(2)
「これより、DV王国騎士団入団試験を開始する!」
「実況もとい審査は私DV王国が誇るイケメン団長カーニスと暴力マジメガネこと副団長タダシ、あとついでに国王クズマリスがお送りいたしまーす」
「よろしく〜」
「国王様が自ら!?」
「聞いたことないぞ……」
「うっ……緊張で吐きそう……」
……確かに国王が自ら審査ってわけわからんよな。暇なのか?
「カーニス君?今失礼なこと考えてないよなぁ?」
「ソンナワケナイジャナイデスカハハハ」
まあ審査なんて実際そんな大したことしないからね。
今いるバルコニーからタダシ達がいる訓練場をボケーっと見てるだけでいいんだし、誰にでもできんだろ。
「やっぱり失礼なこと考えてるよなぁ?」
「ソンナマサカハハハ」
そういえば、あの女の子はどこだ?ちゃんと来てるといんだけど……。
……おっ!あの子か!
うん、顔は悪くないな。
勝気な吊り目に血色のいい肌。高い位置で二つに結われた赤毛が彼女の負けん気を表しているようだ。同性にもモテそうだな。
ただ一つ、非常に、ひじょーーーに残念なのは――胸がない。
というか肉付きが良くない。
流石に騎士団に志願しているだけあって華奢ではないのだが……全体的にスリムでスレンダーで貧相だ。
はっきり言って『エロス』が足りない。
オレの好みじゃないな。残念。『不合格』っと。
「カーニス君?まだ試験は始まってないぞ〜?お前を不合格にしとくか?」
「オレが不合格だとどうなるんです?」
「今使ってる団長専用部屋が馬小屋なって、隠してあるエロ本が国中に晒されることになる」
「今すぐ辞めるんで勘弁してくださいっ!?」
てかなんでオレの秘蔵コレクションのこと知ってんだよ!?おかしいだろ!?
「おっ、あれが例の。……ははぁ、なぁるほど。うん、悪くないなぁ。あの子は良いおm……良い部下になりそうじゃ」
「今おもちゃって」
「言ってないな?」←秘蔵コレクションを見せつける。
「言ってないですね許してくださいここで出すな!」
「出すな?」
「出さないでいただけると幸いです!!」
このクズ国王!いつか絶対痛い目見せてやる……!
ざわざわ、ざわざわ……。
にしても今回なんか騒がしいな。心なしか注目されてる気もするし……。
――はっ!まさかオレのあまりのイケメンさに驚愕を抑えられないとか?それかオレの溢れ出るオーラに当てられて?
っかー罪な男だねぇオレも!
ただごめんよ未来の新米騎士たち。オレが応えるのはセクシーな美女の頼みだけだから……。
「なぁ、なんであの人顔が凹んでるんだ?」
「凹んでるっていうかめり込んでるよな?」
「どうなってんのあれ?集中線?」
「静かにしろ!国王様の御前だぞ!それとあの集中線は昨日私がやったものだ。この馬鹿団長のようになりたくなかったら速やかに口を閉ざすことだな」
ほんとなんでこいつらがこの騎士団に入りたいのかわからない。
「なるほど。団長相手にも臆することなく接することができるのか」
「この騎士団は下の人もきちんと意見が言えるってのは本当だったんだな」
「ここならキャリアアップも夢じゃないかも……!」
えっそういう解釈になるの!?パワハラにはノータッチ!?
「それでは国王様、試験前に一言お願いします」
「おー任せときぃ」
国王が拡声器を手に取り、バルコニーの端に立つ。
流石に国王自らが動いたからか、さっきまでの喧騒はすぐに止んだ。
それと同時に試験開始が近づいた事を察知した受験者達に緊張感が走る。
『諸君、よぉ志願してくれたなぁ。うちは国民ファーストだから給金は少ない、じゃけぇその分環境は整備してる。己を存分に鍛え上げられる訓練、やり甲斐のある任務、仲間たちと存分に語り合える環境作りなどメリットは多い』
なるほど。分量を間違えているとしか思えない訓練、終わらない任務、罵詈雑言が飛び交う環境をよくもまあこんな上手く言い換えられるものだ。
『確かに辛いことはたくさんある。けどその辛い仕事を請け負ってくれる人たちのおかげで、民は安心して日々生活を送ることができるんじゃ。そんな縁の下の力持ちに自らなりたいと望む君達は――もう既に立派な騎士であると俺は思う。未来の騎士達よ!今日は思う存分力を発揮してほしい。そして、君たちと共にこの国を良くしていけることを心から望んでいる!気張りやぁ!』
歓声が湧き上がる。
王の激励に感化され声を上げてるやつ、天職を見つけたとより一層闘志を燃やすやつ、中には感極まって泣き出すやつもいた。いやなんでなん。
てか国一番の詐欺師が国王て。もう終わりだよ。
一人静かに絶望している中、大盛り上がりで始まった入団試験は、その後何事もなく進行していった。
*
やっと見つけた。
あの男が を……。
あんな善人面しているけど、もう裏は取れている。
あの男は生粋の悪であると。
――許さない。
私の人生を滅茶苦茶にしたあんたを、絶対に許さない。
あんたの化けの皮、必ず剥ぎ取ってやる。
覚悟しろ――国王クズマリス。
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