第2話 寒い冬とコインランドリー
全く関係のない平行線と化して
流れていた2人の時間と
ほんの少しだけ感じていた自由。
ゆっくりとした時間の流れに終わりを告げたのも
このままでは埒が明かないと先を見てしまう悪い癖によるものだった。
キラキラしているものは確かに好きだったけれど
わかりやすいものにはこれひとつとして
魅力は覚えていなかった。
たとえ、世間では価値のあるものを見せられたとしても
自分で手に入れたものではなかったので
あまり興味は湧かなかった。
それらは複雑に見えたから
私にはよく分からなかったという言い方が1番しっくりくる。
感情の処理の仕方がわからず
終わりのない毎日には
疲労している顔を見せないように
その場しのぎで生きていた。
頼るところといえば特に無く、
日付が変わるくらいに一人でいた渋谷から
連絡をしたのは
珍しくわたしの方だった。
これと言って深い意味もないよ。
ということを口調によって意思表示をするのは
心底あてにしているわけではない
ことを伝えるためだった。
いつきても
いつ出ていっても
誰とどこで何をしていても
詮索をされないというのは
とても楽だった。
自分だけの時間をわがままに過ごせる贅沢さを
あまり経験したことがなかったから。
ただひとつ、
決まって過去の自分を
投影してしまう
真っ直ぐな目は苦手だった。
理解したい
教えて欲しい
に答えることは
もう既に時間の無駄になることも
見透かしていた。
他人のことなんだから
わかるわけがないよ。
と言う人の言葉に幻滅する度に
つまらないホントよりも
面白みのあるウソを愛したいと思った。
きっとそれには賛成と言うよりも
また難しいことを考えているね、好きにすれば?というくらいの程度のお馴染みのスタンスだった。
意味のないものだけで囲まれていた。
好きなように笑って
好きなように泣いて
好きなように怒っていた。
それを見て全く予想のしていなかった一言で
もう一回笑いたい。
泣き止むまで慰めてしまったから、
怒り終わるまで宥めてしまったから、
キリがないくらい笑っていたから、
今はもう仕方がないよ。が口癖になったのにも納得している。
とんでもない日々の中にあった
深夜の公園
コンビニ
安いワイン
どこで吸っても怒られないタバコ
お腹いっぱいだからと言いつつやっぱりひと口ちょうだいと言うカップラーメン
近所のコインランドリー
自販機で偉そうに買ってくれる缶コーヒー
鳴っても止められない目覚まし
きっとその場所には
喜怒哀楽の全てがあった。
そして
表現が下手くそなりに
優先順位の高いところに自分があったことがよく伝わっていた。
一体何を返せばいいのか分からないくせに、わがままは言い続けていた。
きっとまだ
何にでもなれた。
私の気まぐれによって
漂う異空間に嫌悪感もなかった。
灰のような毎日でもよかった。
楽しいこと以外のことはしなくていいはずだった。
最後は
無くてはならない物になってしまう前に
心の中に入れるのをやめた。
無駄に傷つくことは避けたいからだった。
また少しだけ大人になれそうだけれど
たくさんのこと我慢できるようになったけれど、
今年もまた寒い冬が巡る。
交わることのない平行線上で
あなたのような人になりたいと今日も思う。
ガトーショコラの甘さだけ @____0l____
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