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 竜日は周囲を見て溜息を吐きそうになる。

 騎士の二人と最人はこの話に前向きである。トーリとカルは困惑していた。

 最人がなにを目指しているのかなんとなくわかってしまう。前の世界でもこの世界でも、やはり彼は國立最人なのである。人の上に立つ人間が持つ、才覚と呼ぶべきものや、運否天賦というようなもの。そこにいるだけで、周りは彼の味方をする。神様に愛されている。

 領主のことは、最人に任せておけばうまくやるだろう。チバン港が抱える問題のほとんども解決するはずだ。それどころか、今よりずっと盤石な基盤が出来上がる。


「そうだな。記憶を失った僕を、今人気のある竜日が助けたことにしましょうか。ビレイ組で保護して貰っていて、そこをお二人が見つけた。――領主とビレイ組は結託しておいて損はないと思います」

「はい。それで構いません」

「ありがとう。デュオさんも構いませんか」

「デュオで結構です。アレ―ン様」

「うん。ありがとう」


 最人は二人が求めるように笑ってみせた。二人の目に涙が滲む。これは、彼が最も得意なことだ。目の前の人間が喜ぶことを、ただ、してみせる。


「竜日」

「なに?」


 やめろ、と言うことはできない。今から最人がやろうとしていることは、町の為になることだ。町の人間、ビレイ組、領主の家に仕える人達を全て救わんと動いている。ように見える。


「竜日は事務所で待っていてくれ。必要があれば会いに行くから」


 ついていくべきかもしれない。隠れてでも傍にいるべき。――それでなにが変わるか。考えたが答えは出なかった。いつも通りだ。わからないことはわからない。わかった時に対処するしかない。


「わかった」

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