第63話 倉片さんの笑顔の為にっ!
話し合った結果、富士Qハイランドに決定した。
倉片さんもお化け屋敷『戦慄迷宮』に入ってみたいと意見が一致。いいね……!
ここからなら電車で二時間ちょいとかで着くようだ。
さっそく準備を進め、荷物を軽くまとめていく。こっそり買った結婚指輪も忘れないように。
伊勢崎さんと牧原さんに出かけると伝え、俺たちは職場を去った。
直ぐに駅まで向かい、交通ICを通して改札口を突破。
電車に乗って目的地を目指す。
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【富士Qハイランド】
二時間半ほど電車に揺られ、なんとか到着。
ジェットコースターが稼働しており、叫び声が聞こえた。……アレには乗りたくないな。
さっそくチケットを購入して『フリーパス』を購入。せっかくだから、いろいろ遊びたい。
「わ~、乗り物たくさんだね!」
子供のように目を輝かせる倉片さん。
彼女の足は明らかに絶叫系マシーンの方向へ向いていた。ちょ! やべえ!
「まった、倉片さん!」
「え?」
「せ、戦慄迷宮にしようよ……」
「楽しみは後だね。先にジェットコースター行こう」
「……っ!」
あのコースが蛇みたいにグネグネしてるヤツだよな? 途中、直角もあるし……死ぬって! あんなのムリー!!
あと、あっちの『ヤバイじゃないか!』ってジェットコースターなんか足元浮いてね……?
座席がクルクル回転してるし、名前からしてヤベェって。
「キョウくん、まさか怖いの!?」
「…………う」
「そっか~。いきなりジェットコースターは怖いよね」
「すまん」
「解かった。あっちのティーカップにしよっか」
「それなら……!」
さすがに一番目に絶叫系は死ぬ。死んでしまう……。
というわけで比較的優しいティーカップへ変更。
倉片さんと共に大きなカップの中へ座り、しばらくすると動き出す。真ん中のハンドルを回すとカップが急回転。目が回った。
「……わ、なかなかキツいねえ~」
「こ、これは三半規管がやられそうだ」
でもこの程度なら全然怖くない!
むしろ楽しいねっ。
次に倉片さん待望のジェットコースター『ヤバイじゃないか!』となった。マジでヤベェってこれ!!
座席に座ると足元がブラブラしていた。
こ、怖すぎるって。
しばらくしてゆっくりと動き出す。
直ぐにスピードを上げ、坂コースを上がっていく。かなり高くまで上がり――やがて。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああ……!!」
真っ逆さまに落ちた。
座席がクルクル回転しながら!!
わ、わ、わあああぁぁぁぁ……!
「あはは~」
隣で倉片さんは余裕の表情で笑っていた。なぜ~~~!?
なぜそんな楽しそうなの!
俺はちっとも楽しくないっていうか、怖ぇええええええええ!
――その後の記憶はない。
俺は気絶していたのか、それとも忘れたくて直ぐに記憶がデリートされたのか。なんにせよ、俺は地上で脱力していた。
よかった、漏らしてはいない。
「…………っ」
「ごめんね、キョウくん」
「い、いや。いいんだ……倉片さんが楽しそうだったから俺は嬉しいよ……」
てか、倉片さんが絶叫系得意だったとは!
残り何種類からあるらしいが、二種類は乗りたいという。……俺はもうダメかもしれない。
魂が抜けながらも、俺はようやくジェットコースターから解放された。
「大丈夫?」
「……うぐっ」
さすがにちょっと吐きそう。でも堪えた。倉片さんの笑顔の為にっ!
「そろそろ戦慄迷宮行こっか」
「お! いいね!」
怖いには怖いが、まだ高所じゃないだけマシだ。さ~て、倉片さんが泣いて抱きついてきてくれると嬉しいのだが。
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