第11話 討伐と魔法の話

 翌朝、太陽がゆっくりと昇り、町全体に温かい光が差し込んできた。

 隼人たちは『夕凪亭』を後にし、再び冒険者ギルドへと足を運ぶ。


 ギルドに到着すると、ホールは朝早くから冒険者たちで賑わっていた。

 隼人は、依頼板に貼られた依頼を見つけ、その中から1つの討伐依頼に目を留めた。


「イノシシ討伐の依頼か。町の近くで畑を荒らしてるらしいし、遠出せずに済むな。どうだ、これにしようか?」


 ノアが覗き込み、考え込むように言った。


「うん、近場だし、危険も少なそうだしね。まずはこれで肩慣らしって感じかな」


 リーシャも頷いて加わった。


「そうだね、まずは軽い依頼でいこうか」


 隼人は依頼書を持ってカウンターへ向かい、ギルドの受付嬢に依頼を申し出た。


「このイノシシ討伐の依頼を受けたいんですけど、討伐の証明ってどうすればいいんですか?」


 ギルドの受付嬢は柔らかな笑顔を浮かべながら、説明を始めた。


「討伐の証明には『魔石』を回収していただくことになります。魔石はイノシシの体内、胸の中央部分にあることが多いです。討伐後にその魔石を持ってきてください」


 隼人はその言葉に少し戸惑いながら聞き返した。


「魔石……?それってどんなものなんだ?」


 リーシャが話に加わり、軽く説明を補足した。


「魔石はね、モンスターや動物の体内にあるエネルギーの結晶みたいなものなんだよ。胸の中央にあることが多いから、そこを確認してみるといいよ。持ち帰れば討伐の証明になるし、魔法を使うときに重要な資源にもなるんだ。もちろん私達も体内に持ってると思うよ!」


 隼人は驚いた表情で聞き返した。


「魔法ってものがあるのか?それに、その魔石を使えば誰でも魔法が使えるのか?」


 リーシャは少し笑いながら首を振った。


「ううん、魔石があっても、魔法を使うには特別な訓練や知識が必要なんだ。私達も魔石を持ってるって言ったけど、使い方を知らないから魔法は使えない。魔導書や誰か魔法使いに教わらないとダメなんだよ」


 隼人は「なるほど」と頷きながらも、異世界の神秘に触れたことに興味を抱いた。


「そうか、魔法を使うにはいろいろと条件があるんだな。わかった、討伐が終わったら魔石を持ってくるよ」


 ギルドの受付嬢は丁寧に書類を整理し、隼人たちに渡しながら微笑んだ。


「お気をつけて。どうか無事に戻ってきてくださいね」


 三人は、ギルドを後にし、イノシシの討伐に向けて町の外へ向かった。



 

 隼人、ノア、リーシャの三人はイノシシの討伐に向かう途中、広がる緑の田畑を見ながら歩いていた。

 穏やかな日差しが降り注ぎ、道の両側には小さな村の畑が広がっている。


 隼人は、ふと思い立ち、二人に問いかけた。


「なあ、魔法って、どんな感じで使うものなんだ?実際どんなものなのか興味があるんだ」


 ノアとリーシャはお互いに顔を見合わせて、まずはノアが口を開いた。


「うん、基本的には魔石があれば魔法を使うことができるんだけど、私たちは特に魔法を使う訓練を受けていないからね。でも、聞いた話だと、火を生み出す『火魔法』や水を操る『水魔法』、風を吹かせる『風魔法』、土を動かす『土魔法』なんかがあるみたいだよ」


 隼人は軽く驚いたものの、すぐに納得した。

 やっぱり異世界なんだ。魔法くらいあって当然か……。

 火や水、風、土の力を操るという話も、この世界に足を踏み入れた今となっては自然に受け入れることができる。


「なるほど、やっぱり魔法がある世界なんだな……」


 彼は小さく頷きながら、自分が今まで思い描いていた「異世界」と現実の一致に、不思議な感覚を覚えた。

 魔法というものが目の前に広がるこの世界で、これから自分がどう生きていくのかを考えざるを得なかった。


 リーシャも口を挟んできた。


 「でも、魔法を使うには、魔導書を読んだり、魔法使いから教えてもらう必要があるんだ。私も一度試そうとしたんだけど、そう簡単にできるものじゃないみたいでね。結局、習得は諦めたよ」


 「そっか……やっぱり訓練が必要なんだな」


 隼人は心の中で1つの疑問が大きく膨らんでいた。

 自分は機動兵器として転生したものの、この世界にある「魔法」という力は使えるのだろうか?


「そういえば……俺も魔法って使えるのかな?」


 その言葉に、ノアとリーシャは顔を見合わせた後、リーシャが先に口を開いた。


「え、ハヤトも魔法を使いたいの?」


 隼人は少し戸惑いながら肩をすくめた。


「いや、使いたいというか……この世界には魔法が普通にあるって聞いて、俺にも何かできるんじゃないかと思ってさ」


 ノアが優しく微笑みながら言った。


「ハヤトが魔法を使えるかどうか今のところはわからないけど、何かそういう力があればきっと見つけられるんじゃないかな」


 隼人はその言葉に少し考え込んだ。

 自分には特別な力があるが、それが魔法とどう関係しているのかは不明だった。


「自分の持ってる力が魔法と関係してるかはわからないけど……例えば魔力みたいなものを使って強化できるとか、そういうことがあるのかな」


 リーシャは少し首を傾げながら答えた。


「うーん、魔法って体の中にある『魔石』から魔力を取り出して使えるようになったり、モンスターや動物の体内から取れる『魔石』を加工して魔道具を作れば魔法を使えるようになるよ。まあ、魔道具も使い方を誰かに教えてもらえなければ使えないけどね」


 隼人はリーシャの言葉に耳を傾け、なるほど、と頷いた。

 魔石そのものは生まれ持っていなくても、魔石を利用すれば自分も魔法を使える可能性があるのかと考えた。


「そうか……それなら、魔石を手に入れて魔道具を作る方法を知れば、俺も魔法を使えるかもしれないな」


 ノアが横から補足した。


「でも、魔道具を作るには高額なお金も必要だし、使うにも魔導書とか、あるいは魔法使いに教えてもらわないと難しいかも。私たちは魔石を使った魔法のことはわかってないから、誰かに聞く必要があるね」


 隼人はその言葉に少し考え込んだが、今は急ぐべきではないと感じた。

 まずは今の力を使いこなしながら、この世界についてもっと学ぶことが重要だ。


「そうだな……まずは俺の今の力を使いこなすのが先か。でも、魔石や魔道具についてもいつかもっと知りたいな」


 隼人はそう言って歩き出した。魔法を使えるかどうかはまだわからないが、今は目の前の仕事に集中することが大事だ。

 三人の足取りは軽くなり、もうすぐ畑が見えてきた。

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機動兵器に乗りたいって言ったのに、なぜか俺が機動兵器に!? 星野 願 @hoshino_negai

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