第14話

「ご準備はよろしいですか? 結月様」

「うん。大丈夫」

「ではこれより、第二ゲームを開始いたします」

 

 紗蘭と共にゲームへの参加を表明してから約二週間。参加プレイヤー数が規定に達したらしく、結月は携帯端末を通じて自室へ戻るよう伝えられた。ヘッドギアと呼ばれる専用機器を頭に被って装着し、ベッドの上に横たわる。案内役の指示に従って目を閉じると、結月の意識は暗闇へ吸い込まれていった。

 

「……さん、結月さん。起きてください。もう始まってますよ」

「……ん」

 

 どこか聞き覚えのある声に導かれ、結月はゆっくり起き上がる。声のした方に視線を向けると、既に覚醒していた様子の紗蘭が座っていた。

 

「おはようございます、結月さん」

「おはよう、紗蘭。ここは?」

「ゲームの中です。今回の舞台は森ですので、できる限り早くゲーム内容を把握することが重要になります。今は明るいからいいですが夜になれば危険度は跳ね上がる。すぐに移動しましょう」

 

 結月はまだゲーム世界に順応できていなかったが、紗蘭の言っていることは最もだったため何とか立ち上がる。

 

「まだ寝てる人もいるみたいだけど、あれは?」

「恐らく、仮眠を取っているんだと思います。この手のゲームは夜の方が危険だと相場が決まっていますので」

「なるほど」

 

 そういう戦略もあるのか、と結月は思った。確かに眠れる時に眠っておくことは大切だろう。


 小一時間ほど歩き続け、二人は洞窟のような場所を発見した。警戒しながら中を覗いてみると、まだ誰も使用していなかったのでここを拠点に定めゲーム内容を推理する。

 

「森の中で七日間サバイバルってことは、七日間生き残ることがクリア条件なのかな?」

「たぶん、そうだと思います。ただ、生き残るだけなら誰にでもできますから何かあることは間違いないかと」

「問題はその『何か』だよね」

「はい。それと気づきましたか、結月さん」

 

 言って、紗蘭は制服のポケットから携帯端末を取り出した。これは前回のゲームでは使用できなかったアイテムだ。

 

「今回のゲームでは携帯端末の使用が可能なようです」

 

 紗蘭に倣って端末を探しだし、結月も画面に視線を落とす。簡単に操作してみると地図や武器などの追加アイテムが購入できるシステムになっていた。だが、どれも恐ろしく高い。

 

「なかなか強気な値段設定だね……」

「このアイテムにはそれだけの価値があるということでしょう」

 

 初心者プレイヤーの結月にはあまり貯金がないため地図は紗蘭に購入してもらった。早速確認してみるとフィールドはかなり広く設定されており、ふたりが拠点にしているような洞窟も数多くある。

 

「食品類は安いみたいだけど、どうしようか」

「とりあえず、毎日ペットボトル一本分の水と栄養補助食品のゼリーを食べていれば餓死判定にはならないと思います。できる限り支出は抑えましょう」

 

 紗蘭と話し合った結果、食品の確保は後回しにしまずは武器を調達することにした。結月は一振り百三十万ポイントの刀と、一挺二百五十万ポイントの拳銃を購入する。紗蘭は四百万ポイントのショットガンを購入していた。

 

「やはりどれも高いですね。賞金が多く出ることを願いましょう」

「うん。私は最悪マイナスになりそう」

 

 とはいえ、生き残らなくては意味がない。金を出し惜しんで死んでしまったらそれこそ本末転倒だ。

 

「夜に備えて私たちも仮眠を取った方がいいと思うんですが、結月さんが先に眠られますか?」

「いや、私は昨日寝たばっかりでしばらく眠れないから起きてるよ。紗蘭が先に寝て」

「分かりました。ではお言葉に甘えて、お休みなさい」

「うん。お休み」

 

 そして二人は夜を待つ。

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