第16話 初盆参り

 今日は、美緒と聡と智美の三人が

朝陽の初盆参りを予定していた日曜日。


 三人は、待ち合わせをして朝陽の家に

向かう。

 「朝陽君、彼の家にいるのかな?」

 と美緒が呟いた。

 「どうだろうね。でも、聡が家に着いたら

出て来れるんじゃないかな?」と智美が言った。

 「え~、それって俺責任重大じゃん」


 いつしか朝陽の家の前に到着した三人、

ピンポーンと玄関のインターフォンを押した。

 ガチャ……。


 玄関のドアが開くと、中から朝陽の母親が

出迎えた。

 「おばさん、こんにちは。ご無沙汰してます」

 と聡が頭を下げる。

 「こんにちは……」と美緒と智美も挨拶をすると

頭を下げた。

 「聡君、美緒ちゃん、来てくれてありがとう。

 智美ちゃんも、ありがとうね」

 と母親が涙ぐんだ。

 母親は、仏壇がある部屋に三人を案内すると、

仏壇に飾られた朝陽の遺影……。

 仏壇には沢山のお供え物とその脇には、

色とりどりにくるくると回る

盆提灯が飾られていた。


 三人は、順番にお線香をあげ、

手を合わせる。


 お参りを済ませた三人が

朝陽の母親に深々と頭を下げる。

 「三人とも、ありがとう。

 朝陽もきっと喜んでくれてるわ」

 と優しく微笑む母親の後ろには……

ピースサインをする朝陽の姿。

 勿論、母親には彼の姿は見えていない

と三人は即座にそう理解した。


 「おばさん……朝陽の部屋はまだある?」

 と聡が言った。

 「あの子の部屋はまだそのままにしてあるわ。

 なんか、今でも、突然帰ってくるような

気がしてならなくてね」


 「おばさん、俺たち、少しだけ

朝陽の部屋で過ごしていいですか?」

 と聡が言った。


 朝陽の母親は嬉しそうに、

 「どうぞ……ゆっくりしていって。

 あの子もきっと喜ぶと思うから」

 と言った。

 聡と美緒と智美、

そして、朝陽の四人は

彼の部屋に入って行った。


 聡と美緒、智美の三人の後姿を見送る

朝陽の母……。


 「不思議ね……まるで朝陽がいるような

 気がする……」と呟いた。

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