セル・カル・マイン
蒼開襟
第1話
蝶々の指輪、金色の透かし彫りがされた綺麗な指輪。
月夜の晩に貴方がくれたもの。
恋人でも伴侶でもない私に貴方がくれたもの。
少しだけ大きくて薬指ではくるくる回ってしまうから、じゃあと中指に嵌
めてくれた。
風が冷たい月夜の晩、愛の告白は耳に優しかった。
ねえどうして私を選んでくれたの?
貴方は決してその答えをくれないけど、私は月夜の晩にしか現れないこと
を知っている。それをどうして?と聞きもしないから私も黙っておくこと
にした。
部屋の中ではセレナーデが聴こえてる。恋人たちのための音楽は部屋の中
で踊る彼らの鼓動を速くしてる。
月に雲が少しかかって月の光りが遮られた時、私の肌があわ立って急いで
闇の中に隠れた。もう少しで唇が触れられたのに。
貴方が話してくれたお姫様みたいに私は帰らなくちゃ。そう言うと貴方は
仕方ないと頷いた。
さようなら、そう言って貴方は部屋に戻っていく。私は闇の中に融けてい
く。
さようなら、次の月夜に会いましょう。聴こえるはずのない言葉を残して
私は闇の深く深くに沈み目を閉じる。薄目で指に光る蝶々を見て微笑みを
浮かべては眠りにつく。
セル・カル・マイン 蒼開襟 @aoisyatuD
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