10


 慰霊碑にペンダントを納めた3日後、ウォルトは妹とその夫と向かい合っていた。


 リヴェズに聞いた話では、リヴェズの外見が変化しないために長期間一か所には居られない。その為に旅を続けているのだそうだ。


「じゃあ、元気でな。時々帰って来いよ」


 町の入り口の門の近くでそう言ってエフィの手を握ると、横からその手をいきなりリヴェズが掴む。


「……?」


「じゃ、行こうか」


 さも当然という風にそのまま歩き出す。

 町から遠ざかる方向に。


「どこまで見送ればいいんだ?」

「ごめんね、君のとこの棟梁さんには話をつけてるから」


 エフィが嬉しそうに空いていたもう片方の手を取った。


「つまりね、君も一緒に旅立つんだよ」


「はぁ!?」


 リヴェズは立ち止まり、にっこり笑うと、

「エフィのためだよ」

 そう言ってまたウォルトを引きずって歩き出す。


 仮にも大工である。腕力をはじめとし力はある。

 だが、本気で振り解けない。


「ちょっと待てぇぇえ!」


 リヴェズは勿論、エフィも聞かなかった。



◇◆◇◆◇



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雪幻の墓標 副島桜姫 @OukiSoejima

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