11
知らない港でぼんやりと海を眺める。
水平線の向こうには、別の世界があった。
目を閉じると、海鳥の鳴き声と、港で働く人たち声が聞こえている。
明らかに日本ではないのに、聞こえてくるのは耳慣れた言葉だ。港の人達は好意的。なにせこの港を仕切っている男の恩人だ。住むところも用意してくれる。これならば、生きていくことは難しくない。ここで暮らしていくことも出来るだろう。
酒場から近づいてくる足音があった。大柄な男だ。ゆっくりと一歩ずつ距離を詰めて、溝か段差か、なにかを飛び越えるみたいに声をかけてきた。
「なにか、面白いものが見えますか」
手当を終えて、着替えも終えたジャカが立っている。腕や頭に包帯が巻かれているが、シャツの柄が派手で、包帯が霞んで見えた。
「海賊船はどこかへ行ったね」
「ええ。救世主様のおかげです」
「救世主?」
竜日がジャカを見上げると、ジャカはニコリと笑って見せた。
「ああ、私か」
「そうですよ。あなた以外に誰がいるんで?」
愉快そうに笑っている姿を見ながら、マストに磔にされていた時、最初に竜日を睨んだジャカの姿を思い出す。最人もよく顔を使い分けていて、どれが本音かわからないことがある。
「港を散策ですかい? 俺で良ければお供しやすぜ」
「ありがとう。でも、怪我は?」
「大した怪我じゃねえですから。どこか見たいところはありやすか?」
「特には……なにがあるかわからないし……」
「へへ、まあ、なにもねーですけどね」
怪我はひどいはずだ。痛まないはずはない。この人も、どれが本音かわかりにくい。自分の気持ちを隠すことに長けた人なのかもしれない。
「ね。適当に、お喋りでもしながら」
シャツの柄や視線の鋭さに似合わない、気安い様子で笑っている。楽しくて仕方がない、という風で。竜日は結局「じゃあ、お願い」と頷いた。
「よし。じゃあ仮住まいの準備が出来たんで、まずはそこまで案内しますよ」
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