パラレルロリポップ

白雪れもん

第1話

放課後、神崎ユウはいつもの帰り道を歩いていた。退屈な日常に慣れ切っていた彼は、特に何かを期待することもなく、ただ歩くだけだった。


「あーあ、今日もつまらなかったな…」


ため息をつきながら、彼はふと目の前にある駄菓子屋に目を留めた。普段は素通りする店だが、今日はなぜかその扉が気になって仕方がなかった。まるで何かに呼ばれているかのように、ユウは足を店に向ける。


中に入ると、どこか懐かしい甘い香りが漂っていた。棚には色とりどりの駄菓子が並び、少し古びた店内には独特の雰囲気があった。


「いらっしゃい…」


店の奥から、低い声で老婦人が現れた。彼女はユウに優しく微笑みながら、手元にあったカラフルなロリポップを差し出した。


「これ、君にぴったりだよ」


「え?俺に?」


ユウは不思議そうにロリポップを見つめた。透明な包装紙に包まれたそれは、他のどの駄菓子とも違う、異様なほど鮮やかな色をしていた。


「一つだけ、特別なものさ。試してごらん」


老婦人の言葉に半信半疑ながらも、ユウはロリポップを手に取った。家に帰り、何となくそのロリポップを口に含むと、不思議な甘さが広がる。


しかし、次の瞬間――


目の前の景色が急にぐるぐると回り始め、気が遠くなる感覚に襲われた。気が付くと、ユウは見知らぬ場所に立っていた。青空が広がり、花畑の中にポツンと立つ彼の周りには、現実世界とは明らかに異なる空気が漂っている。


「ここ…どこだよ…?」


すると、背後から誰かの声が聞こえた。


「ようこそ、異世界へ。これが君の運命だよ、神崎ユウ。」


振り向くと、そこには白髪の少女が立っていた。彼女の手にも同じロリポップが握られている。そして、その瞳には不思議な輝きが宿っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パラレルロリポップ 白雪れもん @tokiwa7799yanwenri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る