第25話 ちょっとした心境の変化
とある休日の朝、日差しが眩しくベッドに差し込んだ。
今日は何の予定を入れていない。
結愛は、起きてすぐにスマホ画面を見た。碧央に急に撮られたデートでのツーショット写真を見て笑っていた。食べていたサンドイッチのマヨネーズがほっぺたについたままになっている。全然、鏡を見ないで撮られたシーンのため、変顔だった。そんな変な顔をしても一緒にいてリラックスできるのは碧央くらい。他の男性といるときは、顔がこわばるくらい緊張していた。笑顔が笑顔じゃなかったかもしれない。もう、自分じゃない自分になるのはやめようかと、マッチングアプリをアンインストールしようとした。消す直前に通知はピコンとなる。太客の坂本敏彦からのメッセージだった。かなりの高額を提示してきて、今すぐ会いたいという言葉が記してあった。結愛は少しだけ思いとどまったが、すぐに碧央からの着信が入った。どうするかと考える暇もなく、2コールで出る。
「はい?」
『結愛~、ねぇーー、結愛~……ぐぅ……』
寝言のようなの碧央の声。優しくて低くくて聞き心地の良い。ずっとそのまま聞いていたい。今すぐ会いたい。でも会えないなと思うと、無意識に涙が出た。
「碧央、何してるの? 寝言?」
『違うよぉ~……今飲んでるのぉ……』
深酒しすぎたようで酔っ払っている。碧央は、酔いながらも結愛に電話した。
「どこにいたの?」
『今? へへへ……わからない? たは!』
わけわからない言葉に呆れながら、口角がゆがむ。
『碧央! 誰に電話してるの? もぉ、誰よ。結愛って、今は私と一緒にいるんでしょ?!……ブチ』
碧央の声かと思ったら、甲高い声の女性に切り替わった。結愛という名前がスマホに表示されてるのを見たのか、女だと知ると、ブチと電話を切られた。碧央の隣にいるのは女性だった。一体どこにいるのだろう。しかも一緒にいるから彼女に電話するなってどういうことなのだろうといろんなことを想像する。初めて、碧央が他の女の人にとられたくないと思った結愛だった。場所を聞くことなく、電話が切れたが、いても経ってもいられなくて、部屋を飛び出した。スマホと自宅の鍵、財布だけ持って、身軽な恰好。おしゃれひとつもしてない。こんな恰好見せたことないかもしれない。でも、今はただ、碧央に会いたいそれだけだった。
朝日がさんさんと照らしている東の方へ走り出す。朝からお酒を飲む関係ってやっぱりもう一人の彼女かでも電話してきたのは自分だと、一喜一憂しながら足を進めるが、心中穏やかではなかった。
鳩が路上をえさを求めて、ぽぽっと鳴きながら散歩していた。
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