第14話 これからどうするの?

 事故当日の話を終えた朝陽は、美緒の顔を見ると

 「美緒、そういうことなんだ」


 「朝陽が死んじゃって、幽霊になって、

私達の前に現れたってことなのかな?

 本当に、ありえないくらいに驚いてる。

 この、テレビドラマや映画の世界のような

状況が信じられない」

 と美緒が呟いた。


 「そうだろ? 美緒ちゃん、俺もびっくりしたんだ。

 朝陽がいきなり、俺の部屋にいたんだよ。

 俺の勉強机の椅子に座っててな。

 俺、てっきり夢って思っててさ、

で、その日の夜に今度は、帰宅したら

ベッドの端に座ってて、『よ!聡、お帰り』

って、こいつ笑うんだ。

 一年前と変わらない笑顔で……」


 「信じられない……」と朝陽を見る美緒。


 「美緒先生、僕が知る限り、朝陽さんのことが

見えて、普通に触れることが出来るのが、

僕と、美緒さんと、聡さんの三人だけみたいだけ

みたいなんだ。

 今まで、色んな人に試したんだけど」

 と想汰君が言った。


 「俺の両親、じいちゃん、ばあちゃん、兄ちゃん

その他、あらゆる人の前に行ってみたけど、

あ……でも、この神社の神主さんの所に

行ったときは呪文を唱えられたな」


 「とにかく、朝陽のことがわかるのが、

今のところこの三人なんだよな」

 と聡が言った。


 「ああ、でも想汰と色々試してわかったことが

あるんだ」


 「わかったこと?」


 「俺が、このように存在出来るのが、

想汰、聡、この二人の誰かが

近くにいる時だけみたい……

なんか、通じるエネルギーみたいな?

 波長が合うというか?そんな感じ……」


 「他の人には朝陽のこと見えないの?」

 と美緒が尋ねた。


 「ああ、残念ながら、誰でもっては

いかないみたい……」


 「そうか……おじさん、おばさん、

会いたいだろうな」

 と美緒が残念そうに呟いた。

 「で……朝陽、これからどうすんの?」

 と聡が彼に聞いた。


 「う~ん、わかんないな。

 俺自身もどうなるのかわかんないし」

 両手を頭の後ろに組む朝陽。

 「じゃあ、取り合えず、美緒ちゃん、

明日、俺んち来いよ」と聡が言った。


 「え? それはいささかまずいよ。

 智美に誤解されるよ」と美緒が答えた。


 「そうか……じゃあ、朝陽の初盆参り

の打ち合わせとか言って俺が智美に連絡

するからさ……」と聡が言った。

 「わかった……そうする」と美緒は返事をした。


 夜も更けた頃、

美緒と聡は境内を後にした。


 境内に残った朝陽と想汰君。

 「想汰……遅くまで悪かったな。ありがとな」

 と朝陽が言った。


 「僕も朝陽さんのお手伝いが出来て嬉しいから、

美緒先生の嬉しそうな顔が見れてよかった」と呟いた。

 「嬉しそうな顔?」と朝陽が聞いた。

 「うん……だって、美緒先生、

時々、寂しそうな顔するんだ。

 美緒先生には笑っててほしいと僕は心から

そう願ってるんだから……」と想汰君が呟いた。


 「そうか……」

 と言うと朝陽は想汰君の頭を優しく撫でた。

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