第72話

        【2】


スウィンが到着するまで、キララ達はそのままコントロールルームに詰めることにした。


スウィンは2時間置きぐらいに通信を寄越した。

時差も少しづつ縮まってくる。

キララは心の中で時差のカウントを切った。


センターからの返信には毎回


「待ってる………」


どだけキララは送った。


夜中になってもスウィンからの通信はほぼ同間隔で届き、センター内でも睡眠をとる者は無く、全員アドレナリンいっぱいで待機していた。


                       


7時過ぎスウィンから


「あと1時間程で大気圏に突入します」


と報告の通信が入った。

時差は殆ど無い。

センターからの返答も普通に届き始める。


ようやく誰もがスウィン帰還の実感を持てるようになった。


                       

「スウィン………おかえり………」


声を詰まらせるキララに


「まだ早いよ(笑)」


とスウィン。


続いてソフィアを先頭に


「おかえり〜!」の大合唱。


船内もセンター内も温かい笑いに満たされた。


                         


                      スウィンは無事戻った。

初ワームホール有人飛行は見事に成功したのだ。


キララとスウィンが抱き合う瞬間は、まるで結婚式のように温かい歓声で沸き返った。


                       

帰還祝いのパーティが予定されていたが、センターの現状からそれどころでは無くなっている。

暗黙の了解でそれらは全て割愛され、任務報告も後回しになった。


スウィンは早速ソフィアと両親、そしてキララを自分の部屋に招集した。


初めてスウィンの部屋を訪ねたキララは、モダンに品良く設えられた趣味の良いインテリアに、スウィンの知性と成熟した精神性を感じてうっとりと見入って居る。


「無事任務を終えました。

その報告は後程ゆっくり。

良いですねソフィア」


勿論もちろんよ。


それじゃ、取り敢えず留守中に起きた事から話すわ」


ソフィアはスウィンの居ない間に起きた事感じた事を、全て丁寧に話した。


続いてキララは、メカネットワークの協力で可能になったと思われるスウィンとの交信に関して説明した。


「なるほど………


ルターの事件以降、まだ連鎖は起きてないんですよね………

ただ、いつ起きても不思議は無い状況…………


                     僕とキララの間にメカ達の壮大なサポートがあったのは確実だと思うよ。


実は、キララと交信する半日くらい前、メカネットワークから僕の頭に直接ビジョンが送られてきたんだ。


それは自らはっきりとメカネットワークからのものだと示していました。


そのビジョンはルター事件の概要でした。

キララからの送信、それと今ソフィアが話してくれた内容とほぼ一致しています。


同時にメカネットワークのメカ達が感じている危機感も伝わってきました。

それもキララとソフィアの話に含まれている危機感とだいたい同じ感覚でした。

不安と恐怖と救いを求めるエネルギーをビンビン感じたよ。

それと『愛』のようなエネルギーも………」


「愛………」


皆一斉に呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る