第64話 立ちんぼで拾ったのは元クラスメイトでした

 お化け屋敷『戦慄迷宮』へ入った。

 正直言おう。

 入ったことを激しく“後悔”した――。



『うああああああああああああああああああ……!!!』



 薄暗い病院内。不気味な通路を歩いているとバケモノに襲われ、俺は叫んだ。

 思った以上にバカ怖い!

 てか、以前と雰囲気違いすぎないか!


 病棟には人(超リアルな人形)がズラリ。あまりに不気味で震えた。突然動き出すんじゃないかと常にビビっていた。

 真っ暗な廊下を歩いていると追いかけられるわ、散々だった。


 怖すぎて最後まで歩くのは厳しい。

 途中退場も可能だが……。



「こ、怖すぎるぅ……」



 さすがの倉片さんも弱音を吐いていた。

 お化け屋敷だけは苦手のようだった。

 という俺も冷や汗かきまくりで、足もガクガク。今すぐに外へ出たいと感じていた。これ以上、バケモノが出てきたら漏らすぞ……!?



「どうする、倉片さん。この先まだまだあるっぽいよ」

「うそでしょー…」



 涙目の倉片さんは、もう一歩も動けないような雰囲気だった。ですよね。


 そろそろリタイア扉があったはず。

 どのみち、もう少し歩く必要があった。



「もう少しでリタイアできる。がんばろう」

「う、うん……」



 がんばって先へ進む。

 死ぬほど不気味な薬保管室のような部屋を素通りしていくが……人形が『ガタッ』と動き出した。



「うああああああ!」

「いやあああああっ!!」



 びびったああああ!

 いきなり動くなって!!



 走って通路を目指し、ついに『リタイア扉』を発見。外へ出た。



 ・

 ・

 ・



「――――っ」



 足がまだ震えていた。

 ……お、おかしい。少し前に見た戦慄迷宮とは違った。めちゃくちゃパワーアップしているじゃないか! いつの間にアップデートされたんだよっ。



「怖かったね、キョウくん」

「あ、ああ……心臓に悪すぎるぜ」



 しばらくはベンチに座って休憩した。

 そして残り時間は再び絶叫系やら乗り物を楽しみ――夕方。


 ついにラスト『大観覧車』へ向かうことに。


 この時がきたか!


 ポケットに突っ込んである結婚指輪を確かめる。うん、入っている。バッチリだ。



 観覧車で頂点へ到達した時にプロポーズする。その作戦でいこう。

 しかも、そろそろ日が落ちて夜景もキレイになるタイミング。雰囲気も最高だろう。



 さっそく大観覧車へ乗り込んだ。


 席に座って向かい合わせに。

 ゴンドラはゆっくりと上昇していく。


 日はどんどん傾き、闇に染まり始めていた。



「今日は最高に楽しかったね、キョウくん」

「そうだな。はじめてまともなデートしたかも」


「いつもヤってばかりだったもんね」

「すまん。でもそれほど倉片さんのこと愛しているんだ」

「キョウくんに愛されて嬉しいよ。ありがとね」



 と、微笑む倉片さん。……笑顔が素敵すぎる。

 その笑みをずっと、永遠に見ていたい。


 高校の時、少し会話する程度・遊ぶ程度だったけれど――あの頃から俺は彼女が好きだった。


 まさか、立ちんぼで出会い、こうして恋人になれるとは思わなかった。

 ここ数か月でたくさんの事があった。


 特に、倉片さんの借金返済は大変だった。


 けれど一緒に乗り越え、そして愛し合った。それでもまだまだ足りない。俺はまだまだ倉片さんを愛したい。愛しまくりたい。


 この先の将来を共に進みたい。



 ――ゴンドラが頂点へ向かう。



 空はあっさりと夜空に支配され、星々が輝きを獲得しはじめていた。遥か銀河の彼方から光を放つ。

 眼下に広がる夜景。静かに煌々こうこうと主張をはじめるネオン。



 今が“その時”だ。



 俺は席を立ち、倉片さんの前で腰を下ろす。

 視線をゆっくりと向けて彼女の左手を取る。



「倉片さん。回りくどい言い回しはしない。ストレートに言うぜ」

「え……」



 結婚指輪を取り出し、俺は倉片さんの左手の薬指にはめた。求婚するよりも先に動作を先に済ませたのだ。


 返事は分かっていたから。



「愛しているよ」

「うん、知ってたよ。ありがと」



 ぽたりと結婚指輪に雫が落ちる。


 倉片さんの一粒の涙。


 次第に雨のように降る。ボロボロと泣き始める倉片さん。



「まさかそんなに嬉し泣きしてくれるとは」

「だ、だって……プロポーズだとは思わなかったんだもん」


「幸せにするよ」

「よろしくお願いしますっ」



 少し見つめ合い、そしてキスを交わした。

 直後、ちょうど花火が上がった。なんてタイミングだ。まるで俺たちを祝福しているようではないか――。



 ◆



【一年後 - One year later】



 結婚して一年が経過した。

 彼女のお腹が最近大きくなった気がする。

 あれから、ずっと0.00でヤっているせいだな、ウン。

 覚悟はしていたけど、俺が父親になる日が近そうだ。いや、既にかな。まだ実感はない。


 だが、幸せだ。最高に幸せだ。



 - 完 -



◆ありがとうございました!


『立ちんぼで拾ったのは元クラスメイトでした』を応援いただき、ありがとうございました。応援いただけたおかげで、久しぶりに10万文字を書き上げれました!


いつも感想を書いてくださる方、本当にありがとうございます!

全部読んでます!

(カクヨム以外でも3~4作品ほど抱えているので時間がなくて返信できません泣)



また新作ラブコメもやるつもりです!

当面はハイファン予定かもしませんが。



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立ちんぼで拾ったのは元クラスメイトでした 桜井正宗 @hana6hana

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