第2話 鬱の妖怪
赤崎さんもまた幽体離脱をし、
「今から私と共に妖怪退治に行くぞ。百聞は一見にしかずって言葉があるだろー」
「は、はあ……」
妖怪を成仏させるって一体どうやってやるのだろうか。
「成仏方法は簡単だ。妖怪に妖力をぶつける。ただそれだけだ」
「妖力の使い方は……」
「妖怪との戦闘時に教えるとしよう!!」
俺は半ば強引に引っ張られる形で赤崎さんと共に妖怪退治へ向かうことにした。
「ど、どこにむかってるんですか」
「ん、さっき妖怪の出現情報が出たんだ。場所は灰原高校」
灰原高校って……
「俺の高校じゃないですか!?」
「へえ、お前灰高なのか。奇遇だな私もだ」
「そうなんですか」
「ああ。今から成仏させるのは鬱の妖怪だ。名の通り人を鬱にさせる妖怪だ」
てっきりダジャレでくると思ったんだけどなあ。
「取り憑き、相手を最悪自殺に追い込む妖怪だ。実際にこいつに取り憑かれて何人の人が死んできたことか」
おいおいまじかよ。
まさかの殺人妖怪かよッ。
「一つ言っておくことがある、秀太郎。これは、なんちゃらウォッチと違って妖怪は人を平気で殺す。遊びだと思うなよ」
「お、おす」
そうだ。
何甘いこと考えてるんだ。
ふう、と一息つく。
「妖怪は基本、人を殺すこと困らせることに快楽を持っている生き物だと思え」
「そんなに優しくないんですね」
「だな。普段、君が見えているのは人に無害な妖怪、すなわち霊だ。影でしか見たことがないだろ?」
「そうですけど」
「なら、今から初めて妖怪を見るのか。楽しみにしとけ」
いや、できるはずないでしょ……。
だが、妖怪が人を苦しめるなら、俺はこの命に変えてでも妖怪をぶっ殺す。
それが俺の生き方だから。
灰原高校の校門を通り過ぎ、中に入っていく。
「秀太郎、屋上を見てみろ」
赤崎さんに言われるまま、屋上を見るとそこには一人の男子生徒が柵の外側に立っていた。
自殺……。
全身に冷たい汗が溢れ出した。
「あいつに妖怪が取り憑いてると見た。早くいくぞ秀太郎」
「おす、って、え、え?」
赤崎さんは俺を抱え、
「んじゃいくぞ」
地面に右手をやり、
「
突如、右手からは炎が出現し、一瞬にして爆発した。
「うわああああ」
反動で赤崎さんは宙へと吹き飛んだ。
赤崎さんに抱えられていた俺もまた、宙に飛んでいく。
「大丈夫、妖術も霊感のあるやつにしか見えんからな」
つまり、今俺たちが何をしようが周りの人たちには気づかれないってわけか。
「まっ、それは同時に人間に触れることができないってことだけど……」
「じゃ、じゃあ、どうやってあの人を柵の内側に……」
屋上に着地し、俺を離す赤崎さん。
「そーだな……」
赤崎さんは屋上と下の階を繋ぐためにあった扉を開けた。
「人には干渉できんが、建物など、命のないものになら干渉できる。命がないってところで結びついてるのかもな」
「だっ、誰だ!?」
男子生徒がこちらを見る。
もちろん、中に誰か入ってくることはない。
「取り憑きレベルも低いと見た。まだ妖怪に身体を完全には乗っ取られていないな……」
赤崎さんはドアノブを掴み、何度もガチガチ、とやり出した。
「ふはははは」
ゲラゲラ、と笑い出す赤崎さん。
こ、こええ……。
「な、何が起こってるんだよ!?」
男子生徒は柵を上り出す。
「す、すげえ」
「そうそうそれでいい」
扉に近づいたところで、赤崎さんは俺を幽体離脱させた時同様、男子生徒の頭を押さえつけた。
無論、男子生徒に触れることはできない。
が、中から……
「バレちまったかあ」
下半身が地面に埋まっている黒い人影のような生き物が現れた。
同時に男子生徒は気絶するかのように倒れた。
「秀太郎、あれが妖怪だ」
努力の天才妖媒師は無限の妖力で無双する さい @Sai31
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