こんな愛に、彩りを
第87話
これといった出来事のない、有り余る日常の一片の。
ムードも演出もない、優しさだけに包まれた空間で。
強いて挙げるなら、朗らかな陽が射し込んでいて。
穏やかな日向で、互いの手にあるマグカップから黒い液体が湯気を上げている、部屋の片隅で。
取り留めもない会話は、頭から抜け落ちた。
意味もなく抱き寄せた腕の中でこぼれ落ちたその笑顔は、脳裏に焼きついて消えないけど。
名前を呼べば、澄んだ黒目に自分が映った。
綺麗な色に落ちながら言葉を紡ぐと、その瞬間、瞳は弱く揺れた。
戸惑ったまま、頬を伝い落ちていく涙。
顔を隠した手をどけ、拭ってもきりがないそれを指で拾いながら笑う。
つられたように泣き笑いをする姿に堪らず肩を抱き寄せた、特別な日の誕生日。
今日は何をしますか?
明日はどこに行きますか?
明後日はどんな話をしますか?
来週も手を繋いでいませんか?
ずっと一緒にいましょう。
涙も傷も見落とさないくらい近いところで。
笑顔も喜びも幸せも移ってしまうくらいの距離で。
ずっとずっと、一緒にいましょう。
君の答えを聞かせてくれますか?
ここに、永遠の証明を。
今、終わりの来ない未来の選択を。
君と触れ合える日常の積み重ねを求めて。
まずは紙切れ1枚の束縛から。
こんな愛に、彩りを。
こんな恋の、こんな愛。 実和 @miwa_33
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