『タイムロス』 下 最終回


 怪少年は、むかしの怪獣番組みたいに、ばんばん膨張した。


 そうして、その太い両腕で町長さんとぼくをつまみ上げて、お口のなかに放り込んだのである。



      😱ポイ!



 そこは、異様な世界だった。


 なんだか熱気が纏わり付いてくるし、湯気が立っているし、ぶよぶよに溶けたらしい、もと鉄骨みたいなものが積み上がり、なにやら、高層タワーがぐにゃぐにゃに折れ曲がっている。さらにその向こう側は、ガラスみたいになった地面が一面に拡がるのだ。


 『はれー。これは、なんですかな。あら、あの山は見覚えがあるような。』


 と、ぼくが喘いだ。


 すると、小さくなった少年が言った。


 『あなたがたが、毎日見上げているお山です。』


 『なんと。ここは、お山から見える廃墟ですかな。なんか、出来立てほやほや、みたいな。』


 『あなたが言う通りですな。こりゃ、まさに、核兵器が使われた後みたいだ。被爆するかもな。』


 町長さんが言った。



 『ダイジョブれすよ。あなたがたは、バリヤーの中にいます。おらが発生させておるのでありまする。それにこの核兵器は新型で、放射線はあまり出ません。町と人だけ、はでに潰します。』


 『きみは、誰?』


 まあ、いまさらなにを、という感じで少年は答えた。


 『おらは、この壊滅的世界戦争で殺害された、全世界の子供たちの怨念が合体してできた、‘’怪獣オイラー‘’であるのら。』


 『怪獣オイラー?』


 『まあ、勝手にそう呼んでるだけよ。』


 『はあ……』


 『あまりに頭に来たからな、世界の指導者さんたち一族の多数とその取り巻きは、シェルターのなかで、生き残っていましたが、みな、呪い殺して、引退してもらったれす。いささか、食いすぎたよ。しかし、ちょっと、やりすぎましてね、指導者さんは、みな、いなくなった。そうすると、まだ、やっとこさ生きてる人類は、なんちゅうか、再建する力がある人までがいなくなっちまっただ。おらたちは、怨霊なんで、遠慮が足りなかったと、反省しきりなのれす。』

 

 『後の祭りか。』


 町長さんが、冷静に言った。


 『はい。それで、時間空間を破って、未来から、指導者さんを集めていますのら。まあ、ワルキューレの少年バージョンというところかと。しかし、やはり、過去から集めるのはだめだ。過去の指導者は、壊滅的世界戦争をふせぐどころが、保身のために戦争を推薦、いや、もとい、すい、すい。すい…….』


 『遂行か? 促進か?』


 『ま。そうね。そういうあたりれす。さすがは、指導者さま。』


 『はあ………』


 町長さんは、かなり、呆れたようだった。


 『まあ、気持ちは理解するが、君たちはやりすぎだな。やはり、それが、本当ならばだか?』


 『全世界の子供の怨霊の力を甘くみてはなりませぬ。』


 『甘くはみないがなあ。で、なんで、ぼくらを連れてきた?』


 『だから、過去の指導者さんたちは、信用ならぬから、未来から、指導者を集めております。このような惨劇を乗り越えた指導者さんならば、過ちは繰り返さないだろう、な、と。で、あなたには、旧にほんの大統領をしてほしいす。でも、あなたは、付録なので、秘書官とかお願いします。』


 『きみなあ。勘違いしているよ。』


 と、町長さんは言った。


 『勘違い?』


 『そうさ。いいかい。君たちは、ぼくらをここに連れてきた。その結果の未来があれなんだから、失敗したのは明白だ。なにかが、違うんだよ。』



  🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇




      おわり




       🐣ぽ




     🐼🐻🐰












      


 


 

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『タイムロス』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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