13

トーリとカル、ジャカと目を合わせた時。三人ともがまるで自分を知っているかのようだった。

 カルは竜日が現状を打開できると信じており、トーリも『それしかない』と思ったのだろう。ジャカは竜日の顔を見るなり雰囲気を軟化させた。


「だから、私を見た時、なんだか変だったの?」

「変?」

「まるで私を知ってるみたいだった」

「ああ、それは予言者が」

「予言者って?」

「――その予言者はなかなか芸達者で、絵まで寄越してきましてね。ほら、今持ってんですけど」


 分厚い紙に、鉛筆のようなもので絵が描かれている。

 人物画だ。長い髪をひとつに結んで、むっつりと唇を引き結んでいる。前髪の奥から覗く目は異様にギラついていた。

 胸の上あたりまで描かれているが着ている服まで同じなら、体の薄さもそのままだった。


「私だ」

「でしょ?」

「この絵を描いた人は?」

「あの予言者は旅をしてるみたいでしたからねえ。今この港にはいません。三ヶ月くらい前にほんの数日滞在してて……」

「そうなんだ……」

「なにか聞きたいことでも?」

「え」


 聞かれてから、会いたがっていることに気が付いた。


「あー」


 指を立てて斜め上を見る。こういう時、最人であれば流れるようにもっともらしい言葉が出てくるのに。竜日が身体を斜めにすると、ジャカも合わせて斜めになっている。竜日はがくりと肩を落とした。


「……ごめん。うまく説明できない」

「大丈夫大丈夫。奴らはお節介ですからね。必要ならふらっと現れて、聞いてもねえこと言っていくんですから」


 大抵のことを、最人と桃香に任せていた。最人と対立してしまうとなにもできないかもしれない。竜日はますますどうするべきかわからなくなっていく。竜日が落ち込んでいく様子を見て、ジャカが慌てて話題を変える。


「えーっと、そうだ! リューカさんの話が聞きてえな。どうしてあんなに強いんですか?」

「……私は大したことないよ」

「そんなばかな! ひょっとしてリューカさんの故郷ではリューカさんより強い人がゴロゴロいたとか?」

「喧嘩……、殴り合いの喧嘩では負けたことないけど」

「やっぱり」

「強い人はゴロゴロいた。私一人じゃどうにもならないような」


 例えば今の状況だ。唯一本音で話せる相手と意見が対立してしまった。最人を家に帰したいのに、最人は帰りたくないと言う。最人を説得できるとも思えない。竜日もまた最人の言う通りにする気はない。平行線だ。


「……あれは本当に、あれだけの規模で、あれだけの人数で、大した武器がなかったからなんとかなっただけ。ただの暴力で解決出来ることだったから」


 殴り合いの喧嘩では勝てる。だが、最人は、殴り合いの喧嘩で言うことを聞かせられる相手ではない。


「リューカさん」


 ジャカがしゃがんでいるのが見えて、自分が俯いていると気が付いた。


「ほら、見て下さい」

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