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 子供はスィスと名乗った。

 適当な食堂に入り、三人でテーブルを囲む。近くの山や草原で酪農をやっているらしい。肉を加工した料理が多い。香草を混ぜた腸詰がをオススメされ、竜日がひと皿ペロリと食べた。


「油が甘い。美味しい」


 トーリもスィスも食べてはいるが、竜日の量には及ばない。


「スィスは? もっと食べてもいいのに」

「俺はいい」

「なら持って帰れるようにする?」

「えっ」

「大丈夫。このお兄ちゃんの奢りだよ」

「……まあ、姐さんがそうするってんなら。止めるな、言うことを聞け、暴走するなとボスから言われてるんでアレですけど」


 スィスはそっと店主の所まで行ってなにかを注文していた。帰りに受け取れるようにしてくれるらしい。スィスはすぐに席に戻ってきた。


「金銭的に無理なことは無理っすからね!」

「後で返すよ。闘技場って稼げるんでしょ」

「戦うわけ?」

「うん、でも。とりあえず今日は見学」

「戦わないんすか!?」

「観るだけっていうのも金がかかるぜ」

「そうなんだ。開くのは夜だっけね? 今日もやってるかな」


 スィスはようやくテーブルの上のパンを手とった。慎重に一口ずつかじっている。


「毎晩やってるよ。入場料をいくらか払えばだれでも入れるし、戦いたければ、どんな奴でも選手になれる」

「一回勝つと賭け金が倍になるんすよね。だから、下手に賭場に行くより儲かるっつう」

「バカ? 元締めの組が奴隷同然で使ってる強い奴出して最終的には総取りするに決まってんじゃん」

「あ!?」

「なるほど」


 トーリはスィスを睨んだが、スィスは意に介さず。今度はスープを飲んでいた。


「それなに?」

「野菜をドロドロに溶かしたスープ……」

「ふうん。よし、私もそれ頼もう」

「姐さんって良く食いますよね……」

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