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 竜日のことを予言した予言者の情報がちらほらと集まり始めていた。

 絵を描く予言者はいるが、かなり繊細な、本物そっくりの似顔絵を描く予言者は多くない。各所で絵を貰ったという噂を聞いたり、実際に持っている船乗りもいたものの、最近の目撃情報ではなかった。

 丁度、ジャカが竜日の似顔絵を受け取った、半年前くらいからぴたりと情報がなくなっている。

 死んだか、あるいは予言者の国にいるのか、どこかでひっそりと暮らしているのか。

 港だけではなく、探しに出る必要があるのかもしれない。

 まず当たるとしたら予言者の国だ。

 入国できるかどうかは別として、行って見る価値はある。


「いや、リューカさんならたぶん、入れるだろうなァ」


 しかし、入国するということは、予言者を志すということである。人探しで入国する人間はいない。入国し、出国するだけで資格を得る。


「うーん」


 近くまで行くのはいい。国には入らないようにと言うこともできる。ただ、入国した方が良いには決まっている。


「うーん……!」


 予言者の影響力は絶大だ。もし、竜日が軽率に予言の国に入り、資格を得て帰って来たとしたら、今のパワーバランスは崩れてしまうに違いない。ただの気の良い救世主様ではなく、港を守護する予言者様ということになってしまう。竜日は間違いなく大変な力を持った予言者となるだろう。

 宗教化してしまうと怖い。資格を得たことを隠し通すか、顔も名前も隠して旅をさせるしかなくなってしまう。


「いやだからそれはよ」


 竜日としてはなんの問題もないことだ。もしそれで、最人を元の世界に帰す方法が見つかるのなら、喜んで予言者にもなるし、方々で人助けをするだろう。悪いことではない。むしろ良いことだ。この港からいなくなってしまうことを除いて。


「ボス!」

「あ? どうした?」

「今下にマタリ商会のお嬢さんが来てんですが」

「また来たのか。アレ―ン様も一緒かい?」

「いや、一人で」

「一人だあ? なんでまた」

「姐さんに用事だったみたいなんですが、その」

「なんだよ」

「一階で意気投合してて……」

「ええ……?」


 できるだけ様々な選択肢、可能性を考えておきたくてあれこれ準備をしているものの、事前準備などなんの役にも立たないのかもしれない。

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