第29話 新たな展開
結愛とまったり休日を過ごしてから、1か月は経っていた。お互いに忙しくて会うことが減っていた。洗面台の鏡をのぞき込んで、顔を見つめる。そろそろ、髪を切りにいかないといけないくらいに伸びてきてるなと気づいた。電気シェーバーを滑らせて、ひげをそる。頬ににきびができている。昨日食べ過ぎたポテトチップスのせいかなと思いながら、ベッドに置いていたスマホを取りに寝室に戻ると着信音が鳴った。誰かと思ったら、佐々木望美の名前だった。嫌な名前だなと思いながら、
思いとどまったが、鳴りやまない。一度切れたかと思ったら、また着信があった。何も言わずに通話ボタンをタップした。
『碧央!? 碧央、起きてる??』
「え……寝てるけど」
(本当は今から早急に起きて、大学に行く準備をしないといけないけどな)
『寝てるなら、起きてよ。ちょっと重要な話あるんだけど!!』
「どうせ、大したこと無いんだろ」
『会ってから言うからね』
「えーー、会うなんて一言も言ってないし」
『大丈夫、追いかけるから』
(また出た。望美のストーカー気質か)
碧央は断ろうとすると、電話はプチッと切れた。なんでタイミングよく、切れるのか。わかってて切ったんだろうと想像する。ため息を漏らして、玄関で靴を履いていいると、今度は結愛から電話が入っていた。
「何したん? 今、家出るよー」
『碧央、おはよう。ごめんね、寝坊したぁ。一緒に行く約束してたけど、先に行ってて』
「…………」
碧央は一緒に大学行けないことにご不満だったため、口をとんがらせて、息を吹く。本日、2回目のため息だ。
「俺、行くよ」
『え?』
「遅刻しても、結愛と一緒に行く」
『同じ講義受けるわけじゃないのに? 一緒の時もあるけどさ』
「……一緒じゃないとやだ」
子供のようにわがまま言う碧央の声を電話越しに聴いて、結愛の胸がぎゅっと締め付けられた。
『わかった。んじゃ、家来て。一緒に行こう』
「それなら、いいよ」
突然、気持ちが切り替わったようで、鼻歌を歌う碧央に結愛は笑った。電話を終えて、玄関ドアのかぎをしっかりと閉めた。無意識にスキップしていた。今日は何だかいいことがありそうだとご機嫌になった。
結愛も目覚まし時計のスイッチを無意識にとめて、寝過ごしたことが逆にラッキーだったことに口角が自然とあがる。
ハッと、体を起こそうとしたときに、突然口の中が気持ち悪くなった。トイレにかけこんで、口の中をすっきりさせようと、出そうとするが、食べ物は何も出てこない。よだれだけが出てきた。
これはなんだと頭に疑問符を浮かべた。
部屋の外からは踏切の音がカンカンと鳴り響くのが聞こえてきた。
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