第12話 安定しない日々


 碧央は、本来ならば、結愛と一緒に過ごしたいという気持ちがあったが、嫌われたらどうしようという気持ちが強く出て、通常の女子との接し方ができなかった。ガードがかたいっていうのは知っている。でも、その壁をぶち壊して、本当に必要な人を思われるくらいになりたいとそう思っていた。

 頭の片隅に結愛の存在はあったが、結局は言い寄られた女子とともに過ごす時間が多かった。名前を覚えられないのに、話しかけてくれる。いい言葉をかけてくれる。そんな甘い誘惑に負けて、相手に合わせて行動する。ずるい考え方だ。本命は脳内に揺れ動き、キープで心のオアシスはつかんでおく。好きだと言われ続けてるのなら、そのまま活かす。飽きられたら、別な子を受けいれるだけだ。

 寂しくて、心の穴を埋めたくて片時も人肌から離れたくない。良い顔して、恨まれない生き方をすり抜けているが、結局はどんなにかっこよくても付き合ってみたらいやだという女もいる。見た目で判断するから悪いと人のせいにする。自分から好きになれない女は名前も覚えられない。なんとなく、感覚で生きている。あだ名や苗字で呼んで適当にごまかしている。いつになったら、心が満タンに満たされるのかと夢見て過ごす。それで1日終わってしまうんだ。



◇◇◇



 クラクションが鳴り響く、街の喧騒の中、大学で声をかけられたサークルの先輩とともに交差点を腕をつかまれながら歩いていた。交際しているつもりはなかった。ただ一緒にいて、少しだけ隣にいるだけで心地よくて、たまたま一緒の目的があったからだった。クレープが好きだから一緒に食べに行こというただそれだけの目的だった。


「碧央は、何の飲み物が好きなの?」

「俺は、何でも飲めるけど、あえてコレと言ったら、コーラ。炭酸系かな」


 碧央は人によって、好きな物を合わせている時があった。健康志向の人にはお茶と言い、何でも食べる人にはジュースやお酒と言ったりする。大学生でも20歳は超えているから飲み会も時々参加している。


「そうなんだ。私もジュース色々飲むけど、レモンの炭酸ジュース飲むよ」

「キリンレモンとか?」

「あーー、知ってる。美味しいよね」


 そんな雑談を繰り広げながら、クレープ屋をめざしていると、道路の反対側に結愛がこちらを向いて、歩いているのが見えた。自分に興味持ち始めたのかと自意識過剰

な気持ちになりつつ、隣にいた彼女をよそに、横断歩道を走って渡ろうとした。



 数分後、悲鳴が響いた。


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