第73話
【2】
「これは任務報告にもなりますが、今回僕達は本来の任務を逸脱して、可也深いところまで仕事を進めたんです。
セカンドトライで一気にスペースコロニー計画にも入るつもりでね。
単なる実験では無く現実的
アンドロイドを含めるメカ達の動きに不安を禁じ得なかったからですが………
でもあの通信から、まだ余地は有りそうな気もしてるんです。
とは言ってもソフィア、スペースコロニー推進計画はこのまま進めさせてほしいんだ」
「………ん〜……………今はまだはっきり答えられないけど………
移住船だけじゃ不安ではあるわね確かに……
早いに越したことは無いかもしれないのも事実…」
「いずれは必要になるわけだし………」
「まぁね。
だけどこんな近未来にとは考えていなかったわ(笑)………」
「まっ、計画を進めたところですぐ作れるわけじゃ無いし、もっともっと入り込んだ探索と研究も積み重ねる必要がある。
僕等の時代で成功する筈も無いけど、次世代の為にも早々に始めた方が良さそうだと思わないか?」
「分かったわ。少し考えさせて」
「お願いします。
それと、もし可能であればセカンドトライも早めたいんですけど………」
「それは私も考えていたの。
スウィンと他のメンバー達の調整が大丈夫ならそうした方が良いと思うわ。
ただ、メカ達の動きにもよるわね。
少し様子を見ましょ。
アンドロイド達とももっと話すべきだし」
「はい、アンドロイドルームの彼等も既に起動しているということらしいですし、皆と話し合いましょう。 メカ人達とも……」
「ところでスウィン、今回の船は時間調整の機能を使ったわけだけど、機能をOFFにして船をタイムスリップ用に使う手段も想定してるんでしょ」
本来、高速に近いスピードで移動すれば、船の中は当然時間の流れが遅くなり、船が地球へ戻る頃には可也の時間差を生じる。
今回スウィンが開発した船は、ワームホールを自力で造り出す機能に加え、船内の時間を調整して、地球とは低速移動時の通常レベル時間差で済ませる機能も搭載されていた。
その機能を使わずに今回の任務を遂行して戻れば、地球は何年か未来になっていたわけで、船が未来へのタイムマシンとなった筈なのだ。
また、スウィンは同時に、ワームホールの入り口と出口を移動して時間や年代も自由に選択できる機能構築にも着手し始めていた。
つまりタイムマシンそのものを造ろうとしていた。
「はい。
今回のように、こちらとの時間差を少なくしなければならない場合は使いすが、例えば地球にのっぴきならない事態が生じた時などには数日何処かを高速飛行し続けて、地球が落ち着いた頃の何年か何十年か未来に戻るという対策法も視野に入れています。
その対策法に付随するものとしても各方面多数のスペースコロニーは必須です。
過去に行く機能は多くの難しい問題がクリア出来ていませんから、今の僕には無理かもしれません。
過去行きの選択をする場合の様々なパラドックスに対応出来る倫理観や哲学的な問題も、まだまだ考える余地は山程有るし。
過去に関わるということは、人類だけでは無く地球の、そして宇宙そのものの歴史に関わることですからね。
考えても結論が出せない問題も山積みだから、今の時点では過去行きのタイムマシンを造る気はありませんが………」
翌日、ルターの葬儀が行われた。
同類のメカ人達が動揺していないかスウィンもソフィアも冷静に観察した。
キララは、体内メカ達の熱い負のエネルギーを感じていた。
彼等に比べ、宿主である人間達の冷徹な程に冷めた感覚がとても気になっていた。
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