OVER WORLD
Ev.ki
第一話 死んだ後のこと
おぉ、久しぶりだな。……何持ってるかって?これは日記だ。少し前に知り合った奴のな。面白いかって言われると……まぁ、そこそこだな。でも、なんか読んじまうんだよ。サイラス・エヴァンズって奴のだ。検索しても出てくることはねぇぞ。有名人じゃねーからな。こいつ、いっつもどっか睨んでるような目をしててこえー奴だったんだよ。気になるか?そんなに面白いものでもないぜ。めっちゃ長いし。A5サイズのノート三冊分だ。それに、これはサイラスが事故で気を失ってる時に見たっていう夢のことを、日記みたいに書いただけだ。現実に起きたことはほとんど書かれてない。それともう一個、俺はこの日記に、結構書き足したりして、文学作品みたいな仕上がりになっててよくわかんねぇことになってる。それでも読みたいか?……分かったよ。一番最初から読んでいい。一応、もう一度言っとくぞ。ここに書かれてるのは、サイラスが夢の中で見たものだ。それだけは忘れるな。
第一話 死んだ後のこと
11月20日
街はもうクリスマスムードで満たされていた。道を歩けばカップルと家族連れと……あとカップルばかり。俺が一人で歩けるスペースなんてどこにもない。あ、もう一つだけ道にいる奴がいたな。まだ小学生のちっせーガキ共。今日も黒いパーカー着て適当に街を歩いてたら、またいつものガキ共に絡まれた。
「今日こそ俺たちと勝負しろ!」
ってな。
「勝負ってなんだよ」
俺がそう聞いた瞬間、いつの間にか俺の後ろに回り込んでた一人のガキが、俺のポッケからスマホを抜き取りやがった。
「おい!」
俺が声を上げると、ボス的な奴が腹立つ顔で、
「これを俺たちから奪い消してみろ!そしたらお前の方が強いって認めてやるよ!」
って喧嘩売ってきた。
「俺は喧嘩が好きなヤンキーでも暴力が好きなボクサーでもねぇよ」
俺は冷静にそう言い返したが、その声はガキに聞こえてなかったのか、「よーい、ドン!」って叫んだかと思えば、一斉に走って散っていった。
「クソがよ……」
俺はその場で舌打ちをして、スマホを奪い取ったガキから追いかけ始めた。そいつらは足に自信があったみたいだが、俺は二十秒くらいでそいつに追いついて、首元の襟をつかんで捕まえた。するとそいつ、にやつきながら俺の方向いて、「ざんねーん。持ってませーん」って、本当に腹立つ声で言ってきやがった。思い出しただけでもムカついてくる。俺は舌打ちして後ろを向いた。すると向こうの方に、もう一人のガキが、俺のスマホを握りながら右に曲がったのが見えた。
「クッソあいつ……!」
俺は今掴んでる奴を手放して、スマホを持ってる方を追い始めた。手放した反動でガキは倒れてたと思う。スマホを持ってる方のガキは大通りに出ていた。人が多すぎてどこにいるかわかったもんじゃなかった。
「どこにいんだよ……」
俺は人をかき分けながらそのガキを追った。奥の方で、何人かの短い悲鳴と、「おいクソガキ!!」って怒声が聞こえた。俺はすぐに場所が分かった。結構近かった。少し走ると、人と人の間に、小さいガキの姿が見えた。
「おい止まれ!」
俺は後ろまで迫って、そいつの右手を掴んだ。反動で、ガキはこっちを向いた。
「スマホ返せ!」
俺がガキの手からスマホを奪い返そうとした瞬間、そいつは俺の手を振り払って、隣の大通りに飛び出した。向こうの歩道に渡るつもりだ。片側三車線はあって、トラックが多い。案の定、飛び出した瞬間に、横からトラックのクラクションの音が鳴った。そいつはそれを聞くなり、強張った表情でトラックを見つめた。
「クソがよ!」
俺は大通りに飛び出し、ガキの腕を掴んで歩道の方に投げるように戻した。その時の俺には、その発想しかできなかった。俺の真横に、トラックがぶつかった。全身に衝撃が走った。鈍い音も耳に響いた。ぶつかった時に頭を打ったのか、足から崩れて倒れこんだ頃にはもう、血の海が出来上がっていた。あたりのざわめきは初めのうちは聞こえていた。でもすぐに音が籠っていって、聞こえなくなった。
―――ここで終わりかよ。
暗くなってく世界を見ながら、俺はそう思った。
……でも、終わらなかった。
俺が目を覚ますと、あたりはどっかの森になっていた。短い草がチクチクと首元に刺してくる。本当に意味が分からなかった。今でもよくわかってない。頭上には、真緑の葉を一面につけた木が、日光をちらつかせながら揺れてた。しばらくはその様子をぼーっと眺めていた。時々吹く風がなんかよくて、すっかり天国とでも思い込んだその時、どこかからか、声が聞こえてきた。多くの人の声だ。子どもの声やら、大人の声やら。街が近くにあるようだった。俺は正気に戻り、目を開いて上半身を勢いよく起こした。
「……どこだここ」
俺は俺が横たわってたところを振り返って見た。でも、そこに血の跡は無かった。パーカーのフードを前に持ってきて確認をすると、そこには確かに、乾いた血がついていた。咄嗟に頭の後ろを触ってみたが、傷らしきものはなかった。
「どうなってんだ……?」
俺は困惑しながら立ち上がり、あたりを一周するように見た。見えるところはすべて木漏れ日が射す明るい森で、文明のぶの字もない。しかしずっと、一つの方向から声が聞こえている。
「……行ってみるか」
俺は声のする方へ歩みを進めた。しばらく歩くと、だんだんと声が大きくなり、森が開けて、文明の様相が見えてきた。見えるのは、石造りの家に、敷き詰められたレンガの道。人はみんな、古風の服を着ている。その様子は、さながら中世ヨーロッパのようだ。俺は茫然としながら、その街を歩いた。道行く人には、変な目で見られる。そして俺も、道行く人を変な目で見た。まるでタイムスリップだ。もしかしたら事故の衝撃で、この時代の事故が起きた場所に移ってしまったのかもしれない。でもそんなことあるわけもないから、きっと天国だ。やっぱりここは天国に違いない。そう考えると、なぜだかさっきまでの恐怖心は消え、どこか湧き上がるものがあった。わくわくとか、好奇心とか、そういうのだ。口角が上がり、少し早歩きになった。周りの家々は、全部灰色の石レンガと小さなガラス窓がつけられ、それぞれ似通っているようで、どこか個性のあるような、なんというか、まぁ教科書通りのものだ。ところどころに高い煙突もつけられている。
「すげぇ……マジでずっと絵で見てきたものだ……!」
俺の興奮が絶頂を更新し続けていたその瞬間、遠くから、野太い男の声が聞こえた。
「おい、野蛮人が来たぞ!!」
俺は声がする方へ振り向いた。そこには、弓を構えた男が一人、俺に向けて立っていた。
「ここはお前たちがいて良い所じゃねぇぞ……!」
俺の顔は、口角が上がったまま、固まった。
「天国じゃねぇのかよ……」
俺の震えている声も無視して、その男は俺の左肩にめがけて矢を放った。さすがの中世の腕前だ。矢は見事に俺の肩に突き刺さり、俺は膝から崩れた。十分ぶり二度目くらいだ。血がドバドバと飛び出し、それを見るたびに、視界がぐらぐらと揺れた。俺は横向きに倒れ、やがて気を失った。次に目を覚ましたのは、屋根の下だった。木の梁がむき出しの屋根だ。確実に21世紀の家ではなかった。上半身がスース―する。俺は上半身の服を脱がされ、矢が刺さったところには、白い包帯のようなものがぐるぐると巻かれていた。誰かが治療でもしたのか?俺はそう思った。俺はそれを確かめるために、起き上がった。
「っ……!」
上半身全体に、びりびりと割れるような痛みが走る。俺は左肩を押さえながら、そのまま足をベッドの淵から足を出した。そして近くに揃えられた靴を裸足のまま履き、左肩を押さえながら、ドアのある所へ向かった。歩くたびに、木製の床がぎしぎしとなった。ドアを開けると、そこは二階だったようで、一階の様子が下に見えた。誰かが何かを作業しているのが見えた。上から見てもわかるほどガタイがよく、大きい男だった。俺は部屋を出てすぐの階段を、ミシミシと音を立てながら降りた。その音に男も気づき、俺の方を見た。
「気づいたか」
俺は階段の途中から、その男の動向を伺った。男は一階の真ん中にあるテーブルの一角から物をどかし、そこに椅子を持て行った。
「座っていいぞ」
俺はゆっくりと階段を降り、その椅子に向かった。
「……俺を襲ったりしないだろうな?」
俺は椅子の背もたれに手をかけ、下を向きながらそう聞いた。男は一度鼻でふっと笑い、
「それをするような人は、この街でも少数派だ。安心しろ」
と言って、俺の前に、一つのコップを置いた。
「飲んでいいぞ。毒は入ってない」
俺は椅子に座り、コップに触れた。ざらざらと荒い質感の木製のコップだ。ほのかにぬくもりを感じる。湯気が少し上がっていることが分かった。
「ぬるま湯だ。けが人にはいいらしい」
男はそう言いながら、俺の向かいの椅子に座った。そして男は、手に持っているコップの液体を飲んだ。俺もそれを見て、ぬるま湯を飲んだ。
「……うまい」
思わずつぶやいた。やっぱり、都会の水とは違った。そのことに、男も気づいた。
「やっぱり、お前が住んでた時代の水とは違うか?」
俺は静かに答えた。
「違うな……。これ、井戸水か?」
男は頷いた。そして、机の上の物の中から、灰色の布とベルトを取り出し、俺に渡した。
「服だ。寒いだろ」
俺は布を広げた。長袖のチュニックだ。俺はズボンはそのままに、それを上からかぶり、ベルトを締めた。
「何か、聞きたいことはあるか?」
男は俺に聞いてきた。聞きたいことだと?そんなの、いくらでも湧き上がってくる。その中でも、俺は一番気になっていたことを聞いた。
「……俺みたいなやつは、他にもいるのか?」
男は腕を組んで答えた。
「そうだな。今も多くいる。お前、この街の隣の森からここに来ただろ」
「あぁ。そうだ」
「あの森を逆方向に進むと、お前のような人たちがまとまって住んでいる国がある。これまでも、この街からそっちの国に行く人を何人か見てきた」
男はそこまで話すと、
「お前、名前は?」
と聞いてきた。
「サイラス・エヴァンズだ。そっちは?」
「俺はシュレン・キクラデスだ。ここでグリース博士の助手をしてる」
「グリース?」
「グリース・ミノア博士だ。ここで医学と天文学を研究してる。サイラスの怪我を治療したのもグリース博士だ。今は外で診療してて、もうすぐ帰ってくるころだ」
シュレンはコップの水を飲み干し、俺も同じように飲み干した。そしてシュレンは、俺の目を見て言った。
「俺はサイラスのような人が多くいる、森の向こうの国に行くことを薦める。あそこだと、サイラスのいた時代にここよりも近いし、襲われる心配も今はない」
「襲われるって……さっきのことか?」
シュレンはうなずいた。
「そうだ。先月あたりか、森の向こうから謎の攻撃を受けたんだ。爆発する何かを飛ばされてな。それで、死んだ人も何人かいる。向こうの弁解は、誤爆ってことらしい。俺たちはほとんどその主張を信じているが、中には信じきれない人もいる。特に爆発の被害者とかその家族とかだな。その一部が、さっきみたいに、サイラスのような人を襲うようになった。だから、今はここは危険かもしれない」
男が話し終えると同時に、玄関のドアが音を立て開いた。そして中に、白髪が生えている、小柄な爺さんが入ってきた。
「やぁ、帰ったぞ」
老人特有の高い声だった。
「おぉ、起きたか。異世界の少年」
シュレンは立ち上がり、爺さんのために席を空けた。爺さんは席に着き、机の上で手を組んだ。
「少年、名前は?もうシュレン君に言ったかい?」
シュレンは間髪入れずに答えた。
「サイラス・エヴァンズです。博士のことも伝えました」
「この世界のことは?」
「まだ少しだけです」
それを聞くと、爺さんは俺の目を見た。
「少年、まだ肩は痛むかの?」
「いや、今は痛んでねぇけど……」
爺さんは、そうかそうか、とでも言うように頷いた。
「最近見つけた鎮痛剤があっての。ケシの実から取ったものだと、どうも量を間違えると依存効果があるようで、すこぶる使いにくかったんじゃ」
「ケシの実……アヘンか?」
俺は何んとなく聞いた。
「おぉ、知っておるか。さすがじゃな。そっちの世界では、医学はどのようになってるんじゃ?」
「どんなって……」
俺は返答に困った。この世界の医療水準なんてわかるわけないし、どんな病気の例を挙げればいいかもわからない。コロナが流行るくらいか?インフルが治るくらいか?
「……まぁまぁだ。治せるやつもあれば治せないやつもある」
爺さんは微笑んで、また数回小さくうなずいた。
「そうか。まぁ質問は後じゃ。今は食事にするとしよう」
爺さんは立ち上がって、キッチンのようなところに向かった。それにシュレンもついて行った。
「何か作ってあるかの?」
「スープとパンがあります」
「では、それを出すとしよう」
「分かりました」
そんな会話が聞こえた。
「すまんの、少し質素になるかもしれんが、我慢してくれ。最近は研究で金が少なくての」
爺さんは俺に聞こえるように、少し声を大きくして言った。しばらくして、シュレンは俺の前に、皿に乗った窯パンと、カップに入ったポタージュを出した。
「どうじゃ?これは少年の世界にはまだあるかの?」
爺さんはキッチンから自分の分の食事をもってきながら俺に聞いた。
「まぁ、あるな。どっちも」
「そうかそうか。あまり食文化は変わらんのかの」
「んー、料理の量は増えてるな。あと不味いものは消えてる」
俺はそう付け足して、右手でパンを掴んでかじった。
「……うまい」
久々にパンを食ったからか、ずっとイギリスに住んでたからか、そのパンを美味く感じた。それと同時に、不安感と安心感が、妙な重なりをもって押し寄せてきた。これまでの世界へ戻れるかという不安と、ここで生きていけるということと、俺のような人がいるという安心。ただ、俺のような人が、国を作ってこの世界で生きているということは、きっと元の世界へと戻れないのだろう。
「……どうかしたか?」
シュレンが聞いてきた。きっと、俺がパンを持ちながら、一点を見つめて考えてたからだ。俺は適当に返事をして、黙々と目の前の飯を食い続けた。食い終わると、爺さんは、
「痛みがある程度収まるまでは、二階のベッドで休むべきじゃ。シュレン君は彼のそばについていなさい。儂は下で実験でもしているから、何かあったら呼ぶんじゃぞ」
と言い、席を立った。シュレンも同時に席を立ち、皿を回収して洗い場に置いた。
「先に行っててくれ。すぐに俺も行く」
シュレンのその言葉を聞き、俺は階段を上がってさっきの部屋に入った。改めて部屋を見た。ベッドと机がそれぞれ端に置かれ、壁についている窓からは、夕暮れ前の日光が差し込んできている。俺は窓の外を見た。眼下には、石畳の道を走り回る子供たちと、その横で数人で何かを話している女性たちの姿があった。俺は窓を少し開けた。涼しい風が吹き込んでくると同時に、子供たちの騒ぎ声、街のどよめきが部屋に入ってきた。空気は、やっぱり向こうに比べてきれいだ。俺はシュレンが入ってくるまで、ぼーっと外を眺めていた。少し視線を上げると、この家は少し高台に建っているのか、街の様子が見渡せた。小さい町だ。中心らしきところが、はっきりと見えるほどに。そこには五階建てくらいの石造りの建物があった。教会だろうか。いや、でも十字架がついてなさそうだが……。
その時、シュレンが部屋に入ってきた。シュレンは部屋に入るなり、俺にベッドで寝るように指示した。
「なら、ベッドを窓に近づけていいか?」
「分かった」
俺は片手で、シュレンは両手で、ベッドを引きずらないように、ベッドから窓の外が見えるように置いた。それが終わると、俺はベッドの上に寝転び、シュレンはベッドの横に来た机の椅子に座った。窓の向こうに、茜色に染まる空が見えた。
「痛まないか?」
「あぁ。大丈夫だ」
俺は目をつぶって、シュレンにいくつか質問した。
「なぁ、さっき言ってた、俺みたいな人がいる国って、どんなところなんだ?」
シュレンは腕を組んで答えた。
「そうだな……一回しか行ったことないからよくわかっていないが、建物はここと似たような感じだ。少し高かったけどな。あと、服装が違ったな。次の時代の服って感じだ。暖かそうだった」
「国って感じなのか?」
「国……そうだな。貿易商の話だと、統治している人がいるらしい。政治も行われているらしいが、仕組みが難しいらしいぞ。王がいなくて首相ってのがいて、その下にさらに多くの人がいて……て感じらしい」
「なるほどな……」
俺はぼんやりと目を開けた。その国では多分、現代とほぼ同じ政治がされてんだろう。この時代の絶対王政とはそぐわねーから、貿易商に分かるわけもないのか。……貿易商?
「貿易してんのか!?」
俺は目をかっぴらいて飛び起き、シュレンの方を向いた。
「あぁ、してるぞ。主にこっちが向こうに運ぶって感じだけどな。対価は、向こうの国内で取れる金貨だ。一部では、向こうに錬金術師がいるって噂だ。他にも、鉄とか銅とかの金属と交換してるな」
「……向こうに運ぶのは?」
「綿とか絹とか……あと食料と石炭が主だな。何に使うのかわからない骨董品とかもよく持って行ってると聞く」
「そうなのか……」
俺はかなり驚いた。そんなことしていいのか。タイムスリップした人がその時代の人に現代の技術を流出させるのは、かなりタブーな部類じゃないのか……?
「……なんかあるのか?」
驚きを隠せてない俺の顔を見たからか、シュレンがそう聞いてきた。
「いや、なんでもない……」
俺はまた横になった。
「そういえば、グレース博士が君にこれをと渡してきた」
シュレンは俺に一つの薄い本を渡してきた。
「なんだこれ?」
それはA5サイズくらいのノートのようなもので、中には羅線以外に何も書かれていない。
「あとこれもだ」
もう一つ渡してきたのは、シャーペンのようなものだ。
「どっちも博士が向こうの国で買ったものだそうだ。それを複製する研究は終わったから、自由に使っていいらしい。博士は、日記をつけることを薦めていたぞ」
「日記?」
「何かの拍子で元の世界に戻った時に、持っていたら夢じゃない証明になるだろうってことらしい。まぁ、時間があったら書いてみてくれ」
俺はしばらく、そのノートをペラペラとめくった。現代の紙に比べると、かなりざらざらとしている。しかし、シャーペンできちんと文字が書ける程度のものだ。厚さも色も、しっかりしている。
「日記か……」
俺はその二つを横に置き、目をつぶって眠った。さっきまで気絶していたはずだが、次の日の早朝まで、結構深めの眠りについた。
朝起きてすぐ、俺は薄明りの元、ノートとシャーペンを手に取り、机に向かった。机の上に置いてあるろうそくに火をつけ、ノートを開いた。シャーペンの中には、0.7ミリ程度の芯が何本か入っていた。簡単な構造の感じで、空洞が普通のより広く感じた。俺はノートの一ページ目を開き、『11月20日』と、昨日の日付から書き始めた。
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