で写真を撮った。

綺麗な桜が背景になり、チラチラと降る桜吹雪の中で三人の笑顔の写真が瞬の遺影の隣に飾られていた。



あれから三十年になり、佳代は、もうこの世には居ないが、年配になった夏海がいた。年が五十三歳で四十九歳の瑞穂も老眼になってしまい小説を書く事を引退していた。そんな二人はボケっとしながら、縁側でお茶を飲み、外を眺めていた。












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夏海の物語 影山 みはつ @mihatsu1865

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