第9話:「伝説の真実と秘宝の覚醒」


老人がゆっくりと歩み寄ると、彼の目には確かな知識と覚悟が映っていた。その風貌はただの温泉街の住人のようには見えない。彼の存在そのものが、何か大きな運命に関わっているとカズマは直感した。


「君たちが……ついにここに辿り着いたか」

老人は静かに言葉を紡ぎ、深く息をついた。


「アンタ、誰なんだ? 俺たちを待っていたってわけか?」

カズマは警戒しながらも、真実を知りたい気持ちで問いかけた。


「私はただの老人……だが、この土地で長い間、災厄の王が目覚めるのを待っていた。そして、その王を倒す者が現れることもな」


カズマは驚きながらも、次の質問を急いだ。「その杖のことを知っているのか? 俺たちが手に入れた『伝説の秘宝』ってやつの真の力は何なんだ?」


老人はカズマの手にある杖をじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。


「その杖――それは『世界を揺るがす力』を宿した神器だ。しかし、今君たちが手にしているのは、その本当の力の一部にすぎない。この杖の真の力を解き放つには、ある儀式が必要なのだ」


「儀式?」

めぐみんが興味深げに尋ねる。


「そうだ。杖が持つ力は、太古の神々が封じたもの。この力を解き放つためには、災厄の王の存在を感じさせる場所――つまり、かつて神々と魔王が戦った地で、特別な詠唱を行わなければならない」


「それじゃ、その場所がどこにあるのか教えてくれよ!」

カズマは焦燥感をにじませながら老人に迫る。


「その場所は、この温泉街の北に位置する『神々の祭壇』と呼ばれる古代の遺跡だ。しかし、その地は今、災厄の王の力が浸食しており、近づくことは非常に危険だ」


「それでも、俺たちは行くしかないだろう」

ダクネスが決意を込めて言った。


カズマも同意するように頷いた。これまで様々な危機を乗り越えてきた彼らだが、今回の災厄の王との戦いはこれまで以上に厳しいものになることを理解していた。


「しかし、ひとつだけ忠告しておこう」

老人が真剣な声で告げる。


「この杖の力を完全に解き放つということは、君たち自身の存在もまた危うくなるということだ。この力は、ただの武器ではない。使う者の意志と魂を試す。それに耐えられなければ……命を落とすことになるだろう」


一瞬、カズマは言葉を失った。仲間たちもそれぞれに考え込む表情を見せる。しかし、次の瞬間、めぐみんが自信満々に声を上げた。


「それなら問題ないわ! 私には爆裂魔法があるし、この杖の力なんて余裕よ!」


「お前はいつだって爆裂魔法のことしか頭にないんだよな……」

カズマは苦笑しながらも、その自信に少し救われた気がした。


「よし、なら決まりだ。俺たちはその『神々の祭壇』って場所に向かって、儀式を行う。それが災厄の王を倒すための唯一の道だ」


翌日、カズマたちは準備を整え、老人の指示に従って『神々の祭壇』へ向かうことにした。祭壇までは険しい山道を登る必要があり、災厄の王の力がそこに及んでいるため、道中でも強力な敵が待ち構えているだろう。


温泉街の外れに広がる山々は、すでに黒い霧に包まれ、その異様な雰囲気がカズマたちの緊張感を一層高めた。


「これまで何度も危機を乗り越えてきたけど、今回は本当に命をかける戦いになりそうだな」

カズマは険しい山道を歩きながら呟いた。


「心配しなくても、私がいる限り問題ないわ! 災厄の王だろうが、私の神聖な力で浄化してやる!」

アクアがいつもの調子で自信満々に言う。


「お前の力がどこまで通用するかだな……まあ、何とかなるだろう」


カズマは少し不安を抱きつつも、アクアの能天気な態度に少しだけ気が楽になった。


やがて、険しい山道を越えると、彼らの目の前に古びた石造りの祭壇が姿を現した。祭壇は巨大な岩に囲まれ、その上には無数の古代文字が刻まれていた。その中央にある石碑は、まるで太古の神々が使った儀式の場であるかのような神聖さを放っている。


「ここが……『神々の祭壇』か」

カズマはその荘厳な雰囲気に圧倒されながらも、杖をしっかりと握りしめた。


「ここで儀式を行えば、杖の真の力が解放されるってことね」

めぐみんが興奮気味に祭壇を見つめる。


「気をつけろ。ここには災厄の王の力が満ちている。いつ何が起こるかわからない」

ダクネスが警戒しながら周囲を見渡す。


その時、突然、周囲の空気がピリピリと震え出した。祭壇の上に黒い霧が渦を巻き、まるで何かが呼び起こされようとしているかのようだった。


「カズマ! 来るわよ!」

アクアが警告するが、その言葉の直後、祭壇の上に巨大な黒い影が現れた。それは、災厄の王の使いとは比べ物にならないほどの凶悪なオーラを放っていた。


「これは……災厄の王の眷属か?」

カズマは杖を構えながら冷静に状況を把握しようとしたが、その圧倒的な存在感に動けなくなっていた。


「さあ、ここからが本番だわ! 覚悟しなさい!」

めぐみんが杖を掲げ、詠唱を始めた。


「爆裂魔法を使うつもりか!? まだ早いだろ!」

カズマは驚きながら叫ぶが、めぐみんは止まらない。


「エクスプロージョン!」


巨大な爆裂音が祭壇を包み、黒い影に直撃した。しかし、その影はただの眷属ではなかった。爆裂魔法の衝撃を受けても、まるでダメージを受けていないかのように立ち上がった。


「何だと……!?」

カズマは驚愕の表情を浮かべた。これまでの戦いでは爆裂魔法が最強の一撃となっていたが、今回はそう簡単にはいかないことを悟った。


「どうするんだ、カズマ!」

ダクネスが叫ぶ。


「杖を使うしかない! これが最後の手だ!」

カズマは決断し、伝説の秘宝を掲げた。彼の手の中で杖が輝き始め、強大な力が解き放たれようとしていた。


「これが……真の力か!?」

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「この波乱に喝采を! ~運命をぶっ壊せ〜」 runa @hamster-Altair

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