間奏
呪いの終着点
私から始まった呪いのイースターエッグ、振袖火事の怪異。
神社でお焚き上げをしてその怪異は綺麗さっぱりなくなって解決した。あの日、夕闇さんはそう言った。縁野さんの家に怪異が舞い戻っていないかと彼女に聞かれて、私は特に何もないと笑顔で答えた。
そう、嘘をついた。
家に帰った私の机の上には、燃やしたはずのエッグが鎮座していた。しかし、私に呪いが降りかかることはなく、ただ静かに佇んで私を見つめているだけだった。エッグが私の元に戻ってきたことを彼女には言わなかった。今回の事件は、私の意思ではないとはいえ、多くの人間を巻き込み、死に至らしめてしまった罪悪感が救いを求める告白を拒んだ。
私だけが生き残ってしまった。
毎日、学校から家に帰るたび、人に対して想いを寄せてしまったことを糾弾するかのようにじっとこちらを見つめるそれを、私も毎日じっと見つめ返した。罪悪感から目を逸らさぬように。彼らの死から目を逸らさぬように。
いっそのこと私のことも呪い殺せばいい。
そう何度も強く念じたが、期待に反して私に呪いは降りかからなかった。私のことを真の所有者と定めたのだろうか。夕闇さんのように幽霊が視えなければ怪異にも詳しくない私には詳細が分からない。
それなら、私は生き続ける。
そうエッグに向かって心の中で宣言した。
もう、この先ずっと、人を好きにならないという決意を持って。
人に想いを、期待を寄せないこと。
期待と裏切りが表裏一体であるように、想いは呪いへと反転する。
それは小さなきっかけや些細な状況の変化で、いとも簡単に変わってしまう。
そして、その呪いは連鎖していく。
今回のイースターエッグの事件のように。
だから、私はもう人に好意を寄せない。
ずっと昔から脈々と続いてきたあなた、振袖火事の呪いの終着点はここなのよと、寂しく笑いかけると、目の前のエッグも、寂しげに笑い返してくれたような気がした。
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