第58話

        【2】


キララは自分の部屋に帰った。


ドアが開くと、いきなりポロンか其処に居た。


「キララ!」


ポロンは活き活きとした瞳でキララを見つめる。


「ポロン! ただまいま!」


キララは、アンドロイド達にキララからの積極的な繋がりアピールはしないと決めていた。

暫くは受け身で様子を覗うつもりだった。


でも確実に、ポロンとキララとの間に以前は無かった何ものかが、大河の橋の如く渡されている感をキララは感じ取った。


それを『繋がり』と言って良いのか、キララにも分からない。

外でアンドロイドやメカ達と関わった際に感じた、目覚めたような繋がり感とは少し違った感覚だったからだ。


キララは小さなポロンの体を引き寄せハグした。

ポロンは緊張している。


そしてキララは理解した。


ーーーーーポロンは、ある一定の情報をブロックしている!

私には知られたくないことが有るのだ。


ソフィアが言っていた『冷たく見える程』というポロンの態度は、ブロックした情報を漏らさない為のものかもしれないーーーーー


キララは何も気づかないふりを通し、丁寧に探っていく覚悟を決めた。


「ポロン、元気そうで良かったわ。 留守番有り難う!


おチビちゃん達のお世話もご苦労さま!


ケンタウルスとパンにも挨拶しなきゃね」


早速『キララの部屋』へ向かう。


キララの後を追いながらトンボのように飛んでいるポロンに、もし心臓が付いていたら、さぞバクバクして居るだろうことがキララに伝わってきた。


「ただいま〜!」


ケンタウルスとパンは人工池の傍で話しているところだった。

まるで人間同士が会話している雰囲気だ。


二人ともキララを見て一瞬ギョッとした表情を見せた。

それからぎこちなく笑顔を作って


「おかえりなさい!」


と妙に明るく声を揃えた。


キララはわざと言ってみた。


「大丈夫よ。

二人とも可也アップグレードしてるみたいね。瞳を見れば分かるわ。 

ポロンも手伝ったの?」


「えぇ。

キララの留守中、話し相手が欲しかったから」


「じゃぁ、私もケンタウルスやパンとの会話を楽しめるってわけね。


他に会話が楽しめるようになったアンドロイドは居るの?」


キララは何気なく質問したのだが、ポロンに狼狽えた様子が見えた。


「他には居ないわ……」


キララは確信した。

他にもアップグレードしたアンドロイドが居る。

しかもそれを私に隠したがっている。

ということは、何か後ろめたい理由でアンドロイド達をアップグレードさせているのだ。


                       


翌日スウィンは、キララの様子を見に行った。


スウィンはひととおりアンドロイド達に愛想良く挨拶しながら、彼等の異変を肌で感じ取った。


すぐ「遊びに行こう!」とキララを誘い出し、そのままソヒィアの所へ行った。

エレナ博士とアーロン博士も呼び出した。


キララは前日のことを説明した。


「………つまり、ケンタウルスとパン以外にも、ポロンからアップグレードされたと感じられるアンドロイドか居るかもしれないわ。


ポロンがあちこちのラボを訪ねてるって言ってましたよね。

ラボに居るアンドロイド達も観察する必要があると思うの。


私はポロンが居ない時に、アンドロイドルームの友達も調べたいと思ってる。


今のポロンなら、あの部屋のドアロック解除くらい出来そうだし、中に入ればアンドロイド達を起動させることも出来る筈よ」


「ケンタウルスとパンの目はどうやって逃れるの?」


「一応全体のドアロックはかけるつもりだけど、その上からアナログな手動の鍵もかけようと考えてる。

メカ的にバージョンアップしたアンドロイドにとっては、アナログの方が苦手だからね。

少なくとも時間は稼げると思う」


「そこまでしたことがバレたらまずいんじゃない?」


「その時はその時よ!

繋がりを信じるしか無いわ。 信じて良い気がするし。

 

まっ、当然バレるでしょうね」


「そうね………

キララがそう言うならそうしましょ。


ポロンが訪ねたら、出来るだけ長く足止めするよう全ラボに伝えておくわ」


「助かります。


ただ、外のアンドロイド達と違って自ら訴えかけてはこないから、今はまだ強烈なエネルギーとしては伝わってこないけど、ポロンも可也怯え、悲しみ、苦しんでいることは確かよ。

ケンタウルスとパンもね。


だからスタッフ達へも、決して『敵視』しないように話しておいて下さる?

たとえ不信を抱いても………」


「了解よ」


スウィンとキララ、そしてアーロン博士とエレナ博士は、館内レストランでランチセットを購入しキララの部屋で食べることにした。

同時に複数の目で観察する為である。


食事が済むとソフィアは、あらゆる危険を避ける為機器を使わず直接口頭で伝えようと早速ラボ巡りに出かけた。

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