第99話 水神龍オーケアニス
「あなたが、水神龍オーケアニス……」
最後の試練として立ちはだかった巨大変形カメを倒して封印を解いたオレの前に姿を見せたのは、ヒレのような手足を持った美しい水龍だった。
「こうして直接お話しするのは初めてですね。ここはハイドラ湖の忘れ去られたダンジョン『水神龍の湖底遺跡』を攻略した先にある『水神龍の間』です」
「水神龍の、間……」
炎神龍の岩窟の最深部、クルースニクが封印されていた『炎神龍の間』のオーケアニス版ということだろうか。
というかここはどこなんだ? デカい貝殻に吸い込まれて来たわけだが……
「それにしても、クルースニクから聞いていた通りの可愛らしい男の子ですね。あちきの好みです」
「いや、可愛らしいとか言われても男は嬉しく……って、今なんて言った? クルースニクから聞いたって」
「ええ。神龍同士の特別な念話……神龍通力というやつです」
どうやらオーケアニスとクルースニクは離れていてもコミュニケーションが取れるらしい。
テレパス能力みたいなものだろうか? でも、それなら……
「オーケアニスに頼みたいことがある。師匠……クルースニクと話しをさせてくれないか?」
「申し訳ありません。お話しさせてあげたいのは山々なのですが、今はちょっと通信環境が悪くてですね」
「月末でギガ使い切ったんか」
「なんですか?」
「いえなんでも」
オーケアニスの説明によると、神龍通力はいつでも通じるような安定しているものではないらしい。
そりゃまあそうか、どういう仕組みか知らんが、クルースニクがいる火山の地下の最下層とこの湖の底じゃあ電波も悪いよな。
「今まで封印されていたあちきからはクルースニクに言葉を送ることは出来ず、ホムラさんの手によって封印を解除されたクルースニクから時折状況を報告されるだけでした」
「それでオレの事を知ってたのか」
「はい……あ、少々お待ちください」
パアアアアアアアアアア…………!!
「……ふう。こんな感じでしょうか。どうですかホムラさん」
「えっ? ま、まあ良いんじゃないか?」
龍の姿をしていたオーケアニスが、唐突にマーメイド族のような姿の女性に変身する。
その貝殻ビキニみたいなやつどっから出してきたんだ?
「クルースニクが、ホムラさんと暮らしていた時はこうやって人間族の姿になっていたと聞いたので。まあ、あちきの場合はマーメイド族の方が馴染むのでこちらでやらせていただきます」
「そこはまあ、ご自由に」
水の中だしな。オレも足にダイビング用のフィンとか付けたい。
「ホムラさんはどっちのほうが好きですか? 人間族とマーメイド族は」
「いや、まあ別に……」
「あ、お腹空いてませんか? お乳飲みます?」
「大丈夫です」
今の会話でオレがクルースニクのおっぱい飲んでた事までオーケアニスに伝わっている事が分かってしまった。鬱。
―― ――
「ふむ……やはり今すぐには念話を送れそうにないですね」
「そうか……それなら可能になったらで良いから、オレが元気にしてることをクルースニクに教えてやってくれ」
「もちろん。あちきの封印を解放してくれたことをしっかりと伝えさせていただきます」
封印が解除されたオーケアニスからも他の神龍に念話を送れるようになったらしいのだが、今はまだ全回復とはいかず、タイミングが悪いようだ。
まあ、クルースニクも元気にしてるようだし、それが分かっただけでここに来た甲斐があった。
「それにしても、ふむふむ……なるほど」
「ど、どうしたんだ? オレの身体、なにか変か?」
こちらをまじまじと眺めてくるオーケアニス。
それにしても人魚のオーケアニスはすごいな。
本物のマーメイド族とは違って下半身の魚部分が細長いというか、スラッとしている。
まるで古代魚みたいだ。
「ホムラさんは人魚の巫女からの祝福を随分と長く受けたのですね。まだまだ余裕そうです」
「そんなことまで分かるのか……恥ずかしいな、くそ」
「キスだけでは飽き足らず、色々とやっちゃいましたか?」
「やってねえよ」
なんというか、なんでこの島に人魚新地なんてもんがあるのか分かった気がする。
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