批評会でフィードバックに参りました。
まず、私は本来、純文学を書いてきた者でありまして、カクヨムに投稿している「風見鶏――」などにつきましては、完全にWEB小説の読者向けに書かれたコメディ作品であります。ですが本来は、純文学に重きを置き、最も影響を受けた作品は、カミュの「異邦人」であることから、硬派な文章や哲学的な考えが散りばめられた作品の方が好きです。
よって、私は貴方様の文体や、文学的実験を試した作品は好意的に感じております。コメディ畑よりも純文学畑の方が広いイチ物書きとしての感想として受け取っていただければ。
物語の前提として、徴税官と呼ばれる人々が、一つの土地に定着しない人々から力を徴収するというものでしょう。設定はすごく好み。
この一話から読み取れたのは、三人の登場人物と、彼らを襲った謎のナニカ。
「力少なき者は命を損なわない程度に、力多き者も命を損なわない程度に」→これがこの世界の理なのでしょう。生かさず、殺さずの理念の下、徴収した力を王に献上する。こういう理も好きです。
私は読心術の心得はありませんし、その心得がある読者がいても、なかなか作者の意図を100%理解できるかと聞かれれば、それは難しいでしょう。恐らく貴方様もそれを理解しているからこそ、この作品を読み進めることができる、心の強い人向けだと書かれているのだと思います。
この作品がどうなっていくのかはまだ分かりません。ですが、この世界の理や哲学的要素、宗教観念、生と死、流浪の意味、力と王の関係、こういったテーマが散りばめられている気がしてなりません。
カクヨムの読者は、暇つぶしとして作品を読むことが多いと感じます。文章のみで世界を構築する小説において、読ませる文章こそが、WEB作家として求められる力量でしょう。その文章が面白ければ、純文学でも硬派文学でも人気が出るものと思います。私はそこを目標としております。だからこそ、貴方様の文学的実験は称賛いたします。
他の方々の感想に対する返事から、貴方様の心もお強いのでしょう。同じカクヨムで作品を書くもの同士、貴方様のような作家と出会えて幸運です。
作者からの返信
お気遣いさせてしまいましたが、心より嬉しく思います。ありがとうございます
前提として、拙作はコメント欄を含めて作品の一部としており、分からない読者が、分かる読者の"まねぶ"ことを実践する、学ぶの語源通り、再現することを設計に取り込んでおります。そして、サブ要素としてエンタメ的な演出はしておりますが、あくまでサブ要素。異世界徴税官の読者層は、あなた様のような文学に嗜みのある方へ向けて描いております。全ての拙作の、数あるテーマのうちのひとつですが、群として個、のように働き蟻的役割分担を考えております。分かりやすさに挑む人がいるなら、私は、分かりやすさでは見出すことのできない事象に挑む担当だと定義しております。私が伝えようとしている事象のあり方を、あなた様のような分かりやすさの実践者へ伝えて、影響を及ぼすことを意図しています。
次に重要なのが、異世界徴税官においては、読むべきではない人が自然と読み進めず去れるように、ウェブ小説の特性を活かして読みづらかったり、逆に読み進める目的がある人へピンポイントに引っかかるような設計をしております
"一つの土地に定着しない人々"
"生かさず、殺さずの理念の下"
"心の強い人向けだと書かれているのだと思います"
さすが鋭いです。抽象化してあらゆることに並列させてみてください。ひとつの文が、三つ、四つの意味を持っていることがあり、形を変えて同じことを問うてきたり、形を変えずに別のことを問うてきます。
流浪の民のあり方は、狩猟採集生活について知っていると、国家との距離感と、そして強さを信奉しているにも関わらず、農耕生活のような目立った従属関係がないことに納得できるでしょう
同じく、心強く感じております。企画の本懐を成し遂げることができただけでなく、物語でも示唆されますが、隣り合う道を歩んでいるのは、非常に心強いです
やっと一話読みました。
凄いスピード感で進みますが、映像が浮かんできますね。
ただ何話か読み進めていくうちに何度か読み返したりしてしまいそう。
でも複雑なものを組み立てて読むのは好きですよ。
作者からの返信
お時間割いてくださりありがとうございます!!
最近なかなか読書の時間を取ることができず悔しい思いをしているところです……
読み返さなくてもいいような作りを目指しているのですが……次はうまくやりたいです!
ただ、物語の終わりの終わりまで読んだ後の2周目であれば、違って意味に聞こえるものや、気にも留めなかった描写、単語が嫌に目につくようになるようにしています!
ただ拙作の問題は、読者像をえげつない存在にしてしまったことです……人の心を読めたり、構造や仕組みを考えることなく感じるように気づく……とか汗
でも気づかないわからないも明確な設計のひとつです!
おお、これぞ壮大な世界観!
義手のノアームさんの頼りがいに惚れ惚れしますね。
作者からの返信
そのコメント、とっっっっっても嬉しいです!
人物ごとに与えられた役割が、見えてらっしゃるんですね!
失礼いたします。お前の水夫です。
他の読者の方々が全くコメントを書かれないので、あくまでも一人の読者として書かせていただきます。
スピード感のある描写で、派手な魔法の打ち合いもあり、ついでに台詞が短くまとめられて、それでも全体では何が起きたのかよく分かるのが羨ましいと思う次第です。
>訛りのある、野太い声。
この文の前が男の悲鳴なのは分かるのですが、誰の悲鳴なのか今一分かりにくい部分でした。
この文の直後に、前話で書かれた少女が出てきているので、目まぐるしく切り替わり過ぎかな、と思った次第です。
作者からの返信
"全体では何が起きたのかよく分かる"
多少読者の読む速度を落としてしまうような悪文かなと不安でした……そう感じてもらえたのなら、工夫の甲斐があったと嬉しくなっちゃいます!いずれは100人中100人が読みやすいと言うようなものを書けるようになります!
"分かりにくい部分でした"
わかりづらかったですね……ご指摘のおかげで直すことができました!ありがとうございます!
人物の行動、描写→その人物の台詞、をある程度守って、時には破ってやっているので、その直感は正しいです!
編集済
ここまで(説明文・プロローグを含めて)拝読しました。
すべての要素に意味を持たせるという、非常に高い志を持って本作を書かれているとのことで、まずはその点に敬意を表したいと思います。
ただ実際に本文を拝読した印象としては、その志の高さを受け止めるには、より洗練された堅牢な文章が必要なのでは、と感じました。
より具体的に表現しますと、推敲の余地があるように感じられた箇所が文中に多数あり、「意図的に違和感を出している」のか「意図せず違和感が出てしまっている」のかが、読み手である私の側からは非常に区別しづらい印象を受けました。
個人的な見解ですが、「深い水底を見通すためには、表面の水が澄み通っている必要がある」と考えています。
現状の本作に関しては、底を見通す前の段階で夾雑物が多く、深淵に触れる前に視線が散らされてしまった印象です。
とはいえ個人的に好きな箇所もあり、「登場人物の発言と、行動や現象とが一致していない箇所」に面白さを感じました。
言葉と真情とが異なる、ズレの妙味は好きです。
具体的にはこのあたりです。
> 「空は青々と澄み渡り―――――」
> 空は曇り始める。
ズレ方としてはわかりやすいと思いますが、一文に籠った皮肉の匂いがいいですね。
あと前話になりますが、丁寧に挨拶をした後に襲ってくる村人も。
フィードバックとしては以上です。
かなりネガティブになってしまい申し訳ないですが、何かの役に立ちましたら幸いです。
【追記】
依頼内容承知いたしました。少々お時間くださいませ。
平日はばたばたしているので、早くとも週末になると思います。
作者からの返信
しっかりメモを残しております。
お気遣い、心から感謝申し上げます。
難儀をさせてしまいましたね。
"個人的な見解ですが、「深い水底を見通すためには、表面の水が澄み通っている必要がある」と考えています。
現状の本作に関しては、底を見通す前の段階で夾雑物が多く、深淵に触れる前に視線が散らされてしまった印象です"
素晴らしいです。この時点でそこまでの答えに至ることができている。重ねて、素晴らしいです。拙作は、あらゆる境遇の人が偶然読み進めることがないように(身内の不幸、弱いものいじめへのストレス、爽快感のあるエンタメを求める、大病を抱えているなど)序盤は語り部の癖を引き出しております。(幼い語り部は、読みづらさがあるものの全てひらがなで書かれるように)
"文法的な違和感"
語用論、生成文法はご存知でしょうか。この言語で可能な言い方は、他言語では成り立たない、言語によって思考が左右されることもある(蝶と蛾の区別をしない言語、3以上の数詞がない)ということを出発点に、では何に違和感を覚えるのか、ストレスを感じるのか、ということに、異世界徴税官は挑んでいます。このストレスを並列化し、人の心を、自分ではなく他人目線で理解するには、どれほど疲労のストレス耐性が必要なのか、ということに着地します。目滑りが起こる、読み飛ばす、ということも設計に入れております。その人にとって重要ではない、ということです。
東洋哲学と西洋哲学を対比させると、統治する側の考えと、統治される側の考え、と変換できることがあります。拙作の根底の多くは東洋哲学的であり、拙作が描く"深い水底"を皆覗けたなら、社会が成り立たない、と導きました。詳細は省きましたが、違和感に直面した時、何故と問うことで答えを見つけ、読み進められる人物という、非常に限定された作りになっております。とはいえ、そのさじ加減は自分の基準ではなく、他人の感覚による基準でしか成立できないので、そのような意味でも非常に嬉しく思っております。
"「定規で線を引いたかのように」の時点で、整然としているとは十分伝わるので「整然と」が冗長に感じます"
ばっちりです。その感覚に、なぜ伝わるのか、と問うてみてください。ここでは大したことはないのですが、なぜ、の対象が変わると威力を発揮するものです。
"現代日本を想起させる表現"
"(|積乱雲《現地での呼称》"
ここはいまだに悩ましいところです。読者は昔の出来事としてこの手記を読んでいるのですが、メタ的に一歩下がって、実際の読者へ、このことを伝える情報が、""日本語訳について""の1番下の部分でたったひとつという点です。没入的な読書体験は次作で挑戦するつもりですが、今作は現代に意識を置かせようと試みています。雲については、ここは作者の意図と物語の人物とで絡まってしまっています。雲、という事物は物語の人物総員にとって重要な物なのですが積乱雲に相当する語彙は生まれませんでした。積乱雲が発生する地理ではなかったゆえ……"日本語訳について"の注意書きだけで読者が着地点を見出せるか……?と、考え、なら濁りを強くしたい序盤に持っていく、ことで落ち着きました。
"どんな形態なのかシンプルに疑問を覚えました"
ここはふたつの悩みがあります。他の箇所にも出ていますが、この手記の書き手の考え方、文化、翻訳者の考え方を採用していること、そしてそれをコントロールする私自身が、一般的な読解処理と乖離があること、です。前述した通り、読みづらさのために大きな作者の介入がありました。
"引用箇所で特に顕著ですが、アラビア数字と漢数字が混在しているように見受けられます"
ここに関して、目的に照らし合わせても"さすがに拙い……"と悩みましたが、濁った表面をより濁った方向へと、また、書き手の存在、ロランバルトの『作者の死』という観点から、そして、ここに脳機能の活性化が顕著にみられる人物とは、西洋哲学的かつ統治者としての観点つまり拙作の相性から、下手に思われても仕方ない、そう思われてこそ、と覚悟を決めたところです。他作品を先月だけで八百万文字読んでおりますので、違和感の排除が高い評価に繋がりやすい、ということは心得ております。私は評価ではなく、目的のために描いておりますゆえ、耐え忍ぶ思いであります。
"あと前話になりますが、丁寧に挨拶をした後に襲ってくる村人も"
鋭いですね。結末の描き方は両断されたような具合ですが、この最初の話と最後の話を対比させることで、描かれていないことを導けるようになっています。
と……長々とお目汚しをしてしまいました。
やはり、このように対話的だと課題点や整理すべきところ、維持すべきことに指向性を持たせられるので、有意義な時間を持つことができます。重ねて心よりお礼申し上げます。
ここまで序盤の状態を把握していらっしゃるのなら、甘えた言葉が出てきてしまいます。
もし煩わせることがなければ。
9話 抵抗:傾倒
14話 生き方
第 話 心の中の夜
20話 恥
33話 引き抜かれた舌
3000年後
上記の総評を、"3000年後"という箇所のコメント欄でいただけませんか
厚かましいお願いですが、この作品を届けるべき人にどう伝わるのか、自分の尺度でしか測れておりません。あなた様の感じること、思うままで問題ございません。拙作は、人そのものに挑んでおります。その思うままの状態と、なぜなのかと、対象と自己に問い続けることで違いがあるのか、ないのかも、教えてくださいませんか。