第59話

『……っ』




全てを話し終えて、止めた涙がまた溢れてくる。



心はカラカラだというのに…




「これ使ってね。温かいの、淹れてくる」




さっとティッシュボックスを差し出してくれて、マグカップを持ってキッチンへ行く未緒さん。




今日は気を遣わせてばかりだ。




「どうぞー」




『ありがとうございます…』




「うん。あ、お腹は空いてない?ご飯は食べた?ケーキだけじゃ足りないんじゃない?」




『…ご飯、そういえば食べてなかったです』




「何か作るよ。簡単なものしかできないけど…。何食べたい?今日は好きなもの好きなだけ食べよう」



『……いいんですか?』



「もちろん。うーん…オムライス好き?それかー…」



『オムライス、大好きです!』



「そっか、じゃあオムライスにするね。待ってる間、テレビでも見てる?本も少しあるけど…その棚のもの、適当に使って」




久しぶりに真正面から見た未緒さんは、いつもより大人っぽく見える。



冷蔵庫から食材を取り出している背中を見て、勧められた通り、テレビのリモコンを棚から拝借する。




…この箱、なんだろう?




リモコンの横に置いてあった箱が気になって、蓋を少しだけ持ち上げてみる。



…カメラ?



カタッと未緒さんが立ちあがった気配で、何故だか見てはいけないものを見た気分になって慌ててテレビをつけた。

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