第17話 それでもシェアしたい
バイト先のファストフード店で結愛は今日は休みだったが、碧央と一緒に向かい合わせにハンバーガーセットを頼んでいた。ざわつく店内で2人はポテトのLサイズをシェアしていた。碧央の注文したハンバーガーセットのサイドメニューは、白い肌にニキビが出るからとサラダセットにしていたが、結局結愛のポテトに手を伸ばす。どっちが女子なのかわからなくなる。結愛はどんなにたくさん食べても太らない体質のようでうらやましく思った。
「もっと食べていいよ。お腹空いているんでしょう」
「あと1本だけ。せっかく腹筋で作ったお腹が台無しになるからさ」
「そう言いながら、また手が伸びてますよ。何故か知らないけど、足も伸びてるけど……」
結愛は足元を見ると、碧央の足が結愛の靴にくねくねと動いていた。
「片時も離れたくないもんねぇ」
「……足くっつけなくてもよくない? 隣にいるでしょう」
「……俺、まともに付き合ったことなくてさ。どうやって、接すればいいの?」
結愛は開いた口がふさがらない。いつも女に苦労したことがない碧央の口から言う言葉かと信じられなかった。
「嘘を言わないでよ。噂は聞いてるよ? 大学の美人という美人を食い散らかしたえげつない男だって」
「は? 嘘だよ。そんなの。外野を信じちゃうの? 俺より噂の方を?」
猫の目のようにキラキラとさせて結愛を見る。信じられるはずがないが、その場に合わせて適当に交わす。
「まぁ、半分聞いて半分聞き流すね」
「……絶対信じてないねぇ」
「さーてね。このハンバーガー食べたら出ようよ」
「俺の話はスルーなの? そして、どうしてそわそわ?」
「…………」
さっきからモジモジなのかそわそわなのか結愛の行動が落ち着かなかった。
「トイレ?」
「違うよぉ。ここ、バイト先だから早く出たいだけ」
「あー、先輩に俺とのラブラブを見せたいってことね」
そう言いながら、肩を組んで結愛のバイト仲間にみせびらかそうとしたが、結愛の強烈なパンチをお見舞いすることとなる。
「いたたたた……」
ファストフード店の外にあったベンチで頬をおさえながら、たまたま持っていた保冷剤で冷やしているとそれでもにやにやと笑いがとまらない。結愛はため息をつく。
「自業自得だよ。やめてって言ってるのに、やめないから」
「痛いけど、嬉しい」
「はぁ?」
「……つい数日前は全然会話なんてしてないしさ。こうやって、話せるなんて俺は幸せ者なり」
「なり? どこぞのキャラクター?」
「著作権違反でそれは言えません」
「急に法律の話?」
「……まぁ、俺は皮膚丈夫だから気にするなって。んで? どこ行くんだっけ」
「買い物だよ。ずっと使ってたスマホリングが調子悪くてさ。買い換えようと思っていた」
指パッチンを鳴らして、スマホリングを指さした。
「俺、それ使ってなかった。そしたらさ、お揃いにしようよ」
「お揃い?」
「ペアルックみたいな?」
「古いなぁ……」
「結愛といっしょのもの持てるなんて、失神並みじゃね?」
「…………やっぱそろえるのやめようかな」
「やめるなよぉ」
そんな話をしつつ、結愛は碧央の腕にしがみついて街中に繰り出して行った。
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