第7話 ショッピングセンター探索

               ショッピングセンター探索


(各々の家から大体中間付近にあるショッピングセンターに訪れた七海と青戸と細野と戸崎)


               七海(自動ドアとぶつかりそうになりながらも中に入る)


 自動ドアよりも速い女七海、侵入成功しました! このショッピングセンターはまるで止まっているようです!


               戸崎(その後をゆっくり歩きながら入って)


 ここは動く城ではないからね~。いや~、涼しいね~。


               青戸(暑さでへとへとな様子で)


 動いて玄関前まで来てほしかった……。


               細野(青戸を扇子で扇ぎながら)


 青戸くん大丈夫? 一回どこかで休憩する?


(細野に頭を下げる青戸)


               七海


それならいい場所があるわ。ついてきて。


(家具屋の店の前で止まる一行)


 ここなら休みながら商品の良し悪しを確かめることができるわ。というより、疲れている時の方がよりありがたみを実感できるというものよ。


               青戸(ほんの少しだけ回復した様子)


 俺を実験台にするつもりだな、いいだろう。


(中に入り、リビングのコーナーを見て回る)


               七海(タオルを泥棒のように巻いて)


 やっぱり家具はシンプルなのがいいわね。


               戸崎


 シンプルに怪しい人がいるけど。


               青戸(七海と同じようにタオルを巻いて椅子に座る)


 ひと昔前のネット社会なら家に侵入した泥棒にされてただろうな。


               細野


 青戸くん大丈夫? 頭までおかしくなっちゃったんじゃ。

(鞄の中から塩分をチャージできる飴を取り出して)これ、いる?


(頭を下げながら飴を受け取る青戸)


               七海(タオルをマフラーのように巻く)


 私もきなこ棒ならあるけれど……。


               青戸(飴の袋を開けながら)


 殺人未遂の容疑で逮捕するぞ。


               戸崎


 凶器はきなこ棒だね。


(青戸と細野はそのままリビングのコーナーに残り、戸崎と七海は勉強机のコーナーへ)


               七海(心臓の辺りを気にして歩きながら)


『細野ちゃん、青戸くんにべったりね。やっぱりあの時のはそういうことなんじゃ』



               戸崎(一瞬不安そうな顔をする)


 ……。


               七海(勉強机を眺めながら)


 子供に知識を得る機会を与える天使か、それとも勉学の象徴となり、そこに座っていない時は勉強をしなくてもいいという、勉学から逃げる機会を与える悪魔か、一体どちらなのだろうか……。

(近くの青年向け勉強机を見ながら眉をひそめる戸崎を見て)『あの机と結びつく嫌な記憶でもあるのかしら』

そろそろ戻りましょうか。


               戸崎(我に返ったように)


 あっ、そうだね。……そうしよう。


(青戸と細野のいた場所に戻ってきた七海と戸崎)


               七海(辺りをキョロキョロしながら)


あれ? 二人ともいないわね。


               戸崎


 もう店を出たんじゃない?


               七海


 私たちも出ましょうか。(「心の穴」を気にしながら戻る)


(店のすぐ近くにあるベンチに座る青戸と細野を見つけ、そこまで歩く七海と戸崎)


               青戸(かなり回復した様子)


 休憩のためだけに使うのも悪いと思ってな。


               七海(感心したように)


『誠実な子ね』


               細野 戸崎


『……』


(服屋に入った一行)


               七海(服を見ながら)


 私はいつもGYUNIQLOでしか買わないから、こういうお洒落な店は緊張するわね。私は招かれざる客になってないかしら。


               細野(服を自分に合わせたりしながら)


 そんなことないよ~。ただあんまり他の店の名前は出さない方がいいかも。


               青戸(ただ歩きながら)


 呪いでマネキンにされるな。


               七海


 あんなにスタイル良くなれるの?!


               戸崎


 その前に人じゃなくなってるけどね。


(またしても七海と戸崎、青戸と細野に分かれる)


                七海


 戸崎くんはいつもどうやって服を選んでいるの?


                戸崎


 僕の母親は昔モデルをやっていたんだ。だからいつも母親に決めてもらう、っていうか決められてるんだ。


               七海


 あんまり気に入っていないの?


               戸崎


 いや、そんなことはないよ。僕が選ぶより断然お洒落になるからね。ただ、外側が良くなると、中身はそれに伴っているのかと不安にはなるね。


               七海


 悪い意味でのギャップを与えてしまうんじゃないか、ってことかしら?


               戸崎


 まあそういうことだね。失望させてしまうのが怖いというか。


               七海


 その人の中の真にその人である部分を見ず、ギャップなどというひと時の波の揺らめきでしかないものに惑わされてしまう人間とは、どのみちいい人間関係は築けないわよ。


               戸崎(見えない衝撃波を受けたのを隠すように)


 確かにそうだね。君は大人だな。

『君のそのギャップはあまりにも強力だよ』


(細野が服を選んでいるのをただぼーっとついていく青戸)


               細野(自分が持っていた服を戻して)


 そうだ! 青戸くんに似合いそうな服を一緒に見ようよ!


               青戸


 いいのか? せっかく自分の服を選んでいたのに。


               細野(青戸の腕を掴んで)


 じゃああっち行こう?


(男性用の服がこかれたエリアに来た青戸と細野)


(青戸に服を当てて確認しながら)


 これとか似合うんじゃない? あとボトムスはこれ。


               青戸(興味深そうに)


 これにそれを合わせるのか。なるほど……。君はセンスがあるな。


               細野(服で少し赤くなった顔を隠しながら)


 ありがとう……。


               青戸


 どうやって身に付けたんだ?


               細野


 う~ん。服装が人に見られる一番外側だからかな~。


                青戸


 それだけでそこまでのセンスを身に付けられるものなのか? 


               細野(少し考えてから)


 見た目が良くないと、相手にしてもらえないからね。まあいくら外側を良くしても、中身なんて誰も見たりしないんだけど……。


               青戸


 そうか……。

だが、人の中にも人はいるものだ。いつかきっと報われるさ。


               細野(一瞬だけ目に写る光が歪む)


 そうだね……。ありがとう。


(店の外で合流する)


               七海


 あら、何か買ったの?


               青戸


 ああ。努力の賜物だ。


               七海(大体何があったか悟る)


 なるほど。大事にするのですよ。


               戸崎


 みんな、空腹加減はどう?


               細野


 私は結構お腹空いたかも!


               七海


 私もそろそろ全身から汗じゃなくてよだれが分泌され始める頃よ。


               青戸


 同感だ。俺の場合はよだれじゃなくて胃酸だがな。早くフードコートへ行こう。


               戸崎


 君たちは病院に行った方がいいんじゃないか?


(フードコートで各々食べたいものを買って席に着く)


               七海


 みんなは何を注文したの?


               細野(呼び出し用の機械を見せながら)


 私は石焼ビビンバ!


               戸崎(番号が書かれたレシートを見せながら)


 僕はハンバーガーのセットだね。


               青戸(呼び出し用の機械を机に置いて)


 俺はからあげ定食だ。


               七海


 みんならしいものを買ってきたわね。


               戸崎


 君は何を買ってきたんだい?


               七海(手だけを机に置いて)


 私はうどんだから、まだ買ってないわ。うどんはすぐ受け取れるから、みんなの頃合いを見て買いに行こうと思って。


               青戸


 だから一番先に席を取ってくれたんだな。今日は学生が多いから助かったよ。

気を使ったわけじゃないよな?


               七海(将棋を指すように人差し指と中指を机に置く)


 いいえ。みんなと一緒に食べれるし、席も取れるし、私としては一石二鳥よ。(人差し指と中指を開きながら)


(ほとんど同時に青戸と細野の機械が鳴る)


               細野(立ち上がりながら)


 じゃあ行ってきます!


               青戸(立ち上がりながら)


 必ずやまたここに戻ってきます。


               戸崎


君も行ってきなよ。ちょうどいい時間になるんじゃないか?


               七海


 いいの? 戸崎くんのももうできてる頃じゃないかしら?


               戸崎


 僕は猫舌だから、少し冷めてるぐらいがいいんだ。


               七海


 そうなの? 私に気を使わなくていいのよ?


               戸崎


 全然使ってないから行ってきなよ。


               七海(財布を持って立ち上がりながら)


 そう? じゃあお言葉に甘えるわね。


               戸崎


『君たちは優しいね……』


(食事を終え、本屋に来た一行)


               細野(ファッション誌を持ちながら)


 私、本はあんまり読まないんだけど、みんなはどんな本読んでるの? 


               七海


 今私が読んでるのは「愛するということとは」ね。哲学者は人間として生きることに情熱を持っている人が多くて、そういう人たちが抱いている愛についての考えを知れる、とてもいい機会よ。


               細野(想定していたより重厚なものが飛んできて反応に困る様子で)


 なる、ほど……。二人は?


               青戸


 俺は「霧と夜」だな。上辺だけの明るい言葉じゃなくて、本物の人間の光がそこにはあるぞ。


               細野(二撃目を食らったように)


 ……そう、なんだ。戸崎くんは?


               戸崎


 僕は、「アンドロイドは電気山羊の夢を見るか?」だね。この世界の本質的な姿を独特な視点で描いていて、とっても面白いよ!


               細野(想像する自分がノックアウトする)


 みんな、凄いね……。


(ゲームセンターに移動した一行)


               細野(思いついたように)


 そうだ! みんなでレーシングゲームやろうよ!


               七海(残念そうに)


 私まだ免許持ってないの……。


               青戸


 俺もだ。


               細野


 免許なくてもできるから安心して!


               七海(周りを眺めながら)


 ここだけは違う星の領土なのね。UFOいっぱい飛んでるし。


               戸崎


 君たちは宇宙人みたいな思考の持ち主だね。


(運転席を模したゲーム機に座る四人)


               細野


 最初にキャラクターの顔に当てはめる写真を撮られるから、気を付けてね!


               七海(画面に自分が映ってびっくりした瞬間に撮られる)


 これで私の身元が割れてしまうわ……。


(車を選ぶ画面になる)


               青戸


 車なのにグライダーまで使うのか。この星の交通課は大変そうだな。


(スタートのカウントダウンが始まる)


               戸崎


 さあ、始まるよ!


               七海


 私たちなんで後ろの方にいるの?


               青戸


 先頭にいても道案内できないだろう。


               戸崎


 おじいちゃんとおばあちゃんみたいだね。


(一斉に走り出す)


               細野


 スタートダッシュに成功したよ! 


               戸崎


 細野さん速いね! 負けないぞ!


(先頭集団が二週目に差し掛かった頃)


               七海


 たとえコースから落ちてもこの雲に乗った人が助けてくれるのね。社会が敷いたコースから転落しても拾ってくれるかしら。


               細野


 ナーバスになること言わないで!


(先頭集団が三週目に差し掛かった頃)


               青戸


 道にバナナの皮が落ちてるぞ。運転しながらバナナを食べる余裕があるのか。


               戸崎


 それアイテムだから、君も使えるよ!


(先頭集団がゴールした頃)


               戸崎(細野に手を差し出しながら)


 細野ちゃん、いい勝負だったよ。一位、おめでとう。


               細野(戸崎と握手をしながら)


 こちらこそ! 好敵手がいたからこそ全力が出せたんだよ! ありがとう!


               七海


 全身がミサイルに突然変異したわ!


               青戸


 全身が虹色に光り始めたぞ! どんな病気だ?


(ゲームを終え、各自取りたい景品をUFOキャッチャーで獲った後、店の前で集まる)


               七海


 みんなは何を獲ったの?


               青戸(袋からピンク色の丸いキャラクターがナイトキャップを被って寝ているぬいぐるみを取り出して)


 これだ。いいだろう。


               細野


 かわいい~! いいね~。


               青戸(ぬいぐるみを袋にしまって)


 細野ちゃんは何を獲ったんだ?


               細野(袋から白いぬいぐるみを取り出して)


 じゃ~ん! かわいいでしょ!


               青戸


 唇が小さい球体二つなのがいいな。


               七海


 他の部位と比べておしりの曲線だけリアルなのもいいわね。


               細野(袋にしまいながら)


 でしょ! で、戸崎くんはどうだった?


               戸崎(袋からキメラのキャラクターのぬいぐるみを取り出して)


 これだよ! 


               七海


 ライオンに角が生えてるの、なかなかいいわね。


               細野


 尻尾が蛇になってるじゃん! 可愛い~。


               戸崎(袋にしまいながら)


 七海ちゃんはどうだったの?


               七海(袋から黄色の何かの幼体のようなぬいぐるみを取り出して)


 私はこれよ! 


               細野


 可愛い~、けど、何のキャラクターなの?


               七海


 わからないわ。何かの幼体みたいだから、どんな姿に育つか楽しみよ。


               青戸


 不思議な生き物獲ったな。


              細野 戸崎


 確かに。


              七海


 あなたたちに言われたくないわ。


(一階の屋台が出ている場所に来た一行)


              七海


 期間限定でお祭りをやってるのね! 何かやりましょう! 


(型抜きをする七海と青戸)


               七海(不安そうな表情をして)


 星が割れてしまったわ! 何かの暗示じゃなければいいんだけど……。

(隣で顔色を悪くしている青戸を見て)どうしたの? あなたはどんな絵柄だったの?


               青戸(顔を上げて)


「鬱」だ……。


               七海(気の毒そうな顔をして)


 早めに割れて正解ね……。


(かき氷屋台の前に来た七海と青戸)


               七海


 かき氷いいわね! 私はメロンがいいわ!


               子供A(少し泣きそうな声で)


 僕はブルーハワイが良かった!


               七海(困った表情の店員を見て)


 私がそれ貰います。


               店員B


 いいんですか?


               七海


 ちょうど欲しかった色なので。


               店員B


 ありがとうございます!


(かき氷を受け取る七海)


               青戸


 良かったのか? レモンで。


               七海(ほんの少し悲しげな表情で)


 まあ、味は一緒だものね。


               青戸(背負っていたリュックから水色の透明な下敷きを出して)


 これでどうだろう。(七海とかき氷の間に持っていく)


               七海(笑顔になって)


 まあ! 緑色になったわ! 創意工夫ね!

(一口食べて)でも、やめておくわ。このかき氷はレモン味として存在しているもの。目の錯覚で存在を捻じ曲げるのは悪いわ。


               青戸(下敷きをリュックにしまいながら)


 そうか。

『無生物にも生命は宿っているということか』


(屋台を一つずつ見て回る細野と戸崎)


               細野


 金魚すくいだって! いっぱい泳いでるよ! 可愛い~!


               戸崎


 やってみる?


               細野


 やめとくよ~。命あるものは怖いから。


               戸崎


 同感だ。


(もう少し先まで歩いていく二人)


 りんご飴があるね! ザ・屋台って感じだ!


               細野


 買っていく?


               戸崎


 いや、やめとくよ。甘いの外側だけだから。


               細野


 それもそうだね~。


(もう少し先に射的の屋台があるのを見つける)


               戸崎


 射的やろうか!


               細野


 そうしよう!


(お金を払って弾と銃を受け取る)


               細野(横のハンドルを引く)


『七海ちゃんのこと、どう思ってるの?』


               戸崎(横のハンドルを引く)


『どうしてそんなこと聞くんだい?』


               細野(弾を込める)


『気になってるんじゃないかと思って』


               戸崎(弾を込める)


『そうだとしたら?』


               細野(構える)


『青戸くんのこと私はどう思ってるとお考えで?』


               戸崎(構える)


『気になってるんじゃないかと思ってるよ』


               二人(発射する)


『その通りだよ』(二人とも狙っていたソフビの人形に当たるが倒れない)


               戸崎(横のハンドルを引いて)


『でも好きなのかはわからない』


               細野(横のハンドルを引いて)


『私もだよ。だけど、もしそうなったとしたら私たちは呉越同舟ということにならない?』


               戸崎(構えて)


『確かにそうだね。ただいつから君と敵対関係になってたのかはわからないけど』


               細野(構えて)


『同族嫌悪ってことかな。君とは似た者同士な感じがするんだよ。まあとにかく、そういうことだから、よろしくね』


               戸崎 細野(狙いを定める)


(発砲音が鳴り響く)


(発射する前に標的が倒れて驚く)えっ?


(二人とも逆隣を見る)


               七海 青戸(銃の先端を下げて)


 えっ?

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