第68話

        【2】


「ポロン……… 私がメカ達と繋がっている理由は分かる?」


キララが唐突に聞いた。


ポロンの方に顔を向けながら隣りに居るソフィアを意識しているキララの心を感じて、ソフィアはポーカーフェイスを通した。


ポロンもそんな二人の空気を察知して


「いえ、分かりません」


と言い切り、キララとソフィアに気づかれない速さで二人の顔を盗み見た。


その後は、ルターの件で次々とソフィアに連絡が入り、最後の連絡でソフィアは再び現場に戻った。


残されたアンドロイド達とキララは、無言のまま時間だけつらつらと流れていった。


                       いつの間にかキララは眠っていた。


「キララ………キララ………」


混沌の中で呼ぶ、孤独に満ちた声………


キララはハッとして目を覚ました。


「誰?」


傍でアンドロイド達がフリーズしたように静止している。


ーーーーーアンドロイドでも無い、ソフィアも居ない、夢だったのだろうか………ーーーーー


声の主は、キララに助けを求めているようでもあったが、別れを告げているようでもあった………


おもむろに時計を見ると、既に夜は明けて6時になっいる。


ーーーーーソフィアは徹夜だったのか………ーーーーー


顔を洗おうと立ち上がると、キララの肩から毛布がハラリと落ちた。


ーーーーーアンドロイド達が掛けてくれたんだわーーーーー


キララは、何の役にも立たないと知りながら、毛布をケンタウルスとパンに掛けた。

ケンタウルスの瞳に微笑みが浮かび、キララにウィンクを投げてよこした。


ポロンにはキララのハンカチを掛けてやった。

ポロンはハンカチを胸元でしっかり合わせ、顔の下半分を埋めて嬉しそうに微笑んだ。


キララは冷たい水で顔を洗い、鏡の中の自分をシゲシゲと眺めた。


テーブルに腕枕で寝ていたせいで、左の頬に袖の皺痕が付いている。


ーーーーー私は人間?……………ーーーーー


                       

キララは、モーニングコーヒーを入れると壁に向かって声をかけた。


「ウォール! 外が見たいわ」


壁はジワジワと色が薄れていき、数秒後透明な窓になった。


未だ広々とした荒野の先にアンデス山脈が連なっている。

ふと、この角度から見える筈の無いアルマ望遠鏡が見えた気がした。


ーーーーー其処に有ることを知っているからの錯覚だろうか?

でなければ透視能力が生まれた?

それとも………ーーーーー


旅での経験を考えれば、メカである望遠鏡がキララと繋がっても不思議では無い。


「アナタは何を言いたいの?………


もしかして私が自然を怖がらないようアナタの存在を私に伝えてくれてるの?」


コトリと音がしてキララが振り向くと、ソフィアが抜き足差し足で入ってきたところだった。


「あぁ、キララ起きてたのね」


「ソフィア………お疲れ様………疲れたでしょう………」


「………やっと落ち着いたわ………

今チップの残骸を詳しく調べてもらってる。

やっぱり自滅で宿主の暴走を止めた可能性が色濃いようだわ………


キララ、外を見るなんて珍しいじゃない。 大丈夫なの?」


キララを気遣うソフィアの方が心配になる程、ソフィアの目の下に出来たくまは濃くなっている。


「えぇ、今のところは………


此処からはアロマ望遠鏡見えないわよね………」


「そうね。

エレナ博士のラボからなら僅かに見える筈よ。


見たいの?」


「いえ。

私が山や荒野を見ていても何とも無いことが不思議で………」


「確かに………」


ソフィアは暫くキララと並んで景色に見入っていたが、急に『分からない』とでも言いたげにキララの肩をポンポンと叩き、コーヒーコーヒーと呟きながらキッチンへ行った。


「予定通りならあと3時間くらいでスウィンからの通信が入るわ!


その前に食事しちゃぃしょキララ」


「そうだ! 明日の午前中にはスウィンに会えるんだわ!


いろんな事だらけで、あっと言う間だった。


そう!そうよ! スウィンが帰ってくる!」


「まぁまぁ御馳走さま! 良かったね、あっと言う間で」


「お食事に行きましょ!」


「なんて現金な!(笑)」

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