10.エンジェルvsダイヤ

第10話

中華料理店、ユーリンチーの外で、ダイヤの放出したエネルギーが巨大な怪物になりました。

「ええ、ウソでしょ……。ダイヤがあそこまでしちゃうなんて……」

 りこは目をギュッとつむって、

「すごいじゃないのー!!」

 感激しました。三銃士と三人娘たちは、ズコーッと倒れました。

「どういう原理でそうなったのか、調べなくちゃ! とりあえずとりあえず!」

 興奮するりこ。

「いやまずは元の姿に戻すことが先だろ!」

 まきがツッコみました。

「怪獣のような姿になってしまいましたわね……」

「はい……」

 見上げるみきとゆき。

「どうするアルか?」

「いや、どうするもこうするも。リンにはどうすることもできないわよ」

「チーもよくわからないのだ」

「とにかく! ダイヤ、今すぐ研究所に戻りましょ? なぜあなたがそうなったのか、調べさせてもらうわよ!」

 りこが意気込むと。

「うるさい!!」

 巨大な手から、ビームを放ってきました。

 間一髪。まきが出した光の剣でガードできました。

「ダイヤ! なんてことをするんだ!」

 まきが怒鳴る。

「どいつもこいつも、皆殺しだあ!」

 怪物と化したダイヤが叫ぶ。すると、白い光が発光し、徐々にグラマーな女性の姿へと変ぼうしました。

「おお!」

 声を上げる三銃士と三人娘たち。

「ふん。あんたたち全員あたいがしばいてやるから」

 大人っぽくなったダイヤが、上から目線で見つめてきました。

「あ、あれほど子供らしかった見た目が……」

 目を丸くするみき。

「こうもすぐ変ぼうするアルか!?」

 目を丸くするユー。

「ダイヤちゃん。かっこいいですよすごく」

「え? そ、そうかしら?」

 ゆきにほめられ照れるダイヤ。

「ね、りこさんもそう思わ……」

 ゆきが話しかけると、りこは先ほどのビームで驚きすぎて、失神していました。

「や、やっぱりあたいのことどうでもいいと思ってるんだ!」

 怒りで震えるダイヤ。

「あんたら全員殺す!」

 左手を掲げると、ビームの連弾を放ちました。

 続いて背中に黒い羽を広げて、ビルより高く飛び上がり、左手、右手からそれぞれ光球を放ちました。すると、ニキロ先の場所で建物が爆破しました。突然の爆破と火災で逃げ惑う人たち。

「はあっ!」

 光球をどんどん放っていくダイヤ。街は一瞬にして、火の海となりました。

「次へ参るといきましょ」

 そこへ。

「待ちなさい! 今度はわたくしたちが相手ですわよ?」

 20三銃士が立ちはだかりました。光の剣に乗ったゆきと、ほうきに乗ったみき、その後ろにゆきが乗っていました。

「ユーたちのことも忘れないでほしいアルね!」

 中華三人娘は、ビルの屋上にいました。ユーが中国刀を持ち、リンはカンフーのようにかまえ、チーは大道芸で使うジャグリングのピンを持っていました。

「あんたそれでどう戦うのよ?」

 と、リン。

「わからないけど持っているのだ!」

「わかったわ。勝負よ娘っ子ども!」

 ダイヤはまず、まきに攻撃を仕掛けてきました。まきは、剣を使ってダメージを与えないようにガードをしますが、彼女のくり出すストーレートパンチやキックの勢いが強く、とても歯が立ちそうにありませんでした。

 みきが魔法ビームをお見舞いしました。しかし、黒い羽から出すバリアではね返されてしまいました。二キロ先まで爆破できる光球をお返しされました。

「えい!」

 スキを狙って、ゆきが手裏剣を投げました。ダイヤは指二本でキャッチしてしまいました。

「あたいに勝とうなんて、百万光年早いのよ」

 手裏剣を投げ返しました。まきが剣で打ち返しました。

「ダイヤ、落ち着くんだ! なぜそんな姿になったんだ!」

「あんたたちさえいなくなればいいのよ!」

 ストーレートキックを放つ。まきは剣でガード。

「な、なんでいなくならなくちゃいけないの!」

「あたいは悪いエネルギーでできた存在。だから、りこはあたいを捨てて、あんたらと、いいエネルギーで作ったアンドロイドたちばかり相手にした」

「え?」

「これまで、あたいだってせいいっぱいやってきたのに! なのに、結局その正義の武器掲げてるのがいいんじゃん! 」

 圧を発し、まきが吹っ飛ぶ。みきがほうきで助けました。

「ユーたちも相手にしろー!」

 なにも知らない中華三人娘たちが、文句を垂れている。ダイヤはカチンと来て、指からビームを放ちました。

 すると、中華三人娘たちは、電源が切れたのか、その場で倒れてしまいました。

「おーほっほっほ! 今のあたいは、他のエネルギーを吸い取ることだって造作もないのよ?」

 両手を広げて、ビルや電車、車、ゲーム機など、さまざまな機械からエネルギーを吸い取りました。

「ああ! 力がみなぎってくるのがわかる……」

「つまり、ダイヤちゃんは他の機器のエネルギーを吸い取って、パワーにしているわけですよね?」

「ゆきさん。そういうことですわね」

「じゃあ僕たちは一体、どう立ち向かえばいいんだ!」

 エネルギーを吸い取ったダイヤは、グラマーな見た目から今度は紫色に光った、超巨大なダイヤまんまの姿に変わりました。

「もっとイアを評価しなさーい!」

 承認欲求が頂点に達して、SNSモンスターになったイアが現れました。

「酒くれ酒ーっ!」

 マドンナでいることに疲れて、おやじっぽくなったありさが現れました。

「歌舞伎モンスター見参〜!」

 歌舞伎モンスターと化したせいじが現れました。

 他にも、さまざまなモンスター化した人たちが大暴れしていました。

「どういうことなんだ!?」

「多分これはつまり、怪物になったダイヤさんが放つ悪いオーラが、彼らの不満や悩みを吸収して、モンスター化しているのですわ」

「あたしたち、全部に立ち向かわないといけないってこと? 無理ですよ〜!」

「いけませんゆきさん! ここで怖気づいては!」

「あたしには無理です! とりあえず避難できるところを探して……」

 ゆきの元に、ダイヤが放つ悪いオーラが吸収されました。

 そして、目をキッとさせ。

「おうおうおう! みーんな怪物になってんだっ。てめえらもヒーロー気取ってねえで、さっさとこの場をドロンしな!」

 と言って、ゆきは本当にドロンしました。

「なんてことだ……」

 ふと、横を見ました。みきがいません。

「みき? みき!」

 探しました。

「マホマホ〜!」

 みきは、今にも崩れ落ちそうなビルの屋上でふわふわしていました。

「みき! あんたなにやってんの!」

「マホ? マホマホ?」

「はあ? も、もしかして……。魔法が使えなくなって精神的におかしくなってた時の様子になってるんじゃ!」

「マホマホ!」

「恐るべし悪いオーラ!」

 街中が悪いオーラにやられ、モンスターになっていました。酒を飲みまくり暴れるサラリーマン、おならをしながらウサギ跳びをする女子高生、おもちゃの車にまたがって遊ぶ主婦たち。

「さあ! あんたもモンスターにおなり! おーほっほっほ!」

 超巨大なダイヤが笑いました。まきはビルより高く浮く光の剣の上で佇みながら、街の様子を見下ろしました。街の人達が好き放題暴れる、その中にみきとゆきまで参戦する。ビルの屋上では、電源が切れた中華三人娘たちが人形のように横たわっている。りこが、路地裏で気絶している。

「わああああ!!」

 まきが叫んだ。すると、彼女の元に稲妻が降ってきました。まばゆい光が、超巨大なダイヤと、モンスター化した人たちを刺激する。


 目を覚ますと、真っ白な光の中で横たわっていました。

「あ ?ここは、前にも見たような景色だな……」

 体を起こすまき。

「久しぶりね」

「うわっ! だ、誰だ君は!」

 目の前に、金髪で白いワンピースと白い羽を身に付けた天使のような女の子が現れました。

「あらあら。エンジェルのことご存知なくて? エンジェルは、光の剣の使いよ」

「エンジェル……。光の剣の使い……。まさか、光の剣の使いのエンジェルなのか!?」

「そうだって言ってるでしょ?」

「ウソだあ」

 足をすべらせるエンジェル。

「いやなんでそんなウソつき呼ばわりするのよ! ひどいわ!」

「だって、僕神様はもっとこう白髪で白ひげ生やしてて、おじいさんだと思ってたからさ。君はただの小学生じゃないのか?」

「いや光の剣の使いだっちゅーねん!」

 ツッコみました。

「本当?」

 顔をしかめるまき。

「ほんとだってば! ったく最近の子は神様ってものを信じないから……。光の剣を売って、生活の足しにしようとしてたのは、どこのどいつだっけ?」

 ギクッとなるまき。

「エンジェルの大切な剣をお金にするなんて耐えられないから、稲妻で天罰を下したのよ。普通なら地獄に行くはずだったのよ? でもね、それもかわいそうだから、光の剣を使う勇者として、生き返らせてあげたんじゃない」

「な、なんでそんなこと君が知って……」

「光の剣の使いだからに決まってるでしょ!あんたの家の、先祖から祀られてるね!」

 とりあえず、まきは信じてみることにしました。なぜなら、この光だけの空間に来て、光の剣を手にしたからです。

「それで、この状況はどうしたらいいんだ?」

「今街は大変なことになっている。もうあんたにも誰にもどうすることもできない。そこで、このエンジェルが、あの超巨大な悪魔と、対決してみせるわ!」

 胸をドンと叩きました。

「ゲホッゲホッ!」

 咳込みました。

「じゃあ僕をこんなところに呼ばないで、さっさと出て来ればいいものを」

「あんたには、重大な任務を任せてほしいの」

 エンジェルは、一歩進むと、まきの肩に手を置きました。

「エンジェルをあやつって」

「は?」


「なんだったのかしらあのまばゆい光は……」

 超巨大なダイヤが首を傾げていると。

 もう一度まばゆい光が目の前に現れました。そのまばゆい光は、天使の羽を広げる、黄金の超巨大な神様でした。

「おりゃあああ!!」

 中華三人娘たちが横たわっているビルの屋上で、まきが黄金の光を放つ光の剣を振るっていました。

「超巨大な醜い悪魔。エンジェルと勝負よ!」

「まぶしいのよあんた!」

 双方は、手を掴み合い、とっくみあいを始めました。

「はあああ!!」

 超巨大なダイヤが、手から光球を放ちました。超巨大なエンジェルは、それをバリアしました。

 流れ弾を撃ち続ける超巨大なダイヤ。それを払うようにはね返す超巨大なエンジェル。

「今度はこちらからいきます!」

 超巨大なエンジェルは両手で円を描いて、そこから輪の形をした光線を放ちました。両腕でガードしていた超巨大なダイヤ。しかし光線の勢いが強いのか、すぐ吹き飛んでしまいました。

「光の矢!」

 人差し指を掲げ、天から光の矢を落とす超巨大なエンジェル。超巨大なダイヤは避けました。

「これでどうだ!」

 超巨大なダイヤはパワーを込め、クロスした両手から光線を放ちました。超巨大なエンジェルには、避けられてしまいました。

「とどめよ!」

 超巨大なエンジェルは、ジャンプして飛び、そのまま超巨大なダイヤに突進していきました。まばゆい光の爆発が起きました。


「あれ? 俺何をしてたんだっけ?」

 街の人達が正気に戻りました。

「あら?」

「あたしは一体?」

 みきとゆきも戻りました。

「はっ!」

 りこも目を覚ましました。

「ダイヤ……。ダイヤは!」

 すぐにダイヤの元へ向かいました。

 ダイヤとエンジェルは、ビルの屋上にいました。二人とも向き合い、佇んでいました。ダイヤはグラマーな姿になっていました。

「この分だと、あたいはまだエネルギーが物足りてるようね」

「そのようね。ま、それはエンジェルもだけど」

「いや、あんたはもう十分なくなってる感じがするけど……」

 と、まき。それもそのはず、エンジェルも見た目がおばあさんになっているからです。

「エンジェル〜。あんた、おばあちゃんになってんじゃないのよ」

「そう? 人間界での戦闘モードなのよこれ。ちなみに、六十代くらいに設定してあるわ」

「いや、あっちはどう見たって二十代でピチピチだよ? 勝てっこないよ!」

「まあそうあわてなさんな」

「ゲートボール大会やるんじゃないんだよ?スーパーのバーゲンで取り放題やるんじゃないんだよ!」

 まきがあーだこーだ言っていると。六十代のエンジェルは、二の腕の筋肉を見せてきました。とても六十代とは思えない肉体美です。

「グラマーになったあたいは、強いよ?」

 拳をポキポキ鳴らすグラマーなダイヤ。

「カモーン」

 と、手で合図する六十代のエンジェル。

 そして、試合開始のゴングが鳴らされました。

 両者ともストレートパンチとキックを容赦なく振りかける。まきは呆然としました。

 中華三人娘が目を覚ましました。ビルの明かりや車、電車など、いろいろな機械も動き始めました。

「はっ!」

 六十のエンジェルの首にキックをお見舞いするグラマーなダイヤ。しかし、少しも効いてない様子。

 六十のエンジェルはその足を掴み、片手で持ち上げて、振り回しました。その回転スピードがだんだんと早まっていき、彼女たちの姿がわからなくなるくらいになりました。

 そして、ピタッと回転を止めて、床に勢いよくグラマーなダイヤを叩きつけました。

「痛そう……」

 まきは両手で顔を覆いました。

「まき!」

「は、はい?」

「今よ。その光の剣を使って、いつもの浄化をして!」

「え、ええ?」

「いいから! 彼女が弱っている今がチャンスよ!」

「わ、わかったよもう……」

 まきは、光の剣を掲げました。精神を集中させて、光を放ちました。中華三人娘たちは、まじまじと浄化の様子を見ていました。

「こ、ここでくたばるあたいじゃなーい!」

 グラマーなダイヤは体を起こしました。そして、六十のエンジェルを吹き飛ばしました。

「エンジェル!」

 まきは、浄化を止めてしまいました。

「みんないなくなっちゃえ!!」

 襲いかかってくるグラマーなダイヤ。まきは、光の剣で必死にガードしました。

 そこへ、ビームが撃たれました。グラマーなダイヤは肩に傷を受け、押さえました。

「そこまでですわよ! あなたはもう、相当弱っていますから!」

「次はこれをお見舞いしましょうか!」

「みき! ゆき!」

 魔法の杖を掲げるみきと、手裏剣を掲げるゆきがいました。

「ユーたちもお見舞いするアル!」

「やっとこさリンたちの出番ね!」

「出番なのだ!」

 意気込む中華三人娘。

「いいえ! ダイヤは、私が止めるわ!」

 りこが、グラマーなダイヤの前に立ちました。

「ダイヤ、そんな姿になって。すごいよ」

「りこ……」

「私ね、あんたを作る前、お腹の調子が悪かったのよ。画期的なアイデアがほしかったし、ちょうど使えるんじゃないかなって、悪玉菌をエネルギーにしてみたの。そしたら、悪いことしか考えないアンドロイドができちゃった」

 グラマーなダイヤはうつむきました。

「でも。それでもいいんだよ」

「え?」

「悪い子は、悪い子なりに活躍できればいいんだから。いい子ばかりが生きてる世界じゃない。悪い子だって、生きてる世界なんだからさ!」

 ウインクしました。

「りこ……」

 グラマーなダイヤから、元のダイヤに戻りました。

「はい、これでおしまい! 帰ろっか」

 りこは、その場を立ち去ろうとしました。

「いやちょっと待て!」

 20三銃士が引き止めました。

「僕たちの苦労はどうなる!」

「わたくしたちをさんざんな目に遭わせておいて、それだけですの?」

「それはあんまりです!」

「まあまあまあ。なんだかんだで、知能の高いアンドロイドができたから、私としては満足なんだけど」

「よくなーい!!」

 20三銃士は、りこをボコボコにしました。

 気づけば、エンジェルも元の姿に戻っていました。

「やれやれ。人間って、どこまでも勝手な生き物ね」

 ボコボコにされながらりこは怒鳴りました。

「あんたらはそれぞれ科学でもマジックでもない武器があんだろが〜!」

 エンジェルはそっと微笑みました。

「まっでも。それでもうまく世渡りしていけるのも、人間なのよね」

 と言って、羽を広げて、空へと飛んでいきました。


 そして数日経ったあとでも、ダイヤは時折誰かをモンスターにして、街で暴れさせていました。けど大丈夫。20三銃士がすぐにかけつけてくれるから。戦いのあとは、中華三人娘がおいしい中華料理をごちそうしてくれるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

20三銃士 みまちよしお小説課 @shezo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ