第26話 高校の同級会でなぜか関係ない人が来る
結愛に電話する前夜のこと。
碧央は、高校の同窓会に無理やり誘われて、参加することになった。小規模の人数だったが、会う人会う人過去にいろいろあった女子ばかり。背中に冷や汗が出て止まらない。隣には事情をよく知る義春、三郎がいた。テーブルの上に乗ったオードブルに夢中でお酒をガブガブ飲んでいた。
「お前らは俺の事情知ってて、その態度かよ」
「は? 何のことかな。いやあ、もう、この唐揚げ最高! こっちはちょっとスパイシー」
「マジか。こっちのローストビーフとマルゲリータもいけるぞ」
碧央は、食事に夢中な2人に呆れてしまう。周りの痛い視線が気になって食事どころではない。
「ねえ、あそこにいるの碧央じゃない? よくものうのうとここに顔出せたよね。女子みんな敵みたいなもんでしょ」
「あ、そうだね。でも、私は関係ないしぃ」
「あれ、由香里って、碧央と接点ない?」
仁美がカクテルを飲みながら話す。由香里はシーザーサラダをバクバク食べた。
「うん。全然」
「あ、由香里って喘息持ちで学校休みがちだもんね。あの朝月碧央って言ったらみんなの王子様的な存在かと思ったらさ、途中から全女子の敵みたいな流れになったんだよね」
「え、そうなの?」
「なんで、そうなったかはわからないけど、顔だけは良いのよ。あいつ。黙っておけばそれなりにモテるのにさ、もったいないよね」
仁美が小鉢に入ったモツ煮を食べていると目の前にその碧央が座った。
「う、うわっ」
「人を妖怪かお化けみたいな反応しないでくれる? 顔はいいんでしょ?? 齋藤仁美さん?」
碧央は皿に乗っていたフライドポテトをパクッと食べた。結愛のファストフードのポテトの方が上手いなと思いながら、確かめる。
「な?! 名前、覚えてたの?」
「もちろん。ベタな体育館裏で告白してきたの覚えてるよ。あの時はお相手できなくてマジでごめんね。一つ上の先輩と付き合ってたから断れなくて、君に乗り換えても良かったんだけどさー。申し訳ない」
「…………」
由香里は人見知りで話せなくなる。仁美は恥ずかしい過去を言われて顔を真っ赤して怒っていた。
「そ、そういう話するから嫌われるのよ。その情報言わなくていいし!!」
「え、そう? なら、話さないけど。……君って無口だね。俺の彼女に似てるわ」
由香里はクールですかしてるところが結愛にどこか似ていた。
「それ、口説き文句??」
「違うよ。あ、やべ……噂をすれば。ちょっと隠れていい?」
碧央は会いたくない人がお店の中に入ってきたようで由香里の後ろに移動して段差になっているテーブルの下に潜ろうとした。
「あ……」
由香里は何かを言いかけた。
「ねー、朝月碧央っている?」
高校の時付き合っていた一つ上の先輩、佐々木望美が、誰かに呼ばれたのか碧央を探している。
「あ、あそこにいますよ」
喋り出したのは義春だった。先輩を呼び出した本人だ。過去に色々あった義春は碧央にトラップを仕掛けた。あまりにも結愛とのラブラブなところを見せつけられて、ドロドロ要素を見たくなった。
(あ、あいつーーー)
テーブルの下で,こぶしを作る。
「碧央、出ておいでー」
「あ、こっちですよ」
仁美が指差して場所を教えている。ぺこりとお辞儀をして、碧央に近づく望美だ。
「みーつーけーた」
「かくれんぼじゃないって」
「積もる話もあるから、おいで!」
「俺はペットか」
良いように振り回されて、ストーカー気質の望美に逆らうことはできなかった。別れる時も苦労した。碧央よりもカッコいい彼氏が現れたとして、結果オーライだったが、振られてすぐにやってくる。大学に行くと少し音信不通になって安心していたところにこのありさま。逃げ出せない現状に苦虫をつぶす。
「行ってらっしゃい」
義春はニコニコと笑って手を振っている。碧央の腕を望美にしっかりつかまれて、ざわざわする店を後にした。
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