最終話 結婚

ウルが魔導王の誘いを断り、且つカルカとの正式な婚約の約束をこぎつけた後…。


聖王国ではカルカを筆頭に、終戦後の復興とウルとの結婚の準備が急ぎ足で行われることとなった。


それと同時に、先の戦争におけるウルと魔導王の力、並びにカルカに齎された至高天の熾天使の力が聖王国を始め、周辺国家に知れ渡ることとなった。


各国がそれを把握し、聖王国とコンタクトを取るのにそう時間はかからなかった。


各国が聖王国、引いてはカルカに謁見を申し込むに至るが、それは今聖王国が進めている一大イベントをもってして果たされることとなる。


さて、聖王国中が天手古舞となっている中、ウルも事後処理と言わんばかりに慌ただしく動いていた。


一つはカリンシャの屋敷の住民に対してである。


カルカや聖王国が急ぎ足で婚姻の準備を進めているのはウルも知るところであり、それを知らせるに至る。


皆一様にウルの無事を涙ながらに喜んでいたが、それと同時にカルカとの婚姻に驚きの声を上げることになる。


そして、一番重要なことをとある人物に伝える。


ツアレであった。


カルカとの婚姻が決まったことで、結果としてツアレを正妻にすることは不可能になったわけだが、ツアレはそのことに関してはあまり驚いた様子はなかった。


ウルが出した答えは、ツアレさえよければ、子どもをもうけることも、側室、妾として歩むことも厭わない、というモノであった。


もちろん、カルカにも承諾は得ている。


少し渋ってはいたが、正妻が自分であることと、ウルの価値を考えれば妥当だと、二つ返事で承諾してくれた。


ツアレは一切の迷いを見せず、それを受けることとなる。


カリンシャの屋敷での用事を済ませた後、なんとウルは聖王国を一瞬離れることとなる。


その発端は、竜王国から届いた書状、救援要請であった。


竜王国はたびたびビーストマンの襲撃を受けている。


それは事前にカルカもウルも知りえていたことであったが、今現在の侵攻が尋常ではないらしく、法国の支援のみでは立ち行かなくなっているため、ウルの派遣を望んでいたのだ。


ウルはそれをカルカから聞き、即座に救援へ向かうことを決めた。


カルカもウルと同等の力を得たことで、一緒に行くと意気込んでいたが、カストディオ姉妹や大臣達に強く反対され、とん挫することになる。


ウルとの婚姻の準備もあったため、カルカも渋々受け入れることになったが、三魔皇のような化け物がいないという理由もあった。


ウルが竜王国について、何と5日足らずでビーストマンに大打撃を与えることになる。


ウルが一人で屠ったビーストマン、なんと20万…。


ビーストマンからすればとんでもない悪夢であったが、人間を喰らうビーストマンに対し、人間であるウルがそれを行ったというのは当たり前に見えたであろう。


しかし、ウルはビーストマンに対し、交渉の場を設けた。


アインズやナザリック勢に散々虐殺や侵略的行為を制限、咎めていただけに、自身がそれをないがしろにするわけにはいかなかった。


些少の平和的解決を望んでいたウルであったが、結果を見ればそれがとん挫したのは言うまでもないだろう。


ビーストマンは思いがけぬ大打撃を受け、東方南方へと逃げ惑うことになり、完全に統率を失うこととなった。


少なくとも5年は、まともに竜王国に対する侵略行為は行えないであろう。





ビーストマン殲滅を終えてすぐ、王国の首都に滞在している際に、一人の老婆と出会うことになる。


その老婆はリグリットと名乗り、ウルはその老婆と即座に親しくなるに至る。


理由は明白で、ユグドラシルやプレイヤーについて知っていたからである。


十三英雄の一人であったという話を聞き、詳しく話をしている中で、リグリットからも高評価を受けたウルは、評議国へ招待されることとなるが、すぐに出向くことはしなかった。


しかし、収穫はあった。


なんでも、リグリッドはいわば使者で、本当にウルに接触を求めているのは、白金の竜王というものであるらしい。


ウン百年はくだらない時を生きているらしく、六大神やそれこそ八欲王との関りもあったとのこと。


ウルはツアーとの邂逅を約束し、一旦は聖王国に戻ることとなった。






そして、先の大戦から数か月、ウルが転移してから約2年が経った頃…。


ウルは、全身を白いタキシードに身を包んで、聖王国の首都ホバンスにその身を置いていた。


なぜそのような服装をしているのか、その説明は不要であろう。


玉座の間の扉が、ゆっくりと開かれる。


玉座の間は、白と金を基調とした純潔な装飾が見て取れた。


一歩足を踏み入れる。


赤を基調とし、要所に銀色の装飾が施された長い絨毯が玉座の間まで伸びている。


入ってすぐ、左右には聖騎士団や神官団、聖堂勢力の役職者や、聖王国の有名貴族たちが壁を作るように立ち並んでいた。


ウルは、ゆっくりと、しかし凛々しい姿を保って歩みを進める。


暫く進み、目的の玉座まで半分と言ったところで、左右に立ち並ぶ人物に変化が訪れる。


各国の要人の姿であった。


王国、帝国、魔導国、評議国、竜王国、そして法国と思しき面々であった。


王国からはランポッサ3世とザナック第二王子に加え、ラナー王女の姿もあった。


また、青の薔薇の姿も目に入る。


帝国からは、ジルクニフ皇帝陛下とフールーダ、そして四騎士のニンブルが出席している。


魔導国からは魔導王とアルベドが参列している。


どちらも異形の身を隠すことなく、同様に出席している。


評議国からはリグリッド、竜王国からは女王と宰相の2人。


法国からは最高神官長の内3名が出席している。


法国からはなぜか咽び泣くような声が聞こえてくるが、ウルは気にしたら負けと言わんばかりに歩みを進める。


…最前列横まで進むと、聖王国の王族と、聖騎士団長、神官団長を始め、大臣の姿に加え、ルカの姿が目に入る。


そして玉座の前で歩みを止め、少し視線を上へと向ける。


そこには、白いウェディングドレスに、白いベールに包まれた美しい女性が立っている。


ベールに包まれてなお、その美しい顔立ちと金糸のような髪は容易に見て取れる。


というよりも、白いベールがよりその美しさを醸し出しているようにも感じられた。


玉座との段差を一つずつ、ゆっくりと超え、美しい金髪の女性の横へと歩み寄る。


ウルが立ち止まったことで、その女性はまるで女神のような笑みを浮かべて見せ、右手をそっと差し出す。


ウルはその右手を両の手で掬うようにして優しく包みこむ。


そして、左手をもって手を繋ぎ直し、聖堂大臣が立つ、玉座のある方へと身体の向きを変える。


そんな2人の姿を見た聖堂大臣が、些少の微笑みを浮かべると、ゆっくりと丁寧な口調で、誓いの言葉を述べ始めた…。




         ~END?~

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カルカとモモンガに救済を! ペリカン @zenityan

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