エピローグ レン

水の音がする。

そう言うと、近くに湖があるからな、と彼は言った。

まあ湖と言うには少しばかり小さいし、それに。

汚れてる?

そう、汚れてる。飲まない方がいい。

じゃあ、そうする。

喉が渇いたのか?

渇いてない。……けど少しだけ何か食べてみたい。

そうか、なら、もう少し急いで町に向かうよ。

うん、お願い。

あ、でもその前に。やっぱり少しだけ湖に寄っていくか。その、俺たちの格好って、町に行くにはあまりにも。

汚れてる?

そう、汚れてる。きみの白衣なんてもう元の色が分からないし。綺麗な水じゃないけど、少し洗うくらいなら大丈夫だろう。

別にいいよ、これはもう捨てるから。

え?

だから、代わりにさ。

「僕に、新しく、名前をつけてよ」

今度はちゃんと覚えるようにするから。

町に着くまでに考えておいてくれよ、と言って、僕は再び彼の背で目を閉じた。


END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あかいともしび @Kattea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る