第71話
【2】
それから3時間程して3度目の通信がスウィンから届いた。
始めはセンターから送った歓声とキララの『待ってる』通信への返事だった。
一通りの挨拶の後すぐ、キララに向けた言葉が加えられていた。
「キララ……… 相変わらず『星のきらめき』は美しいよ………
帰還したらじっくり話したい。
君のことやお友達のことももっと知りたいな。
もうすぐ会えるよ………
僕も最後のひと頑張りだ! 君もね………
最後まで『星のきらめき』は美しい!」
キララが情報を送って、それがスウィンに届いた頃、その3時間前に送ったセンター通信も届いたようだ。
スウィンとキララの間には時間差が無い。
しかも全て届いていた。
『友達』と『最後まで星のきらめきは美しい』が含まれていたのだから。
キララの様子を見ていたソフィアは、通信が終わると自分の部屋へキララを誘った。
「キララ………私にだけは話してくれる?」
キララは流石ソフィアだと感心した。
「お見通しね……… ソフィアに隠し事は出来ない………
………スウィンと直接通じ合えるみたいなの」
「テレパシー?」
「いえ、テレパシーとは違うと思う。
地球上のメカネットワークに入っているメカ達が、壮大な通信機となって私とスウィンの間を繋いでくれるらしいの。
はっきり分からないんだけど、試しにそのビジョンを想定してこちらから送ってみたら届いたみたいなの。
その時に世界の様々なメカが私に集中して作動する実感があったわ。
スウィンの通信にも、私への返答を示唆するものが確かな形で入っていた。
私も初めてのことで、まだ困惑しているところよ。
スウィンとだけじゃ無いかもしれないし……
でも、究極の場合にしか使えないものだということは直感的に分かる。
何しろ、世界中のメカを総動員するわけだものね………
その間メカ達が地球上ではどうなっているのか、調査する必要があるかも………
だからスウィンが戻る迄はこの程度しか話せないわ」
「なるほど………
センター内だけでもそれとなく調査するわ。
スウィンと通信している間、キララには苦痛とか無いの?」
「えぇ、全く。
ただ、今まではメカからのアプローチを受け入れるだけに
「受け取る方はどうなんだろう………?
何もかもスウィン待ちね………」
「メカ達が『反乱』を企てているとしても企てていないとしても、私との繋がりを確実に肯定いているのは事実だし、私に何らかの協力を望んでいる可能性も有るわ。
今は彼等の動向を見ながら、冷静に対応しなきゃね。
私達が具体的に『反乱』と言う言葉を表層化することが、彼等の『反乱』を誘発する起爆剤にならないよう、今後この言葉は一切使わないことにするわ。
口に出さないのは勿論、考えることもやめる!
私はメカと繋がっているんだものね………
実際何処までの繋がりなのか全く分からないけれど、私の方からアプローチしたことでメカとのいろんなリンクが生まれた可能性もあるし………」
「確かにそうね………」
キララとソフィアは可能な限り行動を共にして、世間話に花を咲かせた。
余計なことを考えないようにするためである。
アーロン博士とエレナ博士も誘って夕食をとり、その後もカフェで寛いだ。
両博士には、スウィンが戻り次第スウィンと一緒に聞いて頂きたい事が有るが、今は訳有ってキララがその件について話すことも考えることも避けなければならないので、協力してほしいと頼んだ。
コントロールルームでキララの様子を見ていた両博士は、『分かってるよ』というように細かく頷いた。
カフェで隣り合ったボックスシートで、数人のスタッフがヒソヒソと話す声が断片的に聞こえてくる。
キララ達は一斉に話をやめ、素知らぬふりで聞き耳を立てた。
「彼、珍しく忘れてるみたいなの」
「彼女もあの時間の事だけ曖昧なのよ。
初めてよ。
メカ人でもそんな事が有るんだって妙に感心しちゃったわ(笑)
あんまり完璧じゃ、もはや人間とは言い難いもんね(笑)」
「確かに。
スウィンの成功に感動してポーッとしてたとか?(笑)」
「ってか、キャプテンスウィンの声にうっとり(笑)」
「彼女はそうかもしれないけど彼も?(笑)」
その後は爆笑の渦で会話が分別出来なくなったが、キララとソフィアは納得して頷き合った。
メカ人のメカがキララ通信に参加している間、宿主にどんな影響を及ぼしていたか分かったからだ。
「スウィンが戻ったら忙しくなりそうね」
敏感なエレナ博士が意味深にそう言って皆に目配せした。
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