第26話 睥睨

いくつかある大広場のうちそのひとつ、中央付近、その義手の男は鎚で蜥蜴とかげの頭を緩く叩き、それは力なく顎から倒れ込む。その蜥蜴とかげは、天へ向かって力を吐き出したそれそのもの。


義手の男へひとりの流浪の民が近づく。


「不甲斐ない………」


義手の男は鎚を腰に収める。


「その強さも、そこにいたるまでの弱さもご先祖様はいつも見てくださってる[最初はだれでも弱いから気にすんな]」


突風。


力が収束したときに発生する、その風。ばたばたと強烈にはためく髪と、体にぶつかる強風は、その規模の大きさを思わせた。


上空、“睥睨の法“の一部が動き出す。その下は魔術協会。


力の収束、そして放出まで、それはまばたきをする間に起きる一瞬のこと。


照射。


雷の如き、まりょくが落ちた爆音。


その流浪の民はあぜんとそれを見上げている。


「またあの(開催のときのやつじゃないか?)」


義手の男は首を振る。


「いや、その術師たちは残らず捕まえた。そもそも違うかもしれん」


義手の男はがれきの埃混じった向かい風を受けながら突き進んだ。




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