女好きで天才の俺様、異世界を救う

青年男性向けのハッピーエンドなオリ小説

01章 01節 01話*地球の女神

 俺の名前は 大澤 裕太おおさわ ゆうた


 俺が天才なのは自覚している。


 俺は高校まで首席で卒業しその全てで生徒会長を歴任した。


 高校在学中には数学や物理学、化学、地学、生物学オリンピックを経験し、その後自営業から事業を始め株式会社を創業し代表取締役社長となった。


 大学は東京大学・文科二類・経済学部・経営学科に進学し、経営学を学ぶ傍ら会社を経営し、無事に卒業する頃には会社の事業の数もその規模も拡大に拡大を重ね世界的な財閥となっていた。


 ちなみにこの間 俺は美人を大勢手に入れており、高校では初日に英語の女教師、その翌日に体育の女教師、そしてその翌日に音楽の女教師、また生徒会を乗っ取った際に前女生徒会長、理数系オリンピックの際にファンの女子生徒、その他女子生徒や女性社員などを大勢愛人にしている。


 大学でも同大学生や同学部生、同学科生、そのOB、国内外の女性社員などを大勢愛人にしている。


 非常に順調だ。


 だがしかし俺は社会に出て早々燃え尽き症候群に直面していた。


 俺は主に都内で自宅として使っている洋館の執務室で一人 執務椅子に座りながら「刺激的で俺がワクワク出来て俺にしか出来ないような困難な何かや、俺が心の底からやりたいと思えるような事が他にないものだろうか?」と物思いに耽っていた。


 すると突然目の前の床に魔法陣のようなものとその上に神々しい光の柱が現れ、その光の柱はあっという間に消え去りその場には美しい女性だけが残った。


「私は地球の女神よ!大澤 裕太さん!!貴方にお願いしたい事があるの!!!」


*(ついに行動に移したわね……)*


 現れた女性は何と地球の女神様だった。


 勢いからして何とも元気そうな女神様だ。


 それにしても俺にお願いしたい事とは一体何だろうか?


 この女神様は既に俺の名前を知っているようだが。


 しかしこの女神様は「初めまして」を言わないんだなぁ。


 だが俺はその点をツッコんだりはしない。


 なぜなら女神様に人々の常識が通用するとは限らないし、女神様の機嫌を損ねたらきっとまずいからだ。


「あ……!初めまして……!!」


 お、おう……。


 まぁそもそもこの人物が本当に女神様とは限らないが、突然現れたのを鑑みれば超常的な存在なのは間違いないし、光に包まれていたのも鑑みれば聖なる存在なのもおそらく間違いない。


 以上からこの女性を女神様と見て差し支えないだろう。


 まぁこの女性は本当に女神様の気がする。


 それは別に何か根拠がある訳ではないし何となく「そんな気がする」というだけなのだがな。


「はい、こちらこそお初にお目に掛かります、地球の女神様。さようでございまして、私の名前は大澤 裕太と申します。――ところで恐縮でございますが 女神様、一先ずそちらの応接椅子にお座りください」


 とりあえず俺は女神様に俺の正面にある応接椅子に座るようにと促した。


 女神様を立たせたまま大事な話をする訳にはいかないからな。


「分かったわ!!」


 女神様はそう言って素直に椅子に座ってくれたので俺はこの女神様が話が通じるタイプの方だと分かり一安心した。


「でもどうして裕太さんは私が女神って分かっても驚かないの???」


 ん~、何でだろうな。


 俺は一応驚いてはいるんだがな。


 不思議と冷静だった。


「驚いてはおりますよ」


 こういうのはドッキリと似たようなものなのだろうと思う。


 つまりこの女神様は「本人登場ドッキリの仕掛人がドッキリのターゲットがあまり驚いてくれなくて不満」というような気持ちになっているのだろうと思った。


 そんな訳で一応驚いている事は伝えておいた。


 何分相手は女神様だからな。


 少しでもよいしょしておくのが吉だろう。


「ふ~ん、そう!――あとそんなに堅苦しい敬語は使わなくていいのよ???」


 ――女神様にそう言われたら人間の俺はそれに従うしかないのだが……。


 まぁそう言ってくれるのはありがたい。


 というのも俺は堅苦しい敬語を使うのも使われるのも苦手だからな。


 まぁメイドや社員など従者に使ってもらう分には全然構わないのだが。


「分かりました」


 俺は会話の流れでとりあえず女神様に承知したと返事した。


 まぁ「堅苦しい敬語は止めるが普通の敬語は続ける」という感じだな。


 「承知いたしました」が「分かりました」になる程度の事だ。


「それでいいのよ!!」


 そ、そうですか……。


「それでは女神様、お飲み物とお菓子は何にしますか?「炭酸飲料が飲みたい」や「洋菓子が食べたい」など要望は気軽に何でも言ってください」


 今俺の屋敷にはお客様に出せるのはおそらく紅茶と和菓子くらいのものだろう。


 というのも俺の机にお茶と和菓子が置いてあるからだ。


 要するに出された物でその日のストックは大体分かるのだ。


 まぁ和菓子は日持ちが良いのでよく常備している。


 それにここは日本だ。


 日本の社長や政治家には和のお出し物が受けるからな。


 まぁ女神様にも通用するかは分からないのだが。


 いずれにせよお出し物にしても食器にしても最高級だし女神様にお出ししても大丈夫だろう。


 しかし女神様が俺に会いに来るってヤバ過ぎるんだよなぁ……。


 女神様に粗相する訳にはいかないし、嫌われたらめちゃくちゃまずいし、それに紳士としても女神様の要望は俺は出来る限り何でも聞くつもりだ。


「私は今コーラとショートケーキが食べたい気分よ!!!」


 お……おっす……。


 もちろん女神様の要望は何でも聞くつもりだが、俺は心のどこかで目の前にあるお茶と茶菓子を見て「私にもそれと同じものをちょうだい!!」と言ってくれるのを期待していたのだがな……。


 この女神様の辞書に「遠慮」という言葉は載っていないようだ。


 てかその組み合わせは大丈夫なのか?


 俺はふと「バニラ味のコーラ」を思い出してしまった。


「分かりました。では今からメイドを呼びますのでメイドが部屋にいる間は秘密の事は口に出さないでくださいね」


 俺はメイドを呼ぼうと思ったのだがその前に注意事項をきちんと伝えておいた。


 秘密を聞かれたから生かしてはおけないうんたらかんたら、になったら困るしな。


「分かったわ!!」


 それにしてもこの女神様は元気だなぁ。


 そして俺はメイドを呼ぶベルを鳴らした。


 ちなみに鳴らしたのは一回だ。


 一回は通常の呼び出しでノックして入ってきてから俺の要望を聞いてくれるという感じで、――


 ――二回は訳ありの時の呼び出しでドア越しで要望を聞いてくれるという感じだ。


 そして三回は……言わずもがな、だ。


 するとすぐにメイドが来てくれた。


 「近くで待機していたのではないか?」と思うくらい早かった。


 ちなみに今日の当番のメイドは凛穂りほだ。


 凛穂は俺がメイド兼執事の求人を出した際に応募してくれた記念すべき第1号のメイドだ。


 ちなみに当家では使用人イコール執事でありメイドなのだ。


 この方程式は当家の使用人が女性しかいないからそう成り立っている。


 そして厳密に言えば第一号は優美華なのでメイド第一号は優美華であり、求人からの第一号(全体の順番で言えば第二号)が凛穂だ。


 もっと言うと俺は凛穂との肉体関係だけは無い。


 というのも本人は俺の事を好きなようなのだが、次の段階に進めずその訳は一切教えてくれない。


 「明日世界が終わるとしても?」と尋ねてみたが、そうなる事は無いしそれでもダメなのだそうだ。


 そんな訳で俺は里穂は休日や空いている時間などに教会のシスターでもやっていて、神様に純潔も誓っていて――


 ――ん?それはおかしいな。


 今俺の目の前にいる女神様はどう見ても女性なのだが……。


 いずれにせよ凛穂の精神的な本業はそっちなのではないかと俺は睨んでいる。


「裕太様、凛穂にございます――失礼いたします。――ご用件は何でしょうか?」


 凛穂はノックすると部屋に入ってきて要件を尋ねてきた。


 やはり凛穂は名前の通りいつも凛々しくて美しいんだよなぁ。


 しかしこの女神様に注意しておいたとはいえ凛穂がいる間にうっかりと口を滑らせてしまう可能性はもちろんあるし、それに凛穂にこの女神様のとんでもない秘密だとかを聞かれてしまって例のうんたらかんたらになってしまう訳にもいかないので俺としては注文をちゃっちゃと済ませたい。


 ちなみに例のうんたらかんたらになったら負けると分かっていても俺はこの女神と戦うつもりだ。


 俺は従業員のために断固として戦うし見捨てるような真似は絶対にしない。


「こちらの方は俺のお客様だから丁重にもてなしてくれ。それとコーラとショートケーキを2人分頼む」


 てかそもそも見知らぬ人物が俺の執務室まで来るというのは一大事だ。


 考えてもみろ。


 これは屋敷への侵入を許したばかりか主の部屋まで侵入され接触を許したという事だからな。


 「もし侵入者が暗殺者や不審者だったらどうするのか?」とメイド達が慌ててしまうのを防ぐため、女神様が俺が意図していたかしていなかったかはともかく悪い客ではないのだと理解してもらうために「俺のお客様だから丁重にもてなしてくれ」と釘を刺しておいたのだ。


 警察でも警備チームでも呼ばれたらシャレにならないからな。


 それに凛穂に申し訳ない。


 これは外出必須の注文だ。


「承知いたしました。頃合いを見てすぐにお持ちします。――それでは他にございますか?」


 頃合いを見てすぐに!?!?!?


 ――いや、それだけだ。


「頼んだ。――それに無理に急がなくていいんだからな。通常の速度でいいんだぞ」


 凛穂が急ごうと無理してしまうかもしれないのでその事も釘を刺しておいた。


「承知いたしました。――それでは失礼いたします」


 凛穂はそう言ってお辞儀すると退室していった。


 ん~、凛穂は見知らぬ来客に全く慌てていなかった。


 どうしてだ?顔見知りだった訳でもないだろうしな。


 この女神様は俺の部屋に来る前に既に凛穂にアポを取っていたという事か?


 ――それにしては来客の報せは一切無かったが。


 当家では来客がある際には必ず事前に予定を話してくれるのだ。


 まぁこの女神様が突然やってきて凛穂達が予定を話してくれる余裕すら無かった説はあるのだが。


 いずれにせよ凛穂にはこの女神様が「俺の秘密の女」などと勘違いしないでほしいものだ。


 メイド達の間で情報が共有され噂でもされたら堪らないからな。


「それでは女神様、お出し物の手配が済んだところで恐れ入りますが、早速本題に入らせてください。――女神様が私にお願いしたい事とは一体何ですか?」


 ――やっと本題に入っていけそうだ。


 そんな訳で俺は凄くホッとしている。


 というのも女神様が俺にお願いしたい事があるなんてよっぽどの事だろうしな。


 こういう時は単刀直入に重要性や緊急性が高そうな案件や用事からこなしていくのが鉄則だ。


「私からはあっちの世界のルールで詳しい事は話せないんだけどね、私の友達の、女神の世界がロクでもないっていうか、とにかく大変なの!!剣と魔法の世界よ!!私にできる事なら私が嫌な事でなければ何でもするから、裕太さんに私の友達の世界を救ってほしいのよ!!!」


 俺は異世界もののアニメや漫画、ライトノベルは嗜んでいるので何となくの事情は分かった。


 この女神様は俺に勇者として友達の女神様の世界に赴き、救ってくれとお願いしてきているのだろう、と。


「女神様のお願いのあらましは分かりました。私に勇者として女神様のお友達の異世界を救ってほしいという事ですよね」


 俺は何となく女神様がこの話を俺に持ってきた時点で察している。


 そのお友達の異世界とやらは、俺でないと救えないくらい大変な状態になってしまっているのだろう、と。


「さすが裕太さん!!話が早いわね!!その通りよ!!でも裕太さんをあっちの世界の勇者にするかを決めるのは私の友達なの。だってそこは友達の世界だもの。裕太さんが私とも友達とも契約してくれたら、裕太さんは私達両方の勇者って事になるわね!!!」


 やっぱり女神様のお願いはそんな感じだったか。


 ん~、勇者になって異世界を救う、かぁ。


 興味はあるんだけどなぁ。


 俺には慈善の精神があるし女神様を助けたいのは山々なのだが、自分を犠牲にし過ぎてもいいとは思えないし、――


 ――それに俺はまだ一流の財閥と比べれば全然少ないがグループ全体で従業員3万人を擁する大澤財閥を抱えており、これまでに築き上げた人間関係なども放り出して一人で異世界に、それも片道切符で行ってしまう訳にはいかないのだ。


 それにこの段階では引き受けるか決断するための材料が少な過ぎるので、俺が異世界へ行くのを決断するためにも今の内に知られる限りの情報は知っておきたいものだ。


「決断の参考までに、私がそのお願いを引き受けた場合、今後私がどうなるのかや、異世界転生なのか召喚なのか、その特典について、私がその異世界を救ったら元の世界に帰していただけるのか、もし私が失敗したらどうなるのか、私がその異世界に持ち込める物、こことの時間差についてなど、私に教えられる限りの事を教えてください」


 これくらい把握しておけば十分 異世界へ行くかの決断が出来るはずだ。


「裕太さんがもし私のお願いを引き受けてくれたら、私が裕太さんを友達の家にテレポートしてその友達に会わせてあげるわ!そこで私の友達と作戦会議ね!――それとあっちの世界へは召喚。あとチートなスキルもステータスも、加護も持ち物も特典も一切無いわ」


「ただし異世界に召喚された時にあっちの世界の神様が一か月分くらいのお金の入った巾着をくれるわ!」


「それにもし裕太さんが異世界を救ってくれたら、その時は私の世界に帰してあげるわよ!もし裕太さんが失敗しても、私の世界に帰してあげるわ!ただしその時はあっちの世界に関する記憶を消させてもらうし、手に入れた物も持って帰れないし、獲得したスキルなんかも封印させてもらうけどね!!」


「それと裕太さんがあっちの世界に持ち込める物は、貴重品を除く着ているものだけよ!!時間差はこっちの一秒があっちの一秒って感じね!!神々のいる亜空間についてはその限りではないわ!!」


「それと言っておくけどね、これまでに私の世界から勇者を大勢その異世界に送り込んできたの。そしてその全てが失敗してしまったわ……。私の友達の世界は今それくらい難しくて大変な事になっているのよ!!それも踏まえて決めて頂戴ね!!!」


「もちろん裕太さんの気持ちは尊重するわ!でも私達にはもう本当に後がないの……。だから最後まで諦めずに言わせてもらうわ!私の世界にはもう裕太さんしかあっちの世界を救えそうな人がいないのよ!!だからお願い!!この通り!!!」


 女神様がお願いポーズで必死にそうお願いしてきた。


 女神様の事情は分かったが、要するに俺が女神様の勇者になって着の身着のままで大変な事になっている異世界に行って、所持金は金一封のみでそれ以外は能力補正も特典も一切無いままで何とかしてくれ、という事なのだろう。


 しかしそれはさすがに難易度がハード過ぎないか?


 でもやれない訳でもないと思うし、めちゃくちゃ興味はあるんだよなぁ。


 まぁ今ちょうど暇をしているところだし、元の世界に帰れるというのなら、条件次第だが女神様からのお願いを引き受けても構わないか。


「女神様の事情と、異世界召喚に関する事は分かりました。私の会社の年2回の株主総会の定例会への私本人による出席と、この世界での大事な場面や緊急事態での帰還と、定期的に女神様との念話あるいは、またこうしてお会いしてお話しする事ができるようにしてくれるのであれば、女神様のそのお願いを引き受けさせてください」


 俺は自分の会社を守り続けなければならないため、株主総会への出席は譲れないし、大事な場面での帰還も、これまでの人間関係を大切にしたいため譲れないし、女神様との関係だって、俺は友達や良縁を大切にしたいと考えているのでそれも譲れない。


「分かったわ。裕太さんを何度もこの世界に戻してあげるのには多少力を使うけど、私も背に腹は代えられないから、裕太さんの条件を呑むわ!もちろん大事な場面になったり、大変な事になったら友達の女神伝いに教えてあげるし、この世界に戻してあげるわよ!」


 この元気な女神様が「分かったわ!」と元気に言わなかったあたり、俺は女神様に結構しんど目の条件を提示してしまったのかもしれない。


 もしそうだったのなら申し訳ない限りだ。


(それにしてもずいぶんと控え目な要求ね。これまでの経験上お金持ちや総理大臣にしてほしいだとか、私の体や異能が欲しいだとか要求されるかと思ったけど、こんな大変なお願いなのに、大きな見返りも求めず数回の帰還と私とのお話が条件だなんてね、ふふ♡)


(ほんと裕太さんって優しいのね♡それに私とお話ししたいだなんて、ふふ♡私と話して楽しいのかしら?♡面白い人♡)


 女神様が俺からの条件を呑んでくれて良かった。


「はい。そのような状況になったらそのようにお願いします。それでは女神様、契約は成立ですね。女神様のお友達の異世界を救うためこの大澤 裕太、頑張らせていただきますので、今後ともよろしくお願いします」


 こういうとき真面目な人ほど「全身全霊をもって」と言いたくなりがちだと思うが俺は付け足さなかった。


 俺は別に体も魂も捧げるつもりはないからな。


 異世界を救うため自分なりに努力するつもりだが、自分を犠牲にするつもりはない。


「ええ、契約は成立よ!これからもよろしく頼むわね!裕太さん!!」


 女神様はとても嬉しそうにしている。


 そして契約を終えたこのタイミングでメイドの凛穂がお出し物をワゴンで運んできた。


「裕太様、お待たせいたしました」


 ノックされ扉が開いた。


 しかしタイミングの良い事だな。


「やっと来たわね!」


 まぁいずれにせよ女神様が上機嫌になってくれたのは良い事だ。


「早かったね」


 俺は凛穂に素直に感想を述べた。


 これは別に皮肉ではないしむしろ褒め言葉だ。


「はい」


 てか凛穂は本当に外出していたのか???


 玄関や車の音はしていなかったが……まぁいいか。


「こちらがコーラとショートケーキになります。――コーラはこちらの氷を入れておきましたコップに注いでお飲みください。――またショートケーキは洋菓子の名店よりご用意いたしました」


 凛穂がケーキが乗っているお皿を配膳し、傍に氷が入っているコップを置くとそこにコーラを注いでくれた。


「それではまたご用件がございましたらベルにてお呼び出しください」


 凛穂はそう言ってお辞儀した。


「ああ、分かった。――ありがとうな」


 俺がそう言うと凛穂はお辞儀し退室していった。


「ねぇ、裕太さん!!私もう食べてもいいのかしら???」


 もちろん構わないが……。


 てかその組み合わせは本当に大丈夫なのか……??


「大丈夫よ!!!」


 そ、そうですか……。


 って、え!?!?!?!?


「色々大丈夫よ!!!」


 えええーーー!?!?!?!?


 この女神様は非常に満面の笑みでそう言ってきた。


 ……ま、まぁいいか……。


 かくして俺は女神様の勇者となり、コーラとショートケーキが届いた俺と女神様は談笑しながら頂き仲良くなった。



 そして俺と女神様は俺の誘いでお出掛けデートをする事となった。


「裕太さん!私の事はアンと呼んで!裕太さんにならアンと呼ばれてもいいわ!私もこれからは裕太さんの事を『裕太』って呼んであげるわね!!」


 かくして俺と女神アン様の会話では俺は女神様の事を「アン様」と呼び女神様も俺の事を「裕太」と呼んでくれる事となった。


「裕太さん!敬語は外してくれて構わないわ!!」


 かくして俺とアンの会話ではお互いに敬語を使わない事となった。


「私は裕太の一人称は『僕』よりも『俺』の方がタイプかもしれないわね!!」


 かくして俺とアンの会話では俺の一人称は「俺」となった。


「ほら私って明るいから、同じくらい俺感でグイグイきてほしいのかも!!」


 かくして俺はアンにアンの明るさと同じくらいの俺感でグイグイいくように振る舞う事となった。



 そして俺とアンのお出掛けデートもクライマックスに差し掛かり、俺はアンに名前の「アン」の由来を尋ねてみた。


「『アン』は昔仲良くなった人が名付けてくれたの。でも今からもう4300年以上も前の話よ……。だから私にその名前を付けてくれた人はもういないわ……。その文明も国も、文化も言語すらも時の経過と共に無くなってしまったわ……」


「裕太は世界史に詳しいだろうから知っているでしょう?メソポタミア文明も、アッカド人もシュメール人も、彼らの文化や言語ももう無くなってしまったの……。あの人も魂が何度も転生を繰り返して、もう私の事はとっくに忘れているわ……」


 アンはとても悲しそうに話している。


 今思えばアンが最初に自分の名前を名乗らなかったのは知り合って間もない人に「アン」と呼ばれたくなかっただけでなく、その名前の由来を尋ねられればその過去の事を話さなければならないかもしれない煩わしさがあるだけでなく、何よりもその思い出の人の事を思い出したくなかったのだろうと思った。


「アン、俺は例え死んだとしても、そして魂がどれだけ転生したとしても、絶対にアンの事は忘れない」


 俺はアンの事を忘れる気は一切ない。


(私の事を忘れないって言ってくれるのは嬉しいけど……。説得力がないわよ……)


「死んだ後も私の事を覚えてるなんて絶対無理よ……。魂に残るのは生物学的な情報だけで、記憶は消えてしまうの……。それがこの世界のルールなのよ……」


 人間の体というのは実に興味深いもので、記憶は短期記憶は海馬に、長期記憶は大脳皮質に蓄積されているはずなのだが、臓器提供を受けた人が前の持ち主の影響を受けたりするという事があるかもしれないように、臓器などにも記憶が一部蓄積されていたりするかもしれないのだ。


 この世界に神様が存在するのだから大切な記憶が魂に刻まれている奇跡を俺は信じたい。


「アン、俺はお前の事が好きだ。俺の恋人になってほしい」


 俺はアンに思いを告げた。


「私も好きよ!♡裕太!♡ええ、喜んで!!♡」


 かくして俺とアンは恋人関係となった。


「アンを抱きしめてもいいか?」


 俺はアンを抱きしめたい。


「ええ♡いいわよ!♡」


 アンが俺に抱きしめる許可をくれたので、俺はアンを甘く優しく抱きしめる。


「アン、俺は漢気を出そうとすると、どうやら一人称も口調も『俺様』になってしまうようなんだ。――そんな訳で、俺がこれから言う事の一人称を俺様にしてもいいか?」


 俺はどうしても男気を出そうとすると、どういう訳か「俺様」が出てきてしまうのだ。


 という事は俺の前世が魔王とかそんなのだったりしてな。


 いずれにせよ俺の一人称や口調がいきなり「俺様」に変わったらアンを驚かせてしまうと思い、アンに俺様モードを発動する許可を取ろうとした。


「ふふ♡いいわよ♡でも俺様って、まぁそうよね。こんなに若くして財閥を築き上げて、お屋敷に住んでいる、野心モリモリの天才様だもんね♡あ、でも今は燃え尽き症候群なんだっけ?」


 アンは俺の脳内の思考を覗いていたのか……。


 ならこれはお仕置き確定だな。


 俺にとって思考を覗かれるのは初めての経験なのだが、俺は自分の思考や心の内を覗かれるのが嫌いなようだ。


 いずれにせよアンが俺に俺様になる許可をくれたので、俺は心置きなく俺様モードを発動する。


「アン、俺様が必ずお前のためにお前の友達の異世界を救ってみせるし、お前を幸せにすると誓う。アン、全部俺様に任せてくれ。それに死んだ後だって、俺様は絶対にお前の事を忘れない!愛しているぞ アン!!」


 アンの友達の世界を救いたいという気持ちにもアンを幸せにしたいという気持ちにも、死後もアンの事を忘れないという強い決意にも偽りはない。


(私の事を忘れないって言ってくれるのは本当に嬉しいの……。でも本当に説得力がないのよ……)


「ええ♡絶対に救って私も幸せにしてね♡――裕太に全部任せるわ♡それにそうね、いつまでも私の事を忘れないでね♡愛しているわ、裕太♡それにしても俺様な裕太も悪くないわね♡」


 アンは実に良い女だ。


「アン、キスしてもいいか?」


 俺とアンは見つめ合い、俺はアンにキスする許可を取ろうとした。


「ふふ♡ええ♡もちろんいいわよ!♡いつでもいいわ♡私にいっぱいチューしてね!♡――それにチューする許可なんていちいち私に取らなくてもいいのよ?♡」


 アンが俺にキスする許可をくれたので、俺はアンの口に甘く優しくキスした。


 しかし確認は取らなくてもいい、かぁ。


 ――それは難しいなぁ。


 まだ俺にはアンへの遠慮というものがある。


 それにこの社会では不同意でそういう事をすると一発でアウトだしな。


 それに俺はアンと知り合ったばかりだ。


 まぁこれからお互いにとって理想の関係になれるように俺は頑張っていくだけなのだがな。


(愛しているわ 裕太♡それにしてもタダ同然でこんな大きな使命を引き受けてくれるなんて♡やっぱり貴方は変わっていないわね♡でもあれからずいぶんと積極的で慎重になってるけど♡優しいのは相変わらずね♡)


 かくして俺とアンは熱く長くキスを交わし夜も更けていった。

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