1話だから印象つけないといけないよねエクスプロージョンッ!!
(1)
デウスヴェクシルム王国、通称「DV王国」。
国王クズマリスが統治するこの国は、世界でも有数の良国と言われている。
豊かな土地、敵国の侵入を阻む立地の良さ、そして民のことを第一に考え良き政策を行う国王。
最高の国である条件が全て揃った国だと言われている。
――表向きは。
確かに土地は恵まれている。
特にこの国で取れる野菜は大きく瑞々しく育ち、どれも美味い。周辺の山々は緑が生い茂り、それに付随して動物も多く生息しているので食うものには困らない。
立地も申し分ない。豊かな土地に恵まれた山城は、弱点である物資の補給を自給自足で補うことに成功している。
そして山肌に造られた天然の要塞は防御面において強い軍事的側面をもち、日々敵国の侵略を防いでいる。
ここまではどこにも文句のつけようがない。
だが――『国王クズマリス』。奴は想像を絶するクズ野郎である。
これはDV王国騎士団長のこのオレ、カーニスが命をかけて断言する!
奴はオレたち騎士団に数々の非道な仕打ちを行っている!
ある時はミスを犯した者を火炙りにし、またある時は無抵抗な相手を逃した者に水責めを執行する。
普段国民には見せないようなドス黒い笑みを携え、日々の鬱憤を晴らすようにオレたち騎士団を扱き使い、馬車馬のように働かせているのだ!
また奴は、夜な夜な寝室で女性を侍らせてあんなことやこんなことしている!
これは相手の女性の基本的人権を無視した、極めて非人道的な行為である!
このことは生涯、誰も知ることはないであろう。
それほどまでにクズマリスの情報操作は徹底されている。
もしかしたら、まだ我々が知らない悪事を裏で行なっているかもしれない。
だが――このままではいけないと思う。
かつて後ろめたいことがある国が栄えた試しはあっただろうか?いや無い!
悪が栄えることはない!いつかは滅びるのがオチだ!
だからこそ、オレは悪を終焉へと導くための第一歩を踏み出そうと思いこの手記を残すことにした。
国王クズマリスが行った数々の非道な行いをここに記しておく。
この手記を手に取ったそこの君!オレと共に、この国を正すための勇気ある一歩を踏みだ……』
「何しているこの馬鹿団長」
「頭がッ!?」
成人男性程の丈がある大剣が、オレの後頭部にクリティカルヒットする。
その衝撃は凄まじく、たまらず地面を転げ回った。
「鞘が当たっただけだろう。何をそんなに騒いでいる」
「んな馬鹿デカい大剣、鞘付きでも十分凶器だわ!何すんだよタダシ!」
オレの後頭部に一撃かましてきたメガネの男――タダシは悪びれもせず反論してきた。
「こんな他の騎士たちも集まる食堂で堂々と国家転覆を画策している奴がいたら殴りもするだろう。副団長として当然の事をしたまでだ」
「国家転覆じゃない!オレはただ、あのクソ国王を消すために行動しているだけだ!」
「それが国家転覆以外のなんだというのだ!しかも貴様、適当に有る事無い事書きおって!なんだこれは!国王様が『夜な夜な寝室で女性を侍らせてあんなことやこんなことしている』!?そんなことするはずがないだろう!」
「……確かに見たことはないさ。だけど!国王なんてのはみんな、自室に美女を集めてハーレムするものだろ!」
「お前の汚らわしい妄想で国王様を語るなド淫乱!」
汚らわしいだなんて……!これは全男子が夢見るシチュエーションだろ!
その言葉はこの世の全ての男を敵に回すぞ。
「あれ?その話、この前団長が自室に女連れ込もうとして国王様に扱かれたってやつじゃないですか?」
「しかもその女、他国のスパイだったって話でしたよね?」
「――なんだその話は。聞いていないぞ……ッ」
おい余計なことを話すな騎士A・騎士B!?
「ち、違う違う!あれは、その、あの娘が城を案内してくれたらイイコトしてくれるって言うから……つい、ね?」
「つい、じゃないわ大馬鹿者がぁぁぁ!!」
「待って待ってこれ以上は頭の形変わっちゃうってぶがっ!?」
二度目の大剣が頭頂部に炸裂した。
「まったく、これでは下の者達に示しがつかんではないか!明日は入団試験もあるのだぞ」
「……別に入団前の人たちになら示しつかなくても良くない?」
「また打たれたいのか大馬鹿団長?」
「勘弁してください次喰らったらオレの頭ぺちゃんこになっちゃうから!?」
『馬鹿団長』から『大馬鹿団長』にグレードアップした件については一旦置いといて、オレというイケメンの損失は世界の損失だ。それはだけは避けなければ。
叩き潰される前に話題を変えよう。
「明日の入団試験って何時からだっけ?」
「やはりもう一撃入れておくか」
「ちょっと聞いただけじゃん!?ド忘れしただけじゃん!?ヤメテ振りかぶらないで!?」
「試験官ならこれくらい覚えておけと言っているのだこの鶏頭!そこに直れ!」
くそっ、この話題はダメだ!別の話題は……!
「そ、そういえば!受験者名簿に女の子がいたよな!いやぁ珍しいこともあったもんだ!?」
咄嗟に覚えていたことを口にする。
さりげなく資料を覚えているアピールもできて一石二鳥なはず……!
「むっ。確かにそうだな。我らDV王国騎士団はこれまで男しか入団してこなかったからな……。女性用更衣室などの配備が必要になるか?」
「入団できたらの話だけどな」
なんとか悲劇は免れたようだ。これで一安心。
にしてもこんな騎士団よく入りたいなんてと思うわ。
まっ、なんでもいいか。
可愛い子だといいなぁ。ブスだったら問答無用で不合格にしよ。
「……くれぐれも顔の好みで合否を決めるなよ?」
「うっそなんでわかったの!?こわ……」
三度目の大剣が以下略。
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