付き合ってる通り越して、もはや夫婦じゃん!って言う会話をする、付き合ってない、いとこの話
@Ciel1024
第1話
「総司、もう8:10分よ。起きなさい。」
その声でそれまで安らかな夢の中にいた俺は慌ててベッドから飛び起きた。
「8:10分!? やばっ、遅刻じゃん! ってまだ7:30じゃねえか。全く、ビビらせんなよ、葵」
遅刻かと思って焦った俺は、時計を見て少し安心し、嘘をついて俺を起こした極悪人《いとこ》の葵を見る。
「こうでもしないとあなた起きないじゃない。それにまだ7:30て言うけど、朝ご飯食べて家出るには少し遅いぐらいよ」
全く反省の色を見せない葵。
「いや、俺は朝飯いらないタイプっていつも言ってるじゃん」
「朝ご飯は食べるべきだといつも言ってると思いますけど?」
ささやかな抵抗も秒殺される。このまま逆らうと、朝ご飯を食べる理由を延々と説明されるのである。
「はい、すいません」
「まったく、どうせすぐ謝るんだから無駄な抵抗するんじゃないわよ、まったく」
大きなため息をついて呆れた表情で話す葵。
「はい、おっしゃる通りでございます」
「もういいから、早く朝ご飯食べて、学校いくよ」
「了解」
朝のくだらない会話を終わらせ、葵が作ってくれた朝ご飯を食べるためリビングに向かう。テーブルには白米に味噌汁、卵焼きに冷ややっこと和食の朝ご飯が並んでいる。
「毎朝朝食作るの大変だろ? 味噌汁もインスタントじゃなくちゃんと作ってるし。そんな頑張んなくてもいいんじゃない?」
「んー、私は総司と違って朝起きるのは辛くないし料理も好きだからそんな大変じゃないわよ? 味噌汁も私がインスタントよりも自分で作ったやつが好きなだけだし」
塩味を自分好みに調整できるからインスタントより好きなのよね、と話す葵。
「全くいい嫁さんになりそうだな葵は」
「あら、じゃああなたの将来の奥さんとして予約しとく?」
「ばかいえ、俺の好みはもっと胸が大きい女の子だ」
「殺すわよ」
朝ご飯を食べながら下らない会話をする。
「ほら、洗い物もやらなきゃいけないんだから馬鹿なこと言ってないで早く食べちゃいなさい」
朝ご飯を食べ終えて洗い物も済ませた俺たちは二人で学校に向かうのだった。
1,2限の英語、数学をなんとか乗り越え、調理実習室に移動する。
「はーい、それじゃ調理実習始めるよー」
今日の家庭科は調理実習の日だ。
ふむふむ、今日作るのはカレーか。凝りだすと奥が深いが作るだけならそこまで難易度は高くないといえるだろう。まあ、料理初心者が多くいるであろう調理実習でするには妥当なところか。
まあ普段から料理している身としては楽勝だな。
それに、葵も一緒の班だしな。
「総司ー、包丁ってこう持つんだっけ?」
…前言撤回。やばそうなのいるわ。
「んなわけねーだろ。なんだ?お前は人を刺したいのか?ドラマでしか見たことねーわ、そんな持ち方。こうだよ、こう!」
恐ろしい持ち方をしていた班員の男子に教えてやっていると、
「あはは、たしかにちょっと不安だよね。私も料理なんてほとんどしないし。葵ちゃんと総司くんは一緒に暮らしてるんだよね?いつもどっちが料理してるの?」
もう一人の班員の女子から質問が飛ぶ。
「んー、どっちもかな。総司は朝弱いから朝ご飯は私が作ることが多いけど、それ以外は大体一緒に作ってる」
それに葵が答えると、
『えっ?一緒に料理してるの(か)!?』
二人から何故か驚かれる。
「え、うん、そうだけど?それがどうかした?」
俺がそう返すと、
「え、二人は別に付き合ってるわけじゃないんだよね?」
困惑気味に質問される。
「そうだよ?」
「ええ、そうね」
その質問に当たり前のようにそう答えると、
「普通付き合ってなかったら、いや仮に付き合っていたとしても毎日一緒に料理したりはしないと思うんだけど」
そんなことを言われる。
「や、二人でした方が作業が早く進むじゃん。」
「二人でやった方が楽じゃない。」
俺と葵が揃ってそう返すと、
「いや、そう言うことじゃないんだけど…」
「マジかよ、お前らやべーな」
何故か二人から若干呆れられてしまった。解せぬ。
「あー、でもうちはキッチンがそこそこ広いから二人で作業しやすいけどそうじゃなかったらむしろ一人で作った方が楽かもな」
「そうね、キッチンが広いのはうちのいいところね」
「いや、そういうことじゃないんだけど...」
何故かさらに呆れられた。
閑話休題
時折危ない動きを見せる班員の男子を止めながら作業を進めていく。
「あ、そういえば、葵。今日の夕飯どうする?」
じゃがいもを切りながら葵に話しかける。
「んー、そうね。夏だけど鍋にするのはどうかしら?」
鍋か、鍋なー。
「夏に食べる鍋もまた悪くないよなー。でも最近、野菜高いからなー、食材切ってぶち込むだけだから作るのは簡単なんだけど」
最近はどの野菜も高くて本当に困る。小松菜1袋199円を見たときは思わず二度見いや、三度見してしまった。さすがに手が出せない。
「あー、たしかにそうね。まあ、いつも通りスーパー行ってから考えましょうか」
「だな!ってお前らどうした?」
夕飯の相談をしていると、班の二人がコソコソ喋っている。
(これで付き合ってないって嘘だろ!)
(ねー。付き合うどころか夫婦の会話だったよ)
(それな)
(まあ、でもこの二人尊いからそっとしておくか)
(分かる!なんかお互い信頼しあってるって言うか、なんて言えばいいか分かんないけどいいよね!)
(ああ)
『いや、なんでもないよ(ぜ)』
二人がそう返してくる。
「それならいいけど」
何故か微笑ましいものを見るような目線を感じながら、調理を続けるのだった。
ちなみにカレーはとても美味しくできました。
付き合ってる通り越して、もはや夫婦じゃん!って言う会話をする、付き合ってない、いとこの話 @Ciel1024
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます