第17話 彼の部屋
朝陽の部屋に入った四人、
「みんな、わざわざ俺のためにありがとうね」
としみじみと頭を下げる朝陽。
「そんなことないよ」と美緒が言った。
「そうだよ。でも、不思議な感覚だな」
聡が呟くと、
「うん だって、本人がおばさんの後ろに
いるんだもんね。違和感もなく。
本当に不思議な感覚。朝陽君、本当に
亡くなってるんだよね?」と智美が言った。
「亡くなってるよ。葬儀に来ただろ?」
と朝陽が呟いた。
「まぁ……そんなことはどうでもいいさ。
それより、これからどうする?
朝陽……やりたいこととかないの?」
と聡が聞いた。
「そうだな。おまえ等とまた一緒に
この夏を過ごせるのが一番の願い
なんだけどさ……。
『花火』、花火を観たいかな?」
「花火? それって、来週の花火大会?」
と聡が聞き返す。
「ああ、今年も『花火』見たいんだ。
一緒に……」と朝陽が美緒の顔を見ると
ニコッと笑った。
「朝陽……覚えててくれたんだ」
美緒が呟く。
「だって、約束しただろ?
来年も一緒に花火見ようって……」
「そういうことね……
じゃあ、皆で行かなきゃね」
と智美が言った。
美緒と朝陽は一年前と変わらぬ表情で
互いを見つめ合い笑いながら話をする。
美緒は、朝陽の部屋を見渡すと目を閉じる。
「美緒? どうしたの?」と朝陽が声をかける。
「なんか、懐かしくて……もう、こんな時間
二度と来ないって思ってたから……。
今、物凄く幸せ」と満面の笑みを浮かべた。
「俺も、また美緒に会えた」
朝陽も幸せそうな表情を見せる。
二人の様子を見た聡と智美も互いを見て
微笑んだ。
「おばさん、長居してすみませんでした」
と母親に頭を下げる美緒と聡と智美。
「いいのよ。あの子の部屋で過ごして
もらって……。まるであの子が部屋にいる
ような気がしてたの。
また、いつでも遊びに来てね」と母親が言った。
母親の隣に立つ朝陽、
「じゃあ、来週の花火大会で……」
と朝陽が三人に言った。
三人は微笑み 「ありがとうございます」
と母親に言うと朝陽の家を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます